ユーハイムがバウムクーヘン専用AIオーブンを開発

年輪のような見た目が特徴的な焼き菓子「バウムクーヘン」。

職人が丹念に焼き上げているイメージもあるが、洋菓子メーカーのユーハイムは、職人の焼き具合の技術を機械学習するバウムクーヘン専用のAIオーブン「THEO(テオ)」を開発したと発表した。同社によると、バウムクーヘン専用のAIオーブンは世界初だという。

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このオーブンで職人が10~15回ほどバウムクーヘンを焼くと、その職人の焼き具合を各層ごとに画像センサーで解析し、AIに機械学習をさせてプログラム化。プログラム化したオーブンはもちろん、ネットワークでプログラムを転送することで、別のオーブンでも同じクオリティーのバウムクーヘンを焼き上げることができるという。

ここで気になるのが、「本当に職人の味を再現できるのか?」ということだが、担当者に聞いたところ…

「まず、味というよりは“焼きたて”という部分に驚くかと思います。味はたまごをしっかり感じられる味わいです。とろけるような食感が魅力です」ということだ。

なお、このAIオーブンで焼き上げたバウムクーヘンは、2021年3月に名古屋で開業する食の複合施設「バウムハウス」において販売される予定となっている。

職人がいなくても、同等のクオリティーのバウムクーヘンが出来るということだが、開発のきっかけは業務の効率化なのだろうか?また、今後はどのように活用していくのだろか?
ユーハイムのAI担当者に詳しく話を聞いてみた。

きっかけはスラム街の子供達に届けたい

――AIオーブン、開発したきっかけは?

開発のきっかけは5年前に南アフリカのスラム街の子供達にバウムクーヘンを届けたいと思ったことです。輸送手段ではバウムクーヘンは賞味期限切れになってしまい不可能です。ですので、焼成機を現地に運び、インターネットで繋げば遠隔操作でバウムクーヘンを届けられるのではないか?と考えたことがきっかけです。


――このオーブンを使うメリットを教えて

店側のメリットとして、ユーハイムの普通のバウムクーヘンですと、40分つきっきりで焼き上げます。その際、常に職人が焼成機の前から離れることはできませんが、AIオーブンでは焼成段階では職人は必要なくなります。

客側のメリットとしては、AIオーブンを移設することで、どこでも焼き立てのバウムクーヘンを食べることができます。今まで、焼き立てのバウムクーヘンを食べるということは工場の中でしかできませんでした。

画像提供:ユーハイム

AIは職人の技術向上を手助けする手段

――AIは学習してどんどん賢くなるイメージがあるが、このオーブンの場合はどうなの?

焼成回数を重ねればより詳細にその職人の焼成技術を模倣学習しますが、AI独自でレシピや技術を単独で磨いていくことはありません。それは職人自身の鍛錬の結果であり、AIはそのための手助けをする手段と位置付けています。


――バウムクーヘンを焼く職人の選定はどのように行う?

職人の選定は10年以上の経験があるもの。先日の発表会で出したものはキャリア50年の職人です。ただし、バウムクーヘンは職人の数だけ焼き方の技術があります。どの職人の技術でもプラグラム化することがTHEOの特徴ですから、職人の選定ではなく、どの職人にとっても役に立つことが目的です。

菓子には世界を平和にする力がある

――ユーハイムで一番上手に焼く職人のプログラムをどの店舗でも使えるのが良いと思うのだが?

そういうことも可能ですが、開発の方向性はそちらではありません。なぜならば技術はデータ化した時点でその進化は止まってしまいますので、目的はそれではなく職人自身のクリエィティビティの刺激にあります。

また、この技術を単に自社の生産性や技術向上に使うのではなく、お菓子には世界を平和にする力があると信じて、世界のあちこちで同じ思いを持つ職人が、この焼成機を通してネットワークで繋がることを目指します。


――こういった最新技術を活用することは、この先も考えている?

職人がお菓子をもっと美味しくするために必要な技術があれば積極的に取り入れていきたいと考えています。


ユーハイムのAIオーブン開発のきっかけは生産性や技術向上ではなく、菓子で世界を平和にする願いが込められていたようだ。ぜひともこの先、AIオーブンを使って世界中の人に笑顔を届けてほしい。

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