震災後、漁業体験ツアーを積極的に受け入れ

岩手・山田町では、東日本大震災の被害から立ち上がった漁師たちが、漁業体験を教える取り組みに力を入れている。
魅力を全国に伝えたいと願う1人の漁師を取材した。

ホタテやカキの養殖が盛んな山田町。
震災後、地元の漁師たちが漁業体験のツアーを積極的に受け入れていて、この日は秋田県の中学生が修学旅行で訪れていた。

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海の魅力が体感できると評判のこのツアー。
受け入れは震災後に本格化し、2016年度に177人だった利用客は、2019年度は1,370人にまで増加した。
2019年は、大手旅行会社JTBが選ぶ「新たな観光の取り組みをたたえる賞(JTB交流創造賞)」で最優秀賞を受賞した。

漁師でつくる団体「マリン・ツーリズム山田」の一員である中村敏彦さん(49)は、カキやホタテの養殖を続けて約30年。その傍ら、ツアーで講師を務めている。

カキ・ホタテ漁師 中村敏彦さん:
ほかの人たちに気づかされますね、山田湾は宝の山だって。海なんだけど宝の山だってよく言われるので

厳しかった日々を夫婦二人三脚で…

宝をもたらす海も、震災では多くのものを奪った。
山田湾にあった約4,000枚の養殖いかだは全て流され、中村さんも自宅や作業小屋を津波で失った。
先の見えない復興を後押ししたのは、山田を訪れてくれた人からの温かい言葉だった。

カキ・ホタテ漁師 中村敏彦さん:
震災前からの全国のお客さんから、いつまでも待っているよって声もたくさん聞いたので、どうしても復活しないとって気にはなりました

現在は自宅や作業小屋の再建も完了し、少しずつ震災前の生活が戻ってきているという。
中村さんは消費者に対して、直接ホタテなどの発送も行っている。
この日も東京、静岡、広島など全国各地から注文が入っていた。

カキ・ホタテ漁師 中村敏彦さん:
食べる人が笑顔になるように、開けたときにワッてなるように

作業に一緒に取り組むのは中村さんの妻、麻利さん。

妻・中村麻利さん:
漁師以外のことも結構多いので、それも全部こなすし、養殖もちゃんとやっているのですごいパワフルですよ、行動力があって

海に出るとき以外は、いつもともに過ごす2人。
震災後の厳しかった日々を二人三脚で乗り越えてきた。

「海の魅力を伝えたい」ツアーでの交流に手応え

中村さんが仲間とともにツアーの講師を務めることにしたのは、震災後、元に戻らない販路の拡大につなげたいという思いからだった。

10月28日。
この日は秋田県の内陸部・大館市から訪れた修学旅行生に、養殖の工程の一つ、カキの稚貝をロープに挟みこむ作業をしてもらった。

漁業になじみの薄い中学生にとって、ツアーは驚きの連続。
「海の魅力を伝えたい」…中村さんの思いは生徒にも伝わっていた。

秋田から訪れた中学生:
買うよりも、漁師さんがむいてくれて食べる方がおいしい

秋田から訪れた中学生:
漁師さんの思いがこもっている感じがして、その分 味がこもっていると思う

かつては口下手だったという中村さんだが、ツアーでの交流に手応えを感じつつある。

カキ・ホタテ漁師 中村敏彦さん:
こういった形で、交流人口とかいっぱいつながっていく人たちが増えれば、もっともっと山田町自体が豊かになると思うので、地道ですけどこういう活動を続けていきたい

故郷の良さを全国へ。
山田の海は宝の山。

(岩手めんこいテレビ)