神奈川県の都会から徳島県の小さな町へ移り住んだ、中学2年生の今井龍之介くん。
彼が目にしたのは、豊かな自然を脅かす「海洋ごみ」の問題でした。
徳島の美しい海に魅了され芽生えた「海を守りたい」という真っ直ぐな思いをきっかけに、地域の環境に向き合い、行動を起こし始めた少年の挑戦を追いました。
■都会から徳島県の人口8000人の小さな町へ
高知県との県境に位置する徳島県海陽町は、サンゴが群生する透き通った海と、山や川が織りなす自然が広がる人口およそ8,000人の町です。
この町で暮らす龍之介くんは、ギターが大好きな中学2年生。
父・洋介さん、母・明子さんとの3人家族で、3年前まで神奈川県海老名市に住んでいましたが、洋介さんの仕事の縁もあり2023年に移住してきました。
■「これが海なのか」初めて見た徳島の海
学校の運営や教育プログラムを作ってきた父・洋介さんには、移住に込めた思いがありました。
【父・洋介さん】「大事なことは、自分の実体験を通じた感覚だと思う。自然環境の中にいたり、地域の方々と触れ合う中で自分なりの価値観を見つることを大事にしてほしい」
家から車で10分のところに、家族でよく訪れる特別な場所があります。
【龍之介くん】「初めて徳島の海を見たとき、これが海なのかと思うくらい良い刺激を受けて。僕らの次の世代にもこの景色を見てほしい」
■ 使われなくなった漁具 処分が大きな課題に
龍之介くんがやってきたのは、家の近くにある宍喰(ししくい)漁港。
海陽町で長年漁師をしている戎谷(えびすたに)さんから、漁網をめぐる深刻な現状を聞きました。
【戎谷さん】「今は漁師が少なく若手が減ってきた中で、誰ももらってくれない。海に捨てるわけにもいかない。そのまま置いとくわけにもいかない。業者に頼むと高額になるから捨てられないという人もいた」
高齢化や後継者不足で漁師が減る中、使われなくなった漁具の処分は大きな課題となっています。
海に流出したり捨てられたりした網は「ゴーストネット」と呼ばれ、海の生き物を傷つける原因になります。
【龍之介くん】「頑丈だからこそ海の中に残り続けて、知らず知らずのうちに命を奪っているという現実を知って、何かできないかなって」
■ 廃棄漁網をバッグにするアイデア
海陽町にある博物館「マリンジャム」を訪れた龍之介くんは、使われなくなった漁網やロープをバッグに「アップサイクル」するアイデアを思いつきます。
【龍之介くん】「これも使われなくなってずっと放置していたらしくて。捨てるはずのものを、決めた長さに切って半分にして、ここを折ったらバッグみたいになる」
こうして立ち上がったのが「RE:NET PROJECT(リネットプロジェクト)」です。
【龍之介くん】「漁網って海で使うものなので、濡れてもすぐに乾くし、頑丈でよく伸びる。頑丈さがポイントなので、それをうまく利用して壊れにくいバッグを作りました」
■ 同世代へ伝える海の危機
廃棄漁網の問題をみんなにも知ってもらいたいという龍之介くんの考えに賛同した、同い年の2人も仲間に加わりました。
廃棄漁網を使ったワークショップを企画し、漁網が化学繊維でできていることや、海に捨てられるとウミガメが絡まったり誤って食べてしまったりして命を落とすことを、同世代の子どもたちに伝えています。
■「僕が感動したこの海を、もっと多くの人に」
プロジェクトにかける思いを、龍之介くんはこう語ります。
【龍之介くん】「僕たちの世代が興味を持つというのが一番のメッセージ。このきれいな海を守っていきたい」
移住したことで出会えた海の大切さと、それに立ち向かう中学生の姿。
龍之介くんたちの挑戦は、海の未来へとつながっていきます。
(関西テレビ「newsランナー」2026年9月9日放送)
