応援したい自治体に寄付をすると、住民税などが控除され、さらにお礼の品がもらえる「ふるさと納税」。

自治体同士の競争が過熱したため、総務省は2019年、返礼品(地場産品)を寄付額の3割以下にするよう定めた。

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2020年は医療従事者の支援など、新型コロナウイルスへの対策に寄付をする人が多く、すでに6億円以上が集まっている。(「ふるさとチョイス」より)

そんな中…

記者:
ふるさと納税の還元率を比較するサイトですが、中には返礼品の還元率が90%台のものがずらっと並んでいます。一番高いものは、牛タン薄切りスライスで、120%の還元率となっています

この”還元率”とは、サイトの運営者が独自に調べたもの。
市場での価格をもとに、寄付に対してどのくらいのお礼の品が返ってくるかを計算している。

3割を超えるどころか、中には寄付額を上回る返礼品も…
一体何が起きているのか。

100%超の還元率も…業者が語る“からくり“とは

取材班は、高い還元率の返礼品を出している兵庫・加西市に向かった。

兵庫・加西市 きてみて住んで課 小菊啓靖課長:
兵庫県下では2位。全国では39位という非常にいい状況になっています

地場産品の”神戸牛”を返礼品として扱っている加西市が、11月に打ち出していたのは…

「今だけ2倍の量でお届け!」(加西市のふるさと納税のサイトより)

例年は、2万円の寄付で600グラムの神戸牛を送っているが、その倍の1200グラムを用意したという。(※現在は終了)

返礼品は寄付の3割以下という規定に違反しているのではないか―
担当者に尋ねると…

兵庫・加西市 きてみて住んで課 小菊啓靖課長:
事業者が”独自の努力”をされて、加西市が仕入れる金額も、当然 通常通りの金額。増えることはないです
――事業者が泣きを見ているとか、そういうことはない?
ないです

あくまで、例年と同じ3割に収まっていると話す担当者。

では、事業者の”独自の努力”とは何なのか…
販売業者を訪ねてみることに。

神戸牛 肉のヒライ 平井雄一郎社長:
今回のキャンペーンは牛10頭分ですんで、3000件ぐらい
――同じ寄付額で”お礼の品は2倍…苦しくなかった?
購入価格の元値の半分を国が補助してくれるという事業でさせてもらった分になるんです

増量のワケは、『新型コロナウイルスで打撃を受けた事業者や生産者を支援する農林水産省の補助金』にあるというのだ。

通常、加西市から返礼品の発注を受けた事業者は、生産者から神戸牛を調達し、寄付額の3割分を寄付した人に届ける。

これに対し農林水産省は神戸牛を調達する際、半額を補助。

その結果、事業者の負担は変わらずに倍の量の神戸牛を仕入れ、寄付した人に送ることができる仕組みになっている。

『神戸牛が但馬牛になってしまう…』 “お得な返礼品”の背景にある事情

補助金の対象は、売上額や出荷量が『普段の2割以上減った』農林水産物。

平井さんは畜産農家も兼業していて、これまでにない不況に悩まされていた。

神戸牛 肉のヒライ 平井雄一郎社長:
9月で売ってしまわなければならない牛たちです、出荷してしまわなければ…

外食をする人や海外からの旅行客が減ったことで需要が落ち込み、神戸牛の市場価格は大幅に下落した。

子牛を仕入れた2年前は、オリンピック需要を見越して仕入れ値が高騰していたため、大きな損失となってしまう。

情勢が落ち着くまで出荷を待とうにも…

神戸牛 肉のヒライ 平井雄一郎社長:
この牛だと、ちょっと横の牛に比べて大きいと思うんですけど。神戸ビーフになるためには、499キロ以下の牛でないといけないという規定がありまして、それを超えると但馬牛としての流通になってしまうんです

サイズが大きくなり神戸牛として出荷できなくなれば、販売価格はさらに下がるという悪循環だ。

今回の増量キャンペーンは、そんな中の取り組みだった。

神戸牛 肉のヒライ 平井雄一郎社長:
ふるさと納税で使って頂いたっていうのは、ものすごく助かりました。10頭をきちんとした値段で流通させることが出来たっていうのは、すごく助かりましたし、素晴らしい事業だと思います

返礼品が寄付の“実質6割”…自治体にとっては『寄付金稼ぎ』?

地方自治に詳しい専門家は、「補助金の活用を許せば際限がなくなる」と指摘する。

早稲田大学 政治経済学術院 小原隆治教授:
コロナに限らず、何かあった時に補助金が出てきたら、じゃあここ(ふるさと納税)とくっつけると、とてもおいしい、自治体としては寄付金稼ぎになるかもしれない。
国の補助金を使ってまた(自治体間競争が)ヒートアップすることになり、火がついて水かけて収まらず、また火がついてみたいな、そんな状態に今なっているのでは

一方、ふるさと納税を所管する総務省に聞くと…

総務省:
自治体が支出する返礼品の調達費が3割を超えていなければ、問題ないという認識です。
生産者支援の面から考えると、ふるさと納税の取引だけ排除するというのは、補助金の趣旨として弱くなってしまいます

苦しい事業者の救いになるこの取り組みは、全国の自治体に広がりをみせていて、加西市は再びキャンペーンを行う予定だという。

兵庫・加西市 きてみて住んで課 小菊啓靖課長:
結果、ふるさと納税の額が増えるというのは、あくまで事業者を支援するという主たる目的を達成する過程での、副産物的なものかなという風に考えています

決められた規制の中で”あの手この手”で運用されるふるさと納税…

厳しい状況の中でたどり着いたひとつの支援のカタチなのかもしれない。

(関西テレビ)