ファミリーマートが、創立45周年を記念した「お値段そのまま45%増量」キャンペーンを実施している。
約1.5倍とあってデカい。たこ焼きは10個が15個になりボリュームたっぷり。飲料は950ミリリットルに増え、持ち歩きサイズを超えている。
今月18日からは、駅などにあるコンビニNewDaysでも「増量フェス」が実施される予定だ。
スーパーなどでも『今だけ増量』という商品を見るとつい手に取ってしまう。
“増量”という文字はなぜこんなに購買意欲をかきたてるのか。そもそも値段そのままで増量して大丈夫なのか?
コンビニ業界に精通する流通アナリストの渡辺広明氏と、心理学のスペシャリスト、明星大学心理学部の藤井靖教授に話を聞いた。
“たくさん食べたい”は半分弱
【流通アナリスト・渡辺広明氏】
すっかり定着した「増量キャンペーン」ですが、お客さんはたくさん食べたい人ばかりではありません。
「たくさん食べたい」大食い派は全体の半分弱と業界では言われており、残りは「シェアして食べる」「何回かに分けて食べる」といった節約志向です。
つまり、今の増量キャンペーンは“コンビニの物価高対策”の意味合いが強いのです。
「やめたくてもやめられない」コンビニの苦悩…
今、コンビニの来店客数は減少が続き、物価高で買い上げ点数も減っています。
増量キャンペーンが始まって数年が経ち、以前ほど効果はなくなっていますが、それでもヒット企画をやめるわけにはいかない状況ではないでしょうか。
もちろんコンビニ側にとって利点もあります。
まず、新メニュー開発などと違い手間が少なくて済みます。極端な言い方をすればパッケージを変えるだけです。
そして何より、増量する商品は売れ筋の中から選べますから、当たる確率が高い。売り切れるので廃棄ロスが出ないなどの良い点もあります。
「お値段そのまま増量」キャンペーンは、お客さんにとって良いことしかない非常に強い企画です。代わりとなる企画はそう簡単には出てこないと思います。
(流通アナリスト・渡辺広明氏)
「今だけ増量」を買うのは“得したい”ではなく“損したくない”
【明星大学心理学部・藤井靖教授】
「今だけ増量」の商品を購入するのは「得をしたいから」ではなく「損をしたくない」という気持ちが強く働くからです。
これは心理学の『プロスペクト理論』で、人には「損失を回避する傾向」があります。
要するに「今だけ増量」に対して、「今、買わないことで、本来もらえるはずだった利益(自分にとってのメリット)を失ってしまう、損をしてしまう」という感覚が強力に刺激されるのです。
人間は、「得をしたい気持ちやその喜び」よりも、「損をしたくない痛みや不安」の方が2倍強く出ます。
ですから「増量商品」を買った時に得る満足感は、「得した」ではなく「損せずにすんだ」ことによるものだといえます。
人は“割り算”が苦手
多くの人は「割り算が苦手」な傾向があります。
例えば「50%増量」は、値引きに換算すると「33%引き」です。
「50%増量」も「33%引き」もまったく同じなのですが、実験結果で「50%増量の方が7割以上多く売れた」というデータがあるぐらい、2つの表現から受ける印象に差があります。
なぜなのか。
人は、無意識のうちに「日常の中であまり脳のキャパ(エネルギー)を使いたくない」と
考え行動します。
今はスマホの電卓を使えば、買い物中に細かな計算をすることはできます。しかし買い物ひとつにそこまで脳を使いたくない。
なので、パッと見てわかりやすい「50%増量」に目が行くのです。「半分も増えるんだ」という足し算の発想。より簡単に判断できる方を無意識に選んでいるのです。
「増量」は品質を傷つけない
もう一つ、「増量は品質を保持できる」というのもあります。
SDGsでコンビニなどでも値引き商品を販売するようになりました。良い取り組みですが、背景に「期限が近くなったもの」というのがあるので、「値引き」=「品質が落ちたもの」というのが当然のこととしてあります。
その点、「増量」は、品質のシグナルを傷つけずにお得感を乗せられます。そういう意味でもプラスにとらえられているのだと思います。
(明星大学心理学部・藤井靖教授)
適切な値上げがウィンウィンへの唯一の道か
【流通アナリスト・渡辺広明氏】
企画をやり続けていることで、増量の量がどんどん増えています。
今年は周年記念などもあって、50%やそれ以上の増量商品が登場し、お客さんもそれに慣れてしまっています。
本来、商品開発側からすると20%の増量でも大変なことです。それが50%の増量が当たり前となると次はどうすればよいのでしょうか。ぜいたくに慣れるのは早いのです。
もともと企業側…コンビニや製造メーカー、原材料メーカーなどが利益を削って実施している企画です。ここ数年の原材料費や人件費の高騰を考えると、すでにかなりしんどい状況になっていると思います。
このままではいつか破綻します。それを回避するためには、増量分の適切な価格を上げるしかないと思います。
お客さんも、少しの増量で「あれ、少ない」となるより、値段が上がっても「大きく増量」した方が喜ぶのではないでしょうか。
適切な価格に上げて、価格が上がった以上の満足感を感じる商品を提供する、それがこの増量キャンペーンがウィンウィンになって続いていく唯一の方法だと思います。
(流通アナリスト・渡辺広明氏)
一方、藤井教授は「商品を見てガッカリするより、少し値上がりしたけど内容がしっかりしている方が、うまくいくのではないか」と指摘する。
「物価高が始まって以降、値段はそのままだけど内容が少なくなる『ステルス値上げ』が定着しました。しかし「袋を開けて中身の少なさにがっかりした」という方も多いのではないでしょうか」
「消費者もこうしたことを経験し、気付いてきていますから『値段はそのままだけど量が少ない』より、『値上げしたけど量はたっぷり入っている』方が、より大きな満足感を得られて、良い結果をもたらすのではないかと思います」(明星大学心理学部・藤井靖教授)
取材: 高知さんさんテレビ

