神奈川県の湯河原町で9月、40代の男性がサルの群れに襲われけがをし、病院に救急搬送されました。
この辺りで人がサルにかまれたのは初めてのことだといいます。
近年、湯河原周辺では、凶暴化した群れによる被害が相次いでいて、地元住民も頭を悩ませているといいます。
人気の観光地で何が起きているのか現地を取材しました。
民家の屋根を上っていく1匹のサル。
うっそうとした林の中にもサルの姿がありました。
関東有数の温泉街として知られる神奈川・湯河原町で、5日午後4時ごろ、取材班が遭遇したのは野生のサルです。
サルの群れが今、町の厄介者になっているのです。
2026年6月に撮影された映像には、建物の脇からサルが1匹、もう1匹と出てくる様子が映っています。
その中には子ザルの姿もありました。
サルの群れは、我が物顔で道路を横断したり、近隣の住宅の塀に上がったりしています。
さらに、救急車がサイレンを鳴らしながら通り過ぎても、おびえる様子はありません。
中には道路脇で毛づくろいを始めるサルもいました。
動画を撮影したのは、温泉街にある飲食店のオーナーです。
ビールスタンドかどや・相原幸典オーナー:
(ここは)温泉場のちょうど入り口。サルの通り道になってまして、出る時間はだいたい午後2時前後、遅いときは午後4時前後。
湯河原町に現れる群れは、あわせて20匹のサルで構成される「T1群」と呼ばれています。
湯河原町によりますと、サルによる被害は去年1年間に6054件となっていて、住民たちの生活に大きな影響を及ぼしています。
町内にあるシェアハウスも被害を受けた1つです。
電線やベランダの柵を器用に渡るサル。
時には室内にいる犬に向かって窓ガラス越しに飛びかかろうとする場面も。
さらに、建物内にサルが入り込んでしまうこともありました。
温泉街では9月18日にもサルの群れが出没。
車が行き交う中、道路を悠々と渡るなどすっかり人慣れしているようにも見えますが、この前日、このサルの群れに人が襲われたのです。
湯河原町によりますと、サルに襲われたのはこの町に住む40代の男性。
病院に救急搬送され、軽いけがをしました。
人がサルにかまれる被害は初めてだといいます。
サルの群れに頭を悩ませているのは、隣接する静岡・熱海市でも…。
「なすび・キュウリ・トマトなんかしょっちゅうやられる」と話す男性は、畑の隣にある小屋にサル対策を実施。
サルが来るのを防ぐため、育てていたモモの木をなくなく切ったという住民は、追い払うためにお手製のパチンコを持っていました。
一方、休日には200人近くの来客が見込まれるミカン狩りのシーズンを1カ月後に控えるミカン農園では…。
みかん家ゆがわら もんがわアグリパーク・高杉美帆さん:
サルの心配で、実際にお客さまが不安がられてる点があって、観光に対する風評被害を心配しています。
神奈川県によりますと、1955年ごろから温泉街近くに生息するようになったとされるサルの群れ。
サルが人をかむ被害は、なぜ起きたのでしょうか。
サル対策所の三木代表は、サルの機嫌を損ねたなど何かのスイッチが入ったことで人に危害を与えたのではと見ていて、湯河原のようにサルと人の距離が近い環境では注意が必要だと指摘します。
また、高齢化や人口減少が進むエリアでは…。
サル対策所・三木清雅代表:
サルが泊まる場所って普段は杉の木の上とか葉っぱが茂っている木の上で寝ることが多いんですけど、外敵から見えないような場所で寝るので、それが空き家になっているのかな。
湯河原町や熱海市との県境周辺には多くの空き家があり、「空き家からサルが出入りしているのを見た」という報告が町に寄せられることもあるといいます。
また、2024年度の湯河原町の空き家は433軒と全体の6.5%を占めていて、増加傾向が続いています。
サル対策所・三木清雅代表:
サルの群れにとって空き家を使っていることは安心できると(学習したと)いうこと。雨風とかも防げるような居心地の良い場所になっていると思う。
観光業への影響も懸念される中、群れの管理を強化する動きも進んでいます。
ビールスタンドかどや・相原幸典オーナー:
首にGPSを巻いてるのがボスですね。
湯河原町では県と協力し、群れのボス2匹の首にGPS装置の装着に成功。
群れが市街地に近づけば、巡回している追い払い隊が位置情報をもとに花火や爆竹などで対応します。
しかし、一度人慣れしたサルの対策は“一筋縄ではいかない”と専門家は指摘します。
サル対策所・三木清雅代表:
サルが市街地にすむことが慣れてしまっているので、それを覆すような抜本的な対策ができれば、山に戻っていくなり別の地域に行くと思うんですけど、なかなか難しいところですね。
湯河原町に出没するニホンザルの群れは、県のレッドデータブックで絶滅危惧種に指定されていて、今後どのように管理していくかを検討している段階だといいます。
湯河原町は、もしサルに遭遇してしまった場合には、サルに近寄ったり目を合わせたりしないこと、餌を与えること・餌になるようなものを外に置かないこと、鍵を閉めてレースのカーテンなどで食べ物が見えないようにすること、これらを注意喚起しています。
そして、神奈川県は「人身被害が発生したことを重く受け止めている」として、被害が改善しない場合には“管理困難な群れ”として対応を進めていくとしています。
