70歳以上の免許更新で必要となる「高齢者講習」。72歳で初めて講習を受けた元東海テレビアナウンサー・高井一さんに密着すると、自分では気づかなかった運転のクセや加齢による変化が見えてきました。
■人生初の「高齢者講習」
70歳以上のドライバーの免許更新に必要な「高齢者講習」のお知らせが届いたという高井一さん(72)。
高校卒業後に免許を取得した高井さんは、55年ぶりに自動車学校で指導員を乗せて講習を受けることになりました。

講習は、安全運転に関する「講義」と、視力などを測る「運転適性検査」、そして運転技術を確認する「実車指導」の3つ。あわせておよそ2時間です。
まずはおよそ30分の「安全運転講義」を受けます。
指導員:
「年齢を重ねてどれくらい身体能力が落ちた状態で運転しているかに気が付いてもらい、基本に立ち戻っていただくための講座です」

年齢を重ねると増えがちな、交差点での人や信号の見落とし、アクセルとブレーキの踏み間違いなどについて、映像を見ながら再確認します。
75歳以上になると、これに「認知機能検査」が加わります。

近年、75歳以上のドライバーが死亡事故に占める割合は増加傾向にあり、4年前から高齢者の免許更新の条件が厳格化されました。
■3つの視力検査で見えた“今の自分”
続いては、運転中にどのような見え方をしているのかを調べる「運転適性検査」です。「動体視力」「夜間視力」「視野」の3つを測定します。

まずは、運転中に人や車の動きがどれだけ捉えられるかを測る「動体視力」の検査。
指導員:
「小さな輪から大きな輪に変化しますので、切れ目が分かったら教えてください」
測定器を覗くと、視力検査でおなじみの丸い輪が近づいてきます。輪の欠けている部分が見えたら、ボタンを押します。
走行中の急な飛び出しや交通状況の変化を、どれだけ素早く認識できるかを調べる検査です。

指導員:
「どちらあいていますか?」
高井さん:
「上です」
指導員:
「あっています」
高井さんの動体視力は0.4。同年代の平均的な数値でした。
動体視力は年齢とともに低下し、動いているものを認識する力は、70代になると30代の半分以下になるといいます。

続いては、「夜間視力」の測定です。
夜に対向車のライトを見た後や、トンネルを通過するときなど、急激に明るさが変わった際に、目が暗さに慣れるまでどのくらい時間がかかるかを調べます。
専用の測定器を覗き、30秒間、明るい画面を見続けます。
高井さん:
「明るい。まぶしいです」
その後、画面が暗くなると、視力検査でおなじみの輪がほのかに浮かび上がります。輪の欠けている方向が分かるまでに何秒かかるかを測ります。

指導員:
「暗くなりますと、白い輪がでてきます。輪の欠けているところを教えてください」
高井さん:
「何も見えない…。見えてきたと思ったけど、これは明るいときの残像だ…。上です」
指導員:
「すごい、31秒です」
高井さん:
「奇跡です」

60秒以内に見えなかった場合は、夜の運転は控えた方がいいといいます。
最後は「視野」の測定です。
半球形のドームに頭を入れ、上下左右にどのくらい視野が広がっているかを調べます。
ドームの内側にある小さな赤いランプが、ひとつずつランダムに点灯。視線を正面に向けたまま、光を確認できたら手元のスイッチを押します。
両目で測定し、上下左右の視野がどこまで広がっているかを調べます。

この検査では、横断歩道などを歩く人や信号、周囲を走る車などを、どの範囲まで認識できているかが分かります。
高井さんの左右の視野は、180度という結果でした。
指導員:
「若い人くらい見えています。家で自慢してください」

「動体」「夜間」「視野」という運転に必要な3つの視力機能を確認しました。
■実車指導で分かった運転のクセ
続いては「実車指導」です。
1周およそ400mのコースを2周。指導員を助手席に乗せて、実際の運転能力をチェックします。

信号のある交差点の通過や右左折、横断歩道や一時停止で正しく止まれるか、アクセル・ブレーキの踏みかえがスムーズにできるかなどを、およそ10分かけて確認します。
1つ目のチェックポイントは「右左折」。
指導員:
「側道に出ます。30m手前でウィンカーを出してください」
正しい方向にウィンカーを出し、脱輪や乗り上げをせずに安全に曲がれるかを確認します。

2つ目は「停止線で止まる」。横断歩道や「止まれ」の標識などを確認し、正しい位置で停止できるかをチェックします。
指導員:
「横断歩道がありますよ!」
高井さん:
「忘れていた~」
思わずヒヤッとした高井さん。
運転中は標識はもちろん、道路に書かれた「路面標示」も見落とさないよう注意が必要です。

そして3つ目は、実車指導の最大の難関「段差乗り越え」です。
アクセルとブレーキの踏みかえ、その後、安全に発進できるかが試されます。
バックしながらタイヤが段差に当たったらアクセルを踏み、乗り越えたタイミングですぐにブレーキへ踏みかえます。

指導員:
「乗り越えたらすぐブレーキでお願いします。その後大切なのはシフトチェンジの確認です」
停止した後のシフトチェンジも重要です。バックなのか前進なのか、自分が進みたい方向に正しくシフトレバーが入っているかを必ず確認します。

こうして、あっという間に10分間の実車指導が終了しました。
高井さん:
「精神的に疲れました。失敗しないように、ビクビクしながら運転しました」
この「実車指導」は、今の自分の運転技術を知り、それに合わせた安全運転を心がけるためのものです。結果が悪くても、それだけで免許を更新できなくなるわけではありません。
果たして、高井さんの運転は…。
指導員:
「キープレフトの原則を守ってください、横断歩道を一か所見逃しましたね」
高井さん:
「横断歩道は意識しますが、歩行者がいるかどうかへの注意力がなかったかもしれません」

自分では気づけなかった運転のクセも見えてきました。
講習を終えた高井さんには「高齢者講習終了証明証」が渡されます。免許の更新手続きで必要になるため、大切に保管します。
高井さん:
「自分の運転の仕方をチェックできる、いい機会になりました」
自分では気づきにくい運転のクセや加齢による変化を知る「高齢者講習」。安全運転を改めて見つめ直す大切な機会となりました。

