福島県会津若松市の猪苗代湖で起きたボート事故をめぐり、9月18日、最高裁が改めて審理を行う。あの日から6年…遺族の心から寂しさと後悔が消えることはない。
■3人死傷ボート事故・一審は有罪
2020年9月、プレジャーボートが湖面にいた3人に衝突し、当時8歳だった豊田瑛大(とよだえいた)くんが死亡、母親など2人が重傷を負った。ボートを操縦し業務上過失致死傷罪に問われた佐藤剛(さとうつよし)被告に一審の福島地裁は、適切に安全確認をしていれば事故を回避できたとして、禁錮2年の実刑判決を言い渡した。
瑛大くんの母親は当時、「とりあえず無罪じゃないっていう安心感。安堵して涙出ましたね」と語った。
■二審で逆転無罪
ところが、2024年12月、仙台高裁の判決は…。仙台高等裁判所の渡邉英敬裁判長は「前方左右を注視していたとしても被害者らを確実に発見できたとは言えない」とし、佐藤被告に言い渡された無罪判決。検察側がこれを不服として上告していた。
■最高裁の審理を待つ遺族
「お遊戯中だったんですけど、瑛大って呼んだらこの笑顔で振り返ってくれて」と写真を見て話す母。ひまわりのような明るい笑顔の豊田瑛大くん(当時8)。2020年9月、猪苗代湖でボートに巻き込まれ犠牲になり、母親も両足を失った。
「思い出すのもいまだにやっぱ事故直後の瑛大の姿が本当に今でも毎日のように出てはくるんですけど」と母は話す。
■心が砕けた二審判決
2024年12月、第2審で下された逆転無罪の判決。
父は「むなしさとか怒りとか、あの無罪で全てが信用失ったし自信もないし、砕け散った感じはしましたね」と振り返る。
判決後、上告を求めて始まった署名活動はわずか10日ほどで11万人を超える署名が集まった。
母は「放心状態というか諦める気持ちになりつつあったのも、そんなこと言ってられないよなという感じで、またこう力を与えてもらったなって」と語る。
今年で事故から6年…「1年も2年も6年もそんなに変わることはなくて、あの事故さえなければ瑛大も中学3年生の時で。行ったことへの後悔でしかなくてね」と父は悔やむ。
■当時の事故現場は…
6年前の事故当日も同じ日曜日だった。事故があった湖ではレジャーを楽しむ人たちの姿がある。
事故後、猪苗代湖では船の航行区域などを分けるゾーニングを行い、ルールやマナーの周知を行っているが、2026年も死亡事故が発生している。
福島市から訪れた女性は「(自分も子どもがいるので)気をつけて遊ばないといけないなと」と話す。当時現場にいた男性は「忘れられない事故だったし、これからも忘れるはないですよ」と話す。
■4匹のねこが癒しに
「瑛大のひまわりって意味で、すぐ決まりだねっていって」
3年前に飼い始めたネコ・ひまわり。瑛大くんとの日常が思い出される。
「急に瑛大が猫になる瞬間があって、おれ今からねこになるねっていいだして、にゃーとかいいながら甘えてくるんですけど」と話す母。今は4匹のネコが心の癒しだ。「瑛大いるときに、ねこたくさん飼ってあげたかったなって、見せてあげたかったなって」
■9月18日に最高裁で「弁論」
最高裁での弁論は、遺族にとって暗闇に差し込んだ一筋の光。9月18日は法廷で傍聴する予定だ。
母は「わたしたちも含め、応援してくださっている方たちみなさんが納得いくような判決が出ることを本当に祈っているだけです」と語った。
一方、福島テレビは被告側にも取材したが、9月17日までに回答はなかった。
■最高裁「弁論」の意味
18日、最高裁では検察側と弁護側、双方の主張を聞く「弁論」が行われる。最高裁の弁論は第2審の結論を変更するときなどに必要な手続きで、無罪判決を見直す可能性がある。
では、今後どうなるのか?
無罪判決を見直す場合、2つのパターンが考えられる。1つは二審の判決を「誤り」として破棄し最高裁が自ら判決を出す「自判」。そしてもう1つは、高裁または地裁に差し戻して改めて審理するケースだ。
一方、上告を棄却する場合、二審の判決が維持され無罪が確定する。
一審は有罪、二審は無罪となった今回の裁判、争点は人が浮かんでいることを想定でき事故を回避することができたか。最高裁がどのような判断を示すのか、裁判の行方が注目される。
