新米の買い取り価格が去年より36%下落し、肥料・燃料・機械代は軒並み倍増。さらに猛暑で収穫量も2割減――。
高知市で5ヘクタールの田んぼを管理する中島正根さん(78)は、それでも田んぼに立ち続ける。切り札は、コストを大幅に抑えられる「再生二期作」だ。
猛暑とコスト増が経営に打撃
高知市介良で米を作る中島さんは今、収穫の真っ只中にいる。しかし今年は例年と様子が違う。
夏場の猛暑で稲が十分に結実せず、収穫量は2割ほど減る見込みだ。肥料をはじめ燃料費や機械代などあらゆるコストも倍増し、経営を直撃している。
米価下落で「採算が合わない」
追い打ちをかけたのが米価格の下落だ。今年、JA高知県が農家に前払いする概算金は60キログラムあたり1万4000円と、去年の2万2000円から36%下落した。
中島さんは「最初にこの値段が分かっていたら、作付けをやっていない。作っても採算が合わない。仕事としては成り立たない」と明かす。
コストを抑えて活路を開く「再生二期作」
こうした厳しい状況の中、中島さんが3年前から本格的に取り組んでいるのが「再生二期作」。収穫後の田んぼに肥料をまくだけで、刈り取った株から新たに芽を出させるというものだ。
この方法は、苗づくり・耕耘・田植えの作業が一切不要になる。暑さのピークを避けて成長し、11月ごろに収穫できるため、猛暑対策としても有効だ。
通常の二期作より収穫量は落ちるものの、コストと労力を大幅に削減できる点が最大のメリットだ。
「ほ場に残った切り株から少しでも収益を上げないと生活できない」と中島さんは話す。
「農家がいなくなれば、日本の自然環境が変わる」
中島さんが守ろうとしているのは、自分の生活だけではない。
「春になったら山から水を引いて、水路を掃除して、農道を整備して、地域全体で米を作る文化がある。農地の保全、自然環境、多面的機能の維持を農家がやっている。高齢者中心に頑張っているが、先がないかもしれない」
農業は食料生産にとどまらず、自然環境の維持など多面的な機能を持つ――そう語る中島さんには、国に直接訴えたいことがある。
「最低限の補填があるべき。そうじゃないと次の世代は誰もやらない。どうぞ助けていただきたい」
その言葉は、一農家の切実な訴えであると同時に、未来の日本の農業全体への問いかけでもある。
