9月から10月は、1年で最もスズメバチが凶暴になる時期です。新しい女王蜂が登場し巣を守る意識や警戒心が非常に強くなるためです。これに合わせて増えるのが、巣の駆除の依頼です。福井県内の専門業者に密着し、スズメバチと戦う緊迫の現場を取材しました。
県内で害虫駆除などの作業にあたる、この道6年の神門正明さん。1日に2件ほどハチの巣の駆除依頼があるといいます。
「去年よりは(依頼が)多い。オオスズメバチは今回が初めてだが、コガタスズメバチ、モンスズメバチ、キイロスズメバチは1日2件くらいある」(神門さん)
この日訪れたのは、福井市内の住宅街にある松の木です。
その根元を見てみると…大きなハチの姿が。世界最大のスズメバチ「オオスズメバチ」で、毒性が極めて強く気性が荒いのが特徴です。
体長は、働き蜂で3~4センチ、女王蜂は5センチにも達する危険なハチで、樹木の洞や土の中の空洞などに巣を作る習性があります。
巣の駆除を依頼したのは、住宅街にある神社の係をしている地元の人。「(ここは)小学生の集団登校の集合場所になっている。保護者から、スズメバチのような大きなハチがいると聞いて。よくいままで何ともなかったなと思う」
カメラマンも防護服を着用し、巣の駆除作業に同行します。
一気に巣穴めがけて殺虫スプレーを大量に噴射し、すぐさま穴をタオルで覆います。その横では別のスタッフが、次々に巣へ戻ってくるハチを粘着力のあるグッズで捕獲していきます。
神門さんによると、巣の中には200匹以上の働き蜂が生活していて、半径5キロ圏内で
虫などを狩りに飛び回っているといいます。
こうして取り出したハチは100匹以上。30分の格闘の末―
「これこれ!女王蜂。女王蜂が捕まった時点で、ハチの巣はこれ以上進展しないし再生不可能だから」と神門さん。
ハチの巣の状況はというと、木の幹が空洞化していて、巣は根本から上に向かって幹の中に50センチほど形成されていました。
すべてをかき出すことはできないと判断し、この日は殺虫作用のあるシートを巣穴に入れて作業を終えました。
通常は山間山間で生活をしているというオオスズメバチですが、近年は山だけでなく住宅街でも巣作りをしていると神門さんは話します。
「昨今のキイロスズメバチやコガタスズメバチという小さいスズメバチは、都市部に下りてきている。それを食べるオオスズメバチもついてくる。人間のそばに行けば食べ物が得られると」
果たして、スズメバチは活動エリアを広げているのか。生態に詳しい福井市自然史博物館の梅村信哉学芸員は「住宅街に特に増えているという話は聞いていないが、餌となる樹液や花の蜜、木の洞などといった巣が作れる環境が整えば、住宅街でも暮らすことができる」と話します。
さらに、山の生態系の変化の表れかもしれないと指摘します。「山中にシカが増えたことで、花をつける植物などが食い荒らされ減少している。山では住みにくくなったハチは、人里へと生息域を広げているとも考えられる。近い将来、そうなるかもしれない」(梅村学芸員)
クマだけでなく、ハチもまた、人里へと生息域を拡大する日も近いかもしれません。
アウトドア活動も増える行楽シーズンに必要な対策を、梅村学芸員に聞きました。
<ハチに刺されないために>
▼人工的な香料に気を付ける(香水や柔軟剤、整髪料にも注意)
▼大声を出さない
▼黒い服を避ける
<ハチに遭遇したら>
▼巣に近付かない
▼大声を出したり手で払ったりしない
▼姿勢を低くして速やかにその場を離れる
<ハチに刺されたら>
大量の流水で絞るように洗い流す
