「駅なか」醸造所が大学と連携

島根・江津市のJR波子駅で「駅なか」のクラフトビール工場を営む「石見麦酒」の山口厳雄社長が、島根大学生物資源科学部の客員教授に就任した。

地域に眠る酵母を掘り起こし、起業を志す学生を育てる。
小さな醸造所と大学が手を組んだ取り組みが、島根の地域活性化に新たな可能性を開こうとしている。

「石見麦酒」社長が客員教授に就任

石見麦酒は、山口社長が2016年に創業したクラフトビールメーカーだ。
2024年には無人駅となった波子駅の駅舎を活用して醸造所を開設。
ユニークな「駅なか」の工場として営業を続けている。

その山口社長が今回、島根大学生物資源科学部に客員教授として招かれた。
任命式では、上野誠部長から「山口厳雄殿、島根大学客員教授の名称を付与する」と言葉が告げられ、任命状が手渡された。

石見麦酒・山口巌雄社長
石見麦酒・山口巌雄社長
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発酵研究がつなぐ産学連携 ローカル酵母で新商品開発へ

この連携の背景には、島根大学側の動きがある。
同学部は2025年4月、鳥取大学から発酵研究で実績を持つ児玉基一朗特任教授を迎え、新たな研究室を発足させた。
同年7月には石見麦酒と連携協定を締結し、酵母の調査や商品開発を共同で進めている。

児玉特任教授がライフワークとして研究してきたのは、地域にゆかりのある植物から抽出される「ローカル酵母」だ。
鳥取大学時代にはサクラなどの植物から酵母を採取し、クラフトビールや日本酒、パンといった鳥取ならではの新商品開発に取り組んできた実績を持つ。

研究室には2025年9月、麦汁をつくる釜と発酵用タンク3基を備えた醸造所を開設。
試験醸造に必要な酒類製造免許も取得済みだ。

現在は山口社長や県産業技術センターと共同で、江津市の醸造所近くのサクラや、島根大農場オリジナルのサクラ「本庄曙」の酵母を使ったビールなど、6種類の酒の試作を進めている。

島根大学生物資源科学科・児玉基一朗特任教授
島根大学生物資源科学科・児玉基一朗特任教授

醸造技術と起業ノウハウを学生へ

大学が山口社長を客員教授に招いた狙いは二つある。
一つは醸造技術の指導、もう一つは起業を志す学生の育成だ。

実業家として小さな醸造所を運営してきた山口社長の経験は、教科書には載らない実践的な知識を学生にもたらすことが期待される。

山口社長は「学生たちへの教育だったり、大学に対して我々が持っているビール醸造の技術を供給することが、今後はもっと加速するのではないか」と意気込みを語る。

児玉特任教授も「学生を受け入れていただいて、そういう人材がお酒造りを地元でしてもらうとか、そういうことにつながっていけば非常にうれしい」と、将来の地域定着に期待を寄せる。

石見麦酒・山口巌雄社長
石見麦酒・山口巌雄社長

「地域に眠る未知の資源」と若い力で

児玉特任教授が掲げるのは「地域に眠る未知の資源と地域を担う若い人材の育成へ」という言葉だ。
サクラの花から採れる酵母がビールになり、それを学んだ学生が地元で醸造家として独立する。
そんな循環が生まれれば、島根の地域社会に与える影響は小さくない。

無人駅の駅舎から始まったクラフトビールの挑戦は今、大学という新たなフィールドで、次の世代へとつながろうとしている。

児玉特任教授は鳥取大時代にサクラなどから「酵母」を抽出 クラフトビール、日本酒、パンなどの商品開発
児玉特任教授は鳥取大時代にサクラなどから「酵母」を抽出 クラフトビール、日本酒、パンなどの商品開発
TSKさんいん中央テレビ
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