発売日当日に書店では行列

日本が誇る漫画やアニメが、日本の経済成長率を大きく飛躍させることになるかもしれない。

札幌市の書店では、開店から10分ほど経過したが、すでに40人ほどが並んでいる状態。

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浜松市の書店では、午前10時の開店直後に大勢の人が「鬼滅の刃」コーナーに訪れた。

各地の書店に集まる大勢の人。

4日は、「鬼滅の刃」最終巻の発売日。

都内の書店では、お昼休みに並ぶスーツ姿の男性も多く見られた。

男性(40代):
電車では読めない、泣いてしまうので。
家に帰ってしっかり読もうかなと

女性(20代):
なんでこんないいときに終わっちゃうんだろうと思って。
もっと続いてほしい

23巻の初版発行部数は395万部

多くの世代の共感を呼んだ「鬼滅の刃」23巻の初版発行部数は、395万部。

電子版を含む1巻からの累計発行部数は、1億2,000万部にのぼっている。

現在公開中の映画「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」は、興行収入275億円を突破し、歴代2位になるなど、その経済効果は、第一生命経済研究所の永濱氏によると、2,700億円とも言われている。

止まらない鬼滅の快進撃。

こうした漫画やアニメが、日本のGDP(国内総生産)を今後、押し上げることになるかもしれない。

 

都内にあるアニメ制作会社。
人気アニメ「バッテリー」や「DIVE!!」などの作品を手がけてきたアニメ制作会社では、現在60人のスタッフが働いている。

コロナの影響で、自宅にいる人が増えたことや、動画配信の普及が追い風となり、制作の依頼や相談は増えているという。

こうした漫画やアニメなどの原本制作に関わる人件費や、機材にかかった費用などは、これまでGDPから除外されていたが、12月からは設備投資とみなし、GDPに計上されることになった。

内閣府によると、新しい算出方法で計算した場合、原本制作に関わる費用は、2015年の名目GDPで全体の0.2%。
金額にすると、0.9兆円押し上げるという。

現状では市場規模が小さく、インパクトも小さいものの、日本の漫画やアニメの中から世界的ヒット作が生まれれば、経済成長率を大きく動かす日が訪れるかもしれない。

経済の活性化につながるか 「新国富」とは

内田嶺衣奈キャスター:
鬼滅の刃ブームも本当に勢いがありますが、このニュースはどうご覧になっていますか。

デロイトトーマツグループCSO 松江英夫氏:
こういったブームがまさに経済の活性化につながってくれればいいな、と本当に思います。

日本はこういったアニメもそうですし、映画もそうですし、優れたコンテンツはたくさんあるのです。
こういった文化的な資産、無形の資産を経済活動GDPに取り込んでいく。
これは日本の強みを生かせるし、日本にとっても前向きな話だと思うのです。

ただ、私は成長というのを考えると、GDPだけで考えていくと発想自体は少し限界があるのかなとも思うのです。

内田嶺衣奈キャスター:
限界と言いますと具体的にはどういった意味なんですか。

デロイトトーマツグループCSO 松江英夫氏:
これからの成長というのは、経済の成長ももちろんそうなんですが、環境であるとか地球温暖化、こういった社会価値に対する影響も配慮しながらこの両方を両立させていく。
こういったところが不可避なのです。

ですからそういう文脈においては、例えば今までのように石油とか石炭からエネルギーをつくる。
これはGDPを押し上げるプラスにはなるのですけれども、環境や温暖化に対してはマイナスになる。
ただGDPのマイナスのところと捉えることができないのです。

従って新しいものの見方をあわせて見ていく中で、成長のあり方を考えていく必要があるんです。

そこにおいて私は最近注目しているのは、近年、国連が提唱している「新国富」という考え方、ここに注目しているんですね。

内田嶺衣奈キャスター:
「新国富」という言葉はGDPに比べてなかなか聞き慣れないワードだというふうに感じたんですがどういった指標なんでしょうか。

デロイトトーマツグループCSO 松江英夫氏:
これは社会の中で価値を高められるものを資本と捉えて、ここの価値が過去からの歴史的な蓄積の中でどれぐらい大きくなっていったのか

自然環境も自然資本と捉えてみたり、もしくは人に対する価値というのを健康の側面だったり、教育レベルの蓄積という観点で見てみたりということで、こういった社会の価値を高める要素を蓄積の観点から経済評価をしていく。
という考え方なのです。

デロイトトーマツグループCSO 松江英夫氏:
GDPとの関係で見ますと、例えば森林を伐採して物を作る。
こうしますと一定期間においてはGDPを押し上げますが、環境にとってはマイナスになる。
これはまさに自然資本そのものがマイナスになってくるので、これは健全な成長とは言えないわけですね。
こういったものをGDPだけではなくて、こういった「新国富」のように両方で見ることによって健全な成長を考えることは可能になるのではないかと思います。

内田嶺衣奈キャスター:
GDPを置き換えるというわけではなく、GDPプラスアルファでより多角的な視点が必要になってくるという事ですか。

デロイトトーマツグループCSO 松江英夫氏:
そういうことですね。
これから必要なのは一過性の成長ではなくて、持続的な成長、サステナビリティー。
これが最も大事なのです。

デロイトトーマツグループCSO 松江英夫氏:
今、実際に民間の企業では、売上とか利益の成長だけではなくて、ESGということで、環境とか社会に配慮した行動。
これも価値として評価していこう両方で見ていこう。
こういった動きが加速しているわけなんですが、マクロ的な経済においても、GDPのみならず「新国富」のような新しい見方もあわせて持続的可能な成長を見ていく。
こんな考え方が大事になってくると思います。

内田嶺衣奈キャスター:
日本が世界に誇る無形資産というのは、漫画やアニメにとどまらず本当にたくさんありますから、日本の強みもより多角的な指標によって再認識されて、より伸ばしていけるといいですね。

(「Live News α」 12月4日放送分)