終戦から81年、1484人の犠牲者を出した学童疎開船「対馬丸」の悲劇を語り継ぐ1冊の絵本を取材した。

その絵本とは、「ガージュー先生 対馬丸事件を生きぬいた少女の物語(たじまゆきひこ作:童心社)」。この絵本を通して語り継がれるのは、1人の少女の記憶だ。
「お母ちゃん助けてくれ」
1944年8月、学童疎開船「対馬丸」は、アメリカ軍の攻撃を受け沈没し、784人の児童を含む1484人が犠牲となった。

絵本の主人公のモデルは、9歳で対馬丸事件に遭い、その体験を生涯語り続けた平良啓子さんだ。
1982年にインタビュー取材を受けた際、平良さんは当時の様子について、「泣き叫ぶ人や『兵隊さん助けてくれ』『お母ちゃん助けてくれ』などの声が聞こえていた」と振り返っていた。
絵本は、平良さんをモデルにした主人公の目線で、悲惨な事件を描いていく。
「先生たすけてー」
7月、沖縄・那覇市で行われた絵本の読み聞かせ会では、作者の田島征彦さん(86)が朗読した。
田島征彦さん:
不合理なことでたくさんの人たちが苦しみの極限を経験しなきゃならなかった。その中の1人が啓子さんだった。

絵本の中で対馬丸が攻撃を受けたシーンでは、眠っていた主人公の少女は、衝撃で目を覚ます。
『ガージュー先生 対馬丸事件を生きぬいた少女の物語』より
「ドカーンというものすごい音といっしょに、ゆかにたたきつけられました。」
「魚雷をうけたぞ!船がしずむぞ!」
「船員さんのさけび声です。なんどもばくはつする音がして、船は大きくかたむいて、しずんでいくようでした。」
「先生たすけてー」
「アンマー、アンマー!(おかあさん、おかあさん)」
「子どもたちのなき声、おとなたちのどなり声があたりにひびいています。」
不合理を乗り越える気持ち
読み聞かせ会に参加した人は「苦しい思いをしていて悲しそうだった」「生き延びたことはすごく素晴らしいはずなのに、罪悪感というか、ずっと苦しめられてきたように感じました」と話す。

悲劇を知る世代が少なくなる中、田島さんにはこの絵本に託した願いがあった。
田島征彦さん:
命を大事にするとかそれだけじゃなくて、不合理に対して怒りとか恐れとか、そういうものを乗り越えていくような気持ちだと思うね。
少女の記憶は時代を超えて、平和の意味を問い続ける。
(8月13日放送 Live News days)

