高齢ドライバーによる事故が後を絶たない。2025年4月、名古屋市でも繁華街で暴走するなど、立て続けに起きた。高齢ドライバーに関する調査結果からは若者世代より、自分の運転に自信をもっていることや、心配する子供からの指摘についても、大きな温度差があることが垣間見えてきた。
■「繁華街で7人はねられる」「丸亀製麺に突っ込む」…相次いだ高齢者の暴走事故
2025年4月2日、白昼の繁華街、名古屋市中区栄で乗用車が暴走し、0歳の男の赤ちゃんなどあわせて7人がはねられ、救急搬送された。

乗用車を運転していたのは74歳の女性で、現場近くの防犯カメラには、乗用車が道路を横切り、歩道に乗り上げたあと、建物をかすめるように左へ曲がる車が映っていた。

この直後、乗用車は久屋大通の交差点にあるコンクリートのブロックに乗り上げて停車した。

女性は地下駐車場から地上に出た際にそのまま事故を起こしていて、「スロープが上り坂でアクセルをいつも以上に強く踏んでしまった」と話していたという。

4月3日には名古屋市守山区の「丸亀製麺」でも高齢者による事故が起きた。

車がバックで突っ込み、女性客2人がケガをした。車を運転していたのは、92歳の男性だった。
■「まだ大丈夫」「自信はなくなってきている」…街で聞いた高齢ドライバーの自己評価
このように、高齢者ドライバーによる事故が後を絶たない。普段、車を運転するシニアたちは、自分たちの運転についてどう考えているのか、街で聞いた。
79歳男性:
私自身まだ運転していてね、まだまだ大丈夫かなと思っているから。できる限り運転はしたいです。
67歳男性A:
やっぱり年々自信はなくなっていますね。視界がちょっと狭いかなと自分で感じますね、運転していて注意力も若干落ちているかな。
67歳男性B:
やっぱり目が悪くなっているので夜は特に気をつけています。後ろを振り向いてバックさせるのが昔なんだけど、今はモニターがありますよね、この感覚がうまいこといっていないんですよ、モニターをよう信じられないんですよ。
■ギアはニュートラルでエンジン切る人も…高齢者講習の現場で見た運転の実態
シニアの本音をうかがうことができる調査結果がある。MS&ADインターリスク総研が2024年に行った、世代ごとに「自分の運転に自信がある」と答えた人の割合だ。
一番高い世代は70代後半で、6割を超えている。20代で「自身がある」と答えた人は、4割ほどにとどまり、長年の「経験と感覚」が自信となっていることがうかがえる。

ただ、2024年に取材した70歳以上のドライバーが免許を更新する際に義務付けられる高齢者講習では、当時90歳の受講者は、指導員が何度も「右へ曲がる」ことを伝えているのに、ハンドルを左にまわしていた。

指導員:
はいじゃあ右です。右、右ね。右、右ですよ、右右右右。右ね、そっち左だから。右。

また、エンジン切るとき、ギアはパーキングにいれるが、この受講者はニュートラルに入れていて、指導員がパーキングにいれるように伝えたが、今度はバックにいれていた。
指導員:
ニュートラル?エンジン切るとき…。
90代の受講者:
これで切っちゃう。
指導員:
それで切らないよね、エンジン切るときはパーキングでしょ?だからギアはパーキングに戻さないと。…それバックだよ。

別の当時85歳の受講者は、「運転に不安はない」と言って講習を受けたが、赤信号で交差点に進入していった。
指導員:
信号見て、信号。赤だったでしょ、いま。
85歳の受講者:
あら。
指導員:
信号を見ていなかった。
85歳の受講者:
見ていなかったね、ひどいね。

もし、道路だったら大事故になりかねない。
■「運転危ない」伝える子と伝えられる親の認識に激しい温度差
65歳以上のドライバーを親に持つ30代から50代に「親の車の運転が危ない」と本人に伝えたことがあるかを聞いた、2019年のNEXCO東日本の調査では、8割以上が伝えたことがあるという結果だった。
ところが、シニアドライバー自身に、車の運転について、子供から「危ない」「気を付けた方がいい」など伝えられたこがあるかを聞いたところ、約76%の高齢ドライバーは「伝えられたことがない」と答えている。
子供世代は親に注意喚起をしているが、高齢の親には心配していることが伝わっていないということが垣間見える。

この“すれ違い”はなぜ起きてしまうのか、交通事故鑑定「ラプター」の中島博史所長に聞いた。中島所長は、高齢者の親は「危ない」「気をつけて」という子供の声を、“注意”としてではなく“あいさつ”のような感覚で受け止めている可能性を指摘する。

また、運転中の場合は、運転することに意識がいっているため、気に留めていない可能性もあるとも話している。
2025年4月11日放送
(東海テレビ)