それだけにとどまらず、曇天による日照不足が生育不良を招いた地域もあれば、長雨によっていもち病をはじめとした病害が発生した地域、西日本のように夏の猛暑と渇水に悩まされた地域もありました。
長雨は稲刈りのスケジュールにも深刻な影響を及ぼします。お米の品質は栽培過程だけでなく、刈り取りのタイミングにも大きく左右されます。刈り遅れると品質が低下する一方で、雨の中で刈り取ろうとすればコンバインが詰まってしまい、ぬかるんだ田んぼにコンバインを入れることもできません。「今すぐ刈りたい」と焦りつつも、ただ気をもみながら田んぼを眺めることしかできないのです。
安さを求め続けることの限界
お米といえば、最近では価格の変動ばかりに注目が集まりがちですが、生産者たちはどうにもならない自然環境に翻弄されながら、常にリスクと隣り合わせの現場でお米を作り続けています。
物価高騰で家計が苦しく、「少しでも安いお米を買いたい」という声が多いのも事実。しかし、生産者側にとっても、お米を作るために必要な肥料や資材、農機具など、あらゆる生産コストが大きく値上がりしています。他のすべての物価が上がる中で、お米に対してだけ物価高騰以前の安さを求め続けることには限界があります。生産コストを割り込むような米価が続くようでは、離農に歯止めがかからなくなる一方です。
お米は私たちの命をつなぐ主食であり、日本の食料自給の要です。「お米があってあたり前」ではないということを、2024年夏の米不足時に痛感した方も多いのではないでしょうか。
いま私たちができるのは、国産のお米を食べること。そして店頭でお米の価格を見るときに、目の前の数値だけでなく、少しでもその背景にある生産現場へと思いを馳せることです。私たちの毎日の「1食1食の選択」が、これからの日本の食卓と農業の未来をつないでいくのです。
柏木智帆(かしわぎ・ちほ)
米・食味鑑定士、ごはんソムリエ、お米ライター

