整備新幹線の貸付料をめぐる国とJR側の攻防が続いている。そもそも、国土交通省鉄道局に予算がほとんどないことが背景にあるのではないか
整備新幹線「貸付料」巡る国とJR側の対立
原則30年を期限としている整備新幹線貸付料が来年9月に開業30年を迎える北陸新幹線の一部区間の契約が終わる。
この契約が終わるのを前に、国土交通省が、貸付料の支払い期間を31年目以降、さらに30年程度延ばすとしたうえで、定額を基本としつつ、物価が上昇した場合には増額できる仕組みを導入する方針を決定した。
これに強く反発したのが、JR各社だ。
国との合意文書を公開
特に強く反発しているのがJR東日本で、今年5月、「貸付料」に関して“30年前に”国と交わした合意文書を公開した。
文書には「31年目以降の支払いは、開業から30年目までの貸付料を上限とする」との合意事項が含まれていて、JR東の喜勢陽一社長は貸付料の増額は「国との合意に反する」と主張した。
さらに、合意は30年前の一回だけでなく、その後も国との協議を複数回重ね、その都度有効であることを確認してきたと主張した。
そもそも整備新幹線の「貸付料」とは、独立行政法人「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」が、国が整備した新幹線の線路や施設をJR各社に貸し出す代わりに徴収する使用料(リース料)のこと。
使用料の算定は、with or without 方式といわれるもので「新幹線を建設する場合の収益(with)」と「建設しない場合の収益(without)」の受益の30年間の累計額を、開業から30年間定額で支払うというものだ。
対象路線は、北海道・東北・北陸・九州などの整備新幹線5路線で、JR各社が独立行政法人「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」に年間に支払う総額は約800億円。これは、整備新幹線の未完成区間の建設費に充てられている。
つまり貸付料はこれから建設する予定の整備新幹線の建設費として重要な財源なのである。
しかし、JR東日本の負担が増え、経営リスクに直面した場合、運賃の値上げという選択に迫られる可能性がある。
この議論には、日々鉄道を利用している我々乗客にも影響を与える可能性が潜んでいることを知っておくべきであろう。
JR東日本は、北陸、東北、それに北海道新幹線の合わせて5区間で、年間約500億円の貸付料を支払っている。
喜勢陽一社長は、5月の会見で「(30年前の)約束は守られるべきもので、経営判断の前提としてきた合意事項が国側の事情により一方的に反故にされることになれば、経営に重大なリスクになる」とも述べ、強い危機感を示している。
もちろん、現在計画されている整備新幹線の開業を待ちわびている地元の声は根強く、人件費や物価高騰で、建設コストが増え続けているなかでの貸付料の増額もやむを得ない選択だと関係者は話す。
しかし、貸付料の国側とJR側の関係を住居の大家と借主の関係で例えるならば、大家が一方的に賃料を値上げすると宣告し、借主が反発している構図になる。
やはり、貸付料を増額するかどうかについては、双方が納得する必要があり強引に決めてしまうものではないのではないか。
鉄道網維持のためにどうあるべきか
根本的な原因として日本の鉄道に対する国家予算がインフラの規模と比較して少なすぎるという意見がある。
国内のインフラを整備する巨大官庁・国土交通省のなかで、公共交通に直結するのが高速道路を整備する道路局、全国の空港を所管する航空局。
そして全国の鉄道網を所管する鉄道局の3局だ。
年間予算でみると、道路局が約2兆円、航空局が約8000億円、鉄道局が約1000億円と、計算方法によって数字の見方がかわる場合もあるが、鉄道局の予算は、他と比べてかなり少ないのは間違いない。
この鉄道局の予算が少ないことが、整備新幹線貸付料の30年延長をめぐる議論の根底にあるのかもしれない。
いま世界各国では地球温暖化対策として鉄道網の構築のために国家予算を投じるようになっていることとは対照的に、日本は赤字路線を減らしていくという真逆の方向に向かっているのである。
【執筆:フジテレビ報道局社会部 大塚隆広】

