81回目の「原爆の日」
広島はきょう8月6日、世界で初めて原爆が投下されてから81年を迎えました。核兵器のない世界を願い、多くの人が祈りを捧げています。
外国人観光客も増加する中、日本だけでなく世界に向けて原爆の悲惨さをどう伝えていくのか。悩みながら奮闘する学芸員の活動に密着しました。
外国人が見た「ヒロシマ」
81年前の今日、人類史上初めて広島に原爆が投下されました。
この原爆によって、1945年の年末までに14万人が亡くなったとされています。

アメリカ国立公文書館に保存されている動画には、原爆投下から7、8カ月後の広島の様子が記録されていました。街中は未だ焼け野原の状態で、あちこちに大量のがれきが残されたままとなっています。

広島市ではきょう8月6日、平和記念式典が開かれ、過去最多となる121の国と地域などが参加。核なき世界へのメッセージを宣言しました。
ロシアによるウクライナ侵攻や、アメリカとイランの対立による中東情勢の混迷など、未だに世界情勢は緊迫し、核兵器が使用される危機感も高まっています。
広島から原爆の悲惨さを世界に向けて発信し続けている平和公園。日本にやって来る多くの外国人観光客も立ち寄る場所になっています。
ポーランドからの観光客は「誰もが一生に一度は訪れて、もう少し詳しく知るべき重要な歴史的場所だと思う。本当に大切な場所」と話します。

また、原爆を投下した国であるアメリカからの観光客は、「歴史を学びたくて平和公園や資料館に来たかったんです。とても悲しいことだし。実際にここに来て自分の目で見る必要があったんです」と話しました。
公園内にある原爆資料館には2025年、過去最多となる100万人近くの外国人が訪問。さらに公園内には、大勢の外国人が訪れるもう一つの施設があります。
被爆者の証言ビデオ
それは、2002年に開館した国立広島原爆死没者追悼平和祈念館です。オランダからの観光客は「平和祈念館の素晴らしい配慮だと思うのはパンフレットがあらゆる言語で用意されていることですと話します。
この平和祈念館で外国人の来館者が食い入るように見ているのが、被爆者の証言ビデオです。
2025年度までに517本が制作された証言ビデオ。20カ国語以上に翻訳もされています。
このビデオに登場する被爆者、南部敬之さんの証言です。

被爆者の南部敬之さん:
周囲の防空壕で人を焼いている煙も上がっていましたし、ああここで姉さん焼かんといけんかなと思って。もう今思い出してもつらかった。朝なんとかきれいに焼けたのを見て、ああこれで終わったかと思ったですね。
映像を見たネパールからの来館者は、「こういう動画とか見るとすごく悲しい。涙が出るほど悲しい」と話してくれた。
被爆者の高齢化
この証言ビデオの制作を担当しているのが、学芸員の渡辺由里さんです。
今直面している大きな課題が、被爆者の高齢化の影響です。年々、証言ビデオの制作数は減少傾向にあり、2000年代前半までは年間50本ほどの撮影ができていましたが、昨年度は6本にまで減っています。撮影が決まっていても、証言する方の体調不良でキャンセルになることもあったといいます。
2026年度は1人でも多くのビデオを撮りたいとの思いを胸に、渡辺さんが向かったのは、島根県大田市です。
この日、証言ビデオの撮影に応じてくれたのは、吉田一恵さん、91歳。

今回、息子夫婦からの勧めで、初めてカメラの前で被爆体験を話すことにしました。
10歳の時に被爆した吉田さんは、原爆が投下された時には、小学校にいたといいます。
吉田一恵さん:
とにかく2階におったらバーッと落ちて一瞬にして一瞬にして一瞬にして真っ白になったね。
吉田さんは爆風に巻き込まれなかったものの、その後、放射性物質を含んだ黒い雨に打たれることになりました。
吉田一恵さん:
結構降ってました。白い服がそうや白い服が紫になったくらいに。
吉田さんへのインタビューは1時間ほどで終了しました。
悲惨さを「未来」につなぐ学芸員の思い
撮影後、吉田さんの義理の娘である真田美さんは、「家族の私たちでもなかなか聞けなかった話が今回ちょっとでも聞けたというのは、いい機会だったかなと思います」と話しました。
被爆者の高齢化が進み、吉田さんのように家族からの要望で証言ビデオに応募するケースも増えているといいます。
5年前に転職して追悼平和祈念館の学芸員になった渡辺さん。原爆の悲惨さを伝える仕事に携わりたいとの思いからだったといいます。

渡辺由里さん:
私が中学生の時に国語の教科書に峠三吉さんの「仮繃帯所にて」という原爆の詩が載っていて。
「何故こんな目に遭わねばならぬのか なぜこんなめにあわねばならぬのか 何の為に なんのために」
実際にたくさんの被爆者の方とお話しさせてもらう機会ができて、本当につらいことを話してもらって申し訳ないなって思うんですけれども、やはりちゃんと残していかなきゃいけないなと思っています」

「仮繃帯所にて」を口ずさむ際、感極まって涙が溢れた渡辺さん。証言ビデオは過去の歴史を紹介するものではなく、「自分事として見てもらいたい」と話します。
渡辺由里さん:
「戦前に近くなっている」ように感じるとの声を、当時戦時中を知ってる人からそういう言葉を聞くようなタイミングもあったりするので、実際こういうことが起きるかもしれないんだよという。本当に自分事として見てもらいたいです。

