幻となった「駐日アメリカ大使」

アメリカのトランプ大統領が2020年3月に駐日大使に指名した、ケネス・ワインスタイン氏が指名を受けてから初めて日本メディアの取材に答えた。

選挙で民主党・バイデン氏の勝利が確実となり、駐日大使人事案は事実状白紙となってしまったが、インタビューの冒頭、日本語で「よろしくお願いします!」と明るく挨拶をしてくれた。東京での大使の重役を果たすため、週3回、日本語の特訓を受けてきたという。

今回大使として赴任することは叶わなかったが、長年ワシントンの保守系シンクタンク、ハドソン研究所の所長を務め、培ってきた人脈で今後も日米同盟の発展の為に尽力したいという。

安倍前総理とワインスタイン氏 日本の政界に太いパイプを持つ (2016年3月撮影)
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西村経済担当大臣とワインスタイン氏

そんな、ワインスタイン氏に、トランプ政権下の日米関係と今後の課題について話を聞いた。

日米は主従的関係から協力関係に

ーートランプ政権の日米外交の総括は?

ワインスタイン氏:
トランプ大統領は4年前に就任した当時から、日米関係がアメリカにとって特別な関係になるという明確なビジョンを持っていたと思います。20世紀にはイギリスとの関係がアメリカにとって最も重要な関係であり、21世紀には日本との関係が重要な関係になるという考え、これは安倍前首相もそのビジョンを共有していたと思います。

201611月にトランプタワーで行われた安倍前首相のトランプ次期大統領訪問は、前例のないサプライズでしたが、深い友情を培うための重要な協力関係の基礎を築くことができました。ほぼ毎月行われた電話会談。トランプ大統領はG7やその他の重要な国際的な場で、安倍前首相の意見はとても従順に受け入れていた。これは、ドナルド・トランプという大統領のスタイルにおいては、特異な事例だったと思います。

アメリカの戦略的な方針を一方的に押し付けるのではなく、重要な問題については日本自身のリーダーシップに委ねてもかまわないというスタンスを取っていました。これまでの日米関係と一線を画す新しい次元の日米関係が誕生したのです。

強固な信頼関係を築いた安倍前首相とトランプ大統領

中国との協調関係を変えたトランプは評価されるべき

特に中国については、アメリカの直面する大きな地政学的挑戦であり、日本にとってもそうであるとの理解で日米首脳は合致していました。中国の脅威についてはアメリカ国内でも今では党派に関係なく認識を共有するまでになりましたが、アメリカは中国に対して50年に渡って協調政策をとってきました。これを変えたのはトランプ大統領であり、それは評価に値すると思います。

記者の取材に答える、ワインスタイン氏 ワシントンにて(2021年1月4日撮影)

ワインスタイン氏はドナルド・シンゾウの蜜月関係は、日米関係を主従的な関係ではなく、互いに率直に意見を交わせる協力関係に押し上げたと指摘する。しかし、2週間後に大統領に就任するバイデン氏の下でこの日米関係は変質しないのか、考えを聞いた。

バイデンよ、中国の罠にはまるな

ーーバイデン政権で日米関係に変化はあるのか?

ワインスタイン氏:
良いニュースは、日本外交に関しては、トランプ政権とバイデン政権の間には大きな連続性があるということだ。民主党の高官に非公式にトランプ大統領の日本政策について聞いてみれば、きっと「トランプ外交が最もうまくいった事例だ」と答えるでしょう。中国の脅威に対応していくためにはオーストラリアとインドを含めた日米豪印の4カ国の協力が欠かせないことは十分理解しているでしょう。

バイデン政権下で日米関係に変化は・・・

そうした中で、菅首相とバイデン氏の最初の電話会談で尖閣諸島の安全保障について話し合われたことは非常に歓迎すべきことだと思います。しかしここで重要な点は、バイデン政権が気候変動の罠に陥らないようにすることです。例えば、気候変動への協力と引き換えに、台湾への武器販売を止めるとしましょう。

中国の政策はこれまでも見てきましたが、アメリカが譲歩したとしても、多くの場合、中国は約束したことを実行しません。だからこそ、私たちは、世界的な気候変動の罠、や、新型コロナウイルスの下の協力などと銘打った罠に気をつけなければならないのです。

ワインスタイン氏はトランプ政権下で米中関係が真の歴史的転換点を迎え、その方針はバイデン政権でも変わらないと強調した。そして最後に、複雑化するアジア情勢の下でアメリカにとって価値観を共有する日本の重要性は未だかつてないほどに高まっているとして、バイデン政権で新たに指名される駐日大使に「大いに活躍して欲しい」とエールを送った。

【執筆:FNNワシントン支局長 ダッチャー・藤田水美