福井県内の最低賃金が、現行の1053円から59円引き上げられ、1112円とする方針が示された。2025年度の69円に次ぐ過去2番目の大幅な上昇で、1100台となるのは初めて。働く側からは「嬉しい」と歓迎の声が上がる一方、飲食店経営者は「死活問題」と危惧する。
「妥当な線だが、影響は小さくない」専門家
福井地方最低賃金審議会が8月10日に示した、最低賃金の59円引き上げ方針。最低賃金が時給1112円となることについて若者たちは「そんなに上がるんですかって思いました。普通に嬉しいです」「自分で生活費を出しているので、上がるのは嬉しいですね」「お金はあるだけいい。どれくらいでも上げてほしい」と一様に歓迎する。
物価高騰が家計を圧迫する中で、賃金の底上げを歓迎する気持ちは自然といえる。
福井県立大学経済学部の廣瀬弘毅教授は今回の引き上げについて「福井県経済の強さを考えると、妥当な線」と評価し、さらに「物価上昇も続いているので、労働者の生活を守るためには意味があったのではないか」とする。一方で、50円を超える大幅な最低賃金の上昇が経営者に与える影響も大きいと指摘する。
特に懸念されるのは中小企業の負担だ。「いわゆる防衛的賃上げで人手を確保するためにずいぶん苦労している中で、本来望むべき生産性を上げるための原資がどれくらい残るかというと、非常に大変」と語る。
中長期的な見通しについては「全国的に見ても経済の力は弱くない県だと思うが、急激な賃金上昇で苦しむ中小企業もあるので、行政には支援策をしっかり考えてもらいたい」と行政による後押しの重要性を訴えた。
「値上げしたばかりなのに」飲食店が語る苦境
賃上げの重さを肌で感じているのが、飲食店の現場だ。福井市と永平寺町で4店舗を経営するとんかつ料理店「天膳」の天谷健二社長は「上げ幅がかなり大きいので、しっかり対策を練らないと厳しい」と語る。
同店ではここ3年で6度の値上げをしている。一番人気の商品は2年前に税込1000円だったが、1年前には税抜1000円、2026年4月にはさらに税抜1050円へと引き上げた。2年間で155円の値上げだ。
4月の値上げは中東情勢の影響による包材・油関係のコスト増にいわゆる「チキンショック」「エッグショック」が重なり「非常に心苦しかったが、過去最大の値上げをさせていただいたばかり」と打ち明ける。
定食の品数を減らしてコストパフォーマンスの良いメニューを作るなど工夫を凝らしているが、人件費のさらなる増加が見込まれる中、商品の追加値上げは避けられないと考えている。
「最低賃金の引き上げは各社、死活問題。値上げはしなければならないと思う。最低賃金が上がって人件費が上がっているのに、同じ売上では企業としての利益も損なわれる」と地元飲食店が置かれている厳しい現状を、広く理解してほしいと訴えた。
働き手にとって賃金が上がることは確かに助かる。しかし、経営が行き詰まって閉業する店が増えれば、地域の雇用そのものが失われてしまう。
最低賃金1112円は、早ければ10月4日から適用される見通しだ。

