プレスリリース配信元:KEARNEY
クライアント、システム会社、ソフトウェアベンダーの三者体制に独立した助言役を追加―事業効果・リスク・組織定着を横断管理
A.T. カーニー株式会社(東京都港区、日本代表:針ヶ谷 武文)は、SAP S/4HANA移行などのERP(統合基幹業務システム)変革を成功に導くガバナンスのあり方を分析した論考「ERP変革を成功に導く『第4の柱』――独立・中立のアドバイザー」(英題:The objective advisor: a missing fourth pillar of ERP program success)を公開しました。
本稿で引用する業界調査によると、ERPプロジェクトの55~75%は期待した成果に届かず、コスト超過、遅延、業務混乱などを経験しています。原因には計画不足、経営層の支援不足、意思決定の遅さ、不十分なテスト、技術課題、利用者への定着不足などがあります。加えて、従来の進め方では、技術面の細部と経営・事業上の成果をつなぐ戦略的な監督機能が組み込まれていないことが、成果を阻む一因になると指摘しています。
そこで本稿は、クライアント企業、SI(システムインテグレーター)、ソフトウェアベンダーからなる従来の三者体制に、特定の導入契約や製品に左右されない「客観的アドバイザー(独立・中立の助言役)」を第4の柱として加えることを提言します。日々の設計・実装判断を全社目標に結び付け、作業の完了数ではなく、実現した事業効果を基準に変革を管理する役割です。
ERP導入の55~75%が期待未達、技術と事業成果をつなぐ戦略的監督機能が不足
従来のERP変革では、クライアントの業務・IT部門がビジョンとリソースを担い、SIがソリューションを設計・構築し、ソフトウェアベンダーが製品ロードマップやライセンス、問題解決の経路を提供します。三者にはそれぞれ明確な専門性がありますが、その体制だけでは、戦略との不整合、期待した効果の希薄化、特定ベンダーへの依存リスクの見落とし、パートナー間の摩擦が生じる可能性があります。
SIは技術設計、開発、統合、本番稼働の管理に強みを持つ一方、業務プロセス間の依存関係や経営目標との整合を判断する事業文脈を十分に持たない場合があります。クライアント側にも通常業務との競合やスキル不足があり、三者を束ねる役割が欠けやすいことが課題です。
独立アドバイザーを「第4の柱」に、経営戦略と日々の実装判断を接続
本稿が提唱する客観的アドバイザーは、導入作業を受託する契約の外に置かれ、経営陣とステアリングコミッティに共同で報告し、CFO・COOには点線の報告ラインを持つ独立した役割です。ステアリングコミッティに参加し、設計方針を決める会議体を運営するとともに、SIのPMOとリスク・効果レビューを共同で行います。全関係者が参照できる共通のKPIダッシュボードも維持します。
重要なのは、計画どおりに作業を進めることだけでなく、導入後の営業費用(OPEX)、設備投資(CAPEX)、サステナビリティに関する効果を定量的に追跡することです。品質ゲート、リスクの可視化、前提をあえて疑うレッドチーム・レビューを通じ、特定ベンダーに偏らない視点でプログラムの健全性を確認します。
図表1 客観的アドバイザーとシステムインテグレーターの役割の違い

「作業を終えたか」ではなく「事業効果を実現したか」で管理
客観的アドバイザーは、SIの計画が活動量ではなく必要な成果に向かっているかを確認し、テンプレートや成果物をクライアントの文化・業務に合わせて調整します。また、IT設計担当、業務責任者、SIリードの間で意思決定を促し、重要な論点を問題化する前に適切な意思決定機関へエスカレーションすることで、遅延や高額な変更要求のリスクを抑えます。
変革を現場に定着させるため、コミュニケーション、研修、組織文化の変化も主導します。必要な基盤には、全社横断の業務プロセス・データ標準化、ビジネスケースの更新、統合PMO・ガバナンス、組織設計、効果追跡ダッシュボード、AIを用いた課題の仕分け・優先順位付け、自動テスト分析などが含まれます。
役割重複はRACI、意思決定停滞は期限付きの確認で回避
独立アドバイザーを加える際には、既存関係者との役割重複や作業の二重化が起こり得ます。本稿は、プロジェクト初期にRACI(実行責任、説明責任、協議先、報告先)を明確にし、役割と連絡経路を定義することを推奨しています。また、個々の技術変更の効果検証に時間をかけすぎて判断が止まることを避けるため、確認期間を区切った戦略チェックポイントを設けます。
一部のSIは独立アドバイザーを自社領域への介入と受け止める可能性がありますが、本稿では、実際にはクライアント側の調整と計画順守を支援する存在として歓迎されるケースが多いとしています。
S/4HANA移行をIT刷新ではなく、持続的な事業価値を生む変革へ
AIコパイロットのSAP Jouleや生成AIエージェント、複数のクラウドやモジュールを組み合わせるコンポーザブルERPが広がるほど、戦略的なガバナンスと全体統合の重要性は高まります。SAPアップグレード需要と導入人材の不足が同時に進めば、SIから最適なチームを確保することも難しくなり、独立した戦略助言の必要性はさらに高まります。
本稿は、S/4HANA移行を単なるシステム導入や更新ではなく、事業変革として捉えるべきだと結論づけています。成功を判断する基準は、予定どおりの本番稼働ではなく、持続的かつ定量化できる戦略価値を生み出せたかどうかです。導入初期から客観的アドバイザーの役割を計画し、予算化することが、長期的な価値創出の基盤になります。
論考について
論考名:「ERP変革を成功に導く『第4の柱』――独立・中立のアドバイザー」(英題:The objective advisor: a missing fourth pillar of ERP program success、2025年9月8日公開)
URL:https://www.jp.kearney.com/issue-papers-perspectives/the-objective-advisor-a-missing-fourth-pillar-of-erp-program-success
監修者
-大塩 崇 シニアパートナー
早稲田大学理工学研究科卒。NTTデータ、米系戦略コンサルティングファームを経て、A.T. カーニーに入社。ハイテク、通信・ICT、エレクトロニクス、商社を中心に、シナリオプラニング、新規事業構築、Go-to-market、事業ポートフォリオの再構築、中長期経営計画、M&A戦略、収益改善、オペレーション改革などのコンサルティングに従事。
-川崎 健史 パートナー
東京大学理学部卒、Duke University, Fuqua School of Business (MBA) 修了。NTT東日本、米系戦略コンサルティングファーム、Big4コンサルティング部門等を経て、A.T. カーニーに入社。日系及び東南アジアの通信・ハイテク企業を中心に、中期経営計画・グローバル経営マネジメント・テクノロジー戦略・事業モデル変革・業務パフォーマンス変革等の幅広いCXOアジェンダに従事。近年では、戦略コンセプトの立案から実行サポートまで一貫したデジタルトランスフォーメーションのサポートも数多く手掛ける。
-長内 正一 パートナー
東京オフィスの戦略オペレーションプラクティスのコアメンバーであり、ICT企業、金融機関、製造業などのクライアント企業のトランスフォーメーションを中心に支援。主なコンサルティング実績は、ICT企業のデジタルトランスフォーメーションの推進、コーポレート機能強化、経営管理システムの改革、金融機関のコスト構造改革、次世代ITインフラの構想策定、BPO戦略策定など、その他製造業や、エネルギー会社等向けにオペレーション改革や、コスト構造改革など多数を含む。
A.T. カーニーについて
A.T. カーニー(グローバル・ブランド名:Kearney)は、100年にわたり世界有数の経営コンサルティングファームとして、Fortune Global 500企業の4分の3以上をはじめ、世界各国の政府機関に信頼されるパートナーであり続けてきました。40カ国以上に拠点を展開し、私たちの最大の強みは「人」にあります。インパクト・ファーストを掲げ、独創的な発想と実行力をもって、顧客企業が直面する最も困難な課題に挑み、変革の実現をともに推進します。日本には1972年に進出し、あらゆる主要産業のリーディングカンパニーに対し、戦略策定から変革の実行まで一貫した支援を提供しています。詳しくはWebサイトをご覧ください。www.jp.kearney.com
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データ提供 PR TIMES
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