性犯罪の部門に女性を...家庭でも2人の子育てに奮闘中
刑事といえば激務…というイメージがあるが、愛媛県警に2人の子育てをしながら職務にあたる女性刑事がいる。
仕事はもちろん、ある理由で家庭でも単身で奮闘中という「ママさん刑事」に密着した。
保育園の先生:
はい、ごあいさつしましょう。せーの、おはようございます。変わりはないですか
松本千裕刑事:
ないです
松本千裕刑事:
朝が一番バタバタします。朝が一番大変ですね

わが子2人を保育園に預けて、お母さんが向かったのは、松山西警察署の刑事課。
松本千裕さん、32歳。5歳と4歳の幼い子どもを育てながら、愛媛の治安を守るべく、犯罪捜査に日々あたっている現職の刑事。

松本千裕刑事:
私が刑事課になった時には、性犯罪の部門に女性をと、性犯罪の係になりました
松本刑事が専門としている分野は、「性犯罪」。
殺人や強盗などと同じ「強行犯」と呼ばれる凶悪犯罪に分類される。
松本千裕刑事:
(後輩刑事に)こんな感じで書いてほしいんよね。どっちかって言ったら。文章が途切れとるけん。どういう場所で、こういった行為が撮影されていましたっていう感じ
刑事になって6年目。後輩に捜査書類の作り方を指導したり、管内の不審者情報の確認したり、出勤直後からさまざまな仕事に追われる。
松本千裕刑事:
署内にいる時は、書類を作成したり、被害届を受理する。あとは、取調室で被疑者の取り調べを行ったりしています
そして、何枚かの写真を確認し始めた。そのまなざしは真剣。「刑事の目」だ。
松本千裕刑事:
強制わいせつ事件の防犯カメラ映像を確認しています。今回は、被疑者がどういった行動をしているかっていう確認をしています

愛媛県内でも相次いで起きる性犯罪。
この日は、約10日前に逮捕した強制わいせつ事件の容疑者の余罪などを調べる捜査にあたっていた。
女性警察官90人が仕事と子育て両立中
犯罪捜査、治安維持…毎日、激務に追われる松本刑事。
一方で、子育て中のママとして、実は家庭でも「激務」に追われている。
松本千裕刑事:
主人は今、茨城県にいっています。2020年の2月から出向しています
松本さんの夫は、同じ愛媛県警の警察官。
しかし、現在は警察庁へ出向し、県外に単身赴任中。
つまり松本さんは、刑事と子育てという2つの激務をほぼ1人でこなさなくてはならない状態。

松本千裕刑事:
今の勤務時間は、平日の8時半から夕方の5時15分まで。夜勤の勤務や土日の日直勤務は、外していただいています。周りの方に迷惑をかけている部分もあるのですが、すごく優しく支えていただいています
愛媛県警の女性警察官は、全体の約1割の260人ほど。そのうち3割の約90人が、仕事と子育ての両立中だという。
最近の「働き方改革」の動きもあり、松本さんのように子育てと両立できるよう、一部の業務を免除されたうえで警察官を続ける女性も多くなってきた。
とはいえ、勤務終了が午後6時ごろになる日もあるという松本刑事。
急いで保育園に子どもたちのお迎えへ。「刑事」から「ママ」になる。
松本千裕刑事:
保育園は、延長して7時まで見てくれます
ーー時には、「時間大丈夫かな」ってことはないですか?
松本千裕刑事:
ありますね。結構あります。周りの方が結構、声掛けしてくれます。「時間だけど、早く帰れよ」みたいなことを言ってくれます。帰ってからもやることがあるので、きょうのご飯何つくろうかなっていうのをずっと考えています

専門分野以外の捜査も…
松本千裕刑事:
盗まれたものとかはないですかね
被害男性:
ないですよ
年の瀬も迫る12月下旬。前日に寄せられた通報を受けて、松本刑事は、松山市内の事件現場で捜査にあたっていた。

松本千裕刑事:
これ、もっとバリバリになっていたんですかね。何でたたかれているような感じやったですか
港に停泊中だったボートの窓ガラス1枚が、何者かに割られていたという器物損壊事件。警察署の刑事は人数も限られているため、専門分野以外の事件の捜査にあたることも多いという。
松本千裕刑事:
船の検査証みたいなものはあるんですか? そしたら、これをもとに被害届作成させてもらいます
被害届を作るため、割れた窓のサイズを測ったり、写真を撮影。

松本千裕刑事:
ちょっと引きで、ここぐらいから撮る? 撮れんやろ、そこ
捜査員:
そうですね、ギリギリ収まるくらいの
発見した日時や当時の状況、不審な人は見なかったかなど、被害者から事件の詳細を聞き取り、被害届としてまとめ、この日の捜査は終わった。
松本千裕刑事:
盗まれたものもないので、器物損壊被害ということで被害届を取らさせていただきます。今後は、不審な人物がいるか聞き込みだったりとか、付近の防犯カメラ捜査だったりっていうのを進めていきます

性犯罪被害者の女性に寄り添う
捜査に、子育てに、頑張るママさん刑事・松本さん。
上司はこう見ている。
松山西警察署刑事課・山口圭課長:
仕事に対する責任感が強い職員で、直属の上司からの信望も厚いですし、バランス感覚も非常に優れておりまして、そのあたりが家庭と仕事の両立に生かされていると思います
大切なのは、家庭と仕事のバランス。
この難しいバランスを保つため、休みの日は子どもたちと精いっぱい遊ぶ。
松本千裕刑事:
休みの日は、近くの公園に行くことが多いです。なるべく子どもと一緒にいる時間っていうのを大切にしていきたいと思っています

松本さんにとって、愛するわが子の存在は、刑事としての姿勢にも影響を与えたという。
松本千裕刑事:
以前よりは、そういった子どもの犯罪に敏感になったり、犯人に対しての憤りっていうのも感じるようになっています。性犯罪っていうのも、「魂の殺人」といわれる凶悪な犯罪ですので、被害者の女性に一番寄り添った形で対応できるように心がけています

「ママさん刑事」松本千裕刑事。きょうも、愛媛の治安と愛する家庭を守るため奮闘している。
松本千裕刑事:
刑事として、やりがいをもって仕事をしていきたいなという思いと、どんな環境であっても、自分の働き方っていうのを自分で考えていって、それに沿ってしていけば、どんなことでもできるのではないかなと思っています
(テレビ愛媛)