石川県でわせ品種「ゆめみづほ」が初出荷され、実りの秋、新米の季節が到来した。しかし、その裏で生産者である農家は深刻な事態に直面している。備蓄米の放出などにより全国的にコメが余り、米価の大幅な下落が懸念されているのだ。近隣の富山や福井では、新米価格の目安となる「概算金」が大幅に下落。一方で肥料や燃料費は高騰を続けており、農家からは「このままでは赤字経営になる」と悲鳴が上がっている。収穫の喜びとは裏腹に、生産者の苦悩は深まるばかりだ。
新米シーズン到来も、喜びの裏に深刻な懸念

「ヨイショ!ヨイショ!ヨイショ!」威勢のいい掛け声とともに、8月21日に石川県小松市で県産米のトップを切って、石川県が開発したわせ品種「ゆめみづほ」の初出荷式が行われた。今年は雨が少なく気温の高い日が続いた影響で、例年より収穫は早まったものの品質は上々だという。

この日の検査では、出荷された約26トンすべてが最も品質の高い1等米に格付けされた。今年の県内の「ゆめみづほ」の出荷量は、去年並みの約1万1000トンを見込んでいる。

しかし、この収穫の喜びの裏で、米農家は深刻な懸念を抱えている。全国的な「コメ余り」による価格下落だ。小松市内の田んぼでは稲刈り作業が続くが、農家の表情は晴れない。
「半額以下になるんじゃ…」大幅超過の在庫に農家が悲鳴

小松市で米作りを行う農家の柏田正明さんは、家族経営で約15ヘクタールの田んぼを耕している。柏田さんが今、最も懸念しているのが米の価格だ。

農林水産省によると、今年6月末時点での全国のコメの在庫は243万トン。これは、適正な水準とされる180万トンから200万トンを大幅に超過している。この過剰在庫が、新米の販売価格の目安となる「概算金」を押し下げるのではないかと、柏田さんは強い不安を抱いている。

概算金とは、農協が農家からコメを仕入れる際に一時的に支払う金額のことで、その年の米価の指標となる。

柏田さんは厳しい表情で語る。
「半額以下になるんじゃないかという話は聞いています。今の現状だと恐らくほぼマイナス、赤字経営になると思います」
近隣県ではすでに大幅下落 石川の価格はどうなる?

石川県の概算金は公表されていないが、21日にも決まるとみられている。農家が固唾をのんで見守る中、近隣の県からは厳しい知らせが届いている。
富山県の農協は8月20日、今年の概算金を発表した。JA全農とやまの西井秀将県本部長は「うるち米、富富富、コシヒカリ、てんたかく、てんこもり、その他うるち米は、60キロ当たり税込み2万円と設定した」と述べた。主力のコシヒカリは60kgあたり2万円。これは、去年より6000円も低い価格設定だ。

さらに、この価格ですら「新潟や福井に比べると良い方」だという。福井県では60kgあたり1万7000円と、価格が大幅に高騰する前のおととしよりも低い水準にまで落ち込んでいる。近隣県の厳しい状況が、石川県の農家の不安をさらにかき立てている。
肥料・燃料費は高騰のまま…「経営が難しくなる」

米価が大幅に下がる一方で、生産にかかる費用は高騰を続けている。今年に入り、肥料や農機具、そしてトラクターなどを動かすための燃料費などが軒並み値上がりし、農家の経営を圧迫している。収入が減り、支出が増えるという二重苦に、農家からは悲痛な声が上がる。

前出の柏田さんは、国の支援の必要性を訴える。
「市場の最低価格を決めてもらって、価格がそれを下回ると国が助成してくれるとかあれば農業は続けていけるかなと思います。これがまたずっと続くようであれば私たちも経営が難しくなるので、今後どうするか考えざるを得ない状態です」
米の価格が大幅に下がると、特に小規模な農家は経営を続けていくことが困難になると話す。
消費者と生産者、両者のための価格設定を模索

8月21日に初出荷された新米の「ゆめみづほ」。米心石川によると、今年の販売価格は去年より1000円程度安く、5kgで3000円を切る見込みだという。

JA小松市の営農部長、表圭介さんは現状について次のように話す。
「コメが非常にだぶついてきているということで、それに拍車をかけるというかコメ離れですね。価格が高すぎて、なかなか消費者がコメに手を出していただけない。そういった懸念があるが、消費者が求めやすい価格設定、またそれに対する生産者の所得、ここも十分意識した価格設定を行って少しでも販売をしていきたい」

JAとしても、消費者の買いやすさと生産者の生活を守ることのバランスを取るという、難しい舵取りを迫られている。
石川県産米の主力品種であるコシヒカリは8月下旬から、県オリジナル品種の「ひゃくまん穀」は9月中旬から出荷が始まる見込みだ。日本の食卓を支える農家が、希望を持って米作りを続けられるような対策が求められている。

(石川テレビ・8月21日放送)
