自由気ままな子どもたちに、いつも親はハラハラドキドキ、時にもやもや。
「笑った!困った!」…でもウチの子はどうしてこんなことするんだろう。その行動の裏には、知られざる“子どものココロ”が隠されているはず。

今回、元気なココロちゃんとマナブくんきょうだいの育児に追われる小木(こぎ)さん一家に寄せられたのは、こんなエピソード。

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「双子なのに似ていないきょうだい…おもちゃや服はおそろいにすると気に入らない、ひとりは寝付きがいいけれどもうひとりは全く寝てくれない!双子なのに似ないってよくあること?」

双子といえば「動きがシンクロする」「ずっとふたりで話している」など、やっぱり「似ている・仲良し」というイメージが強いけれど、好みや行動がバラバラな双子ちゃんたちも。
「一卵性の双子はそっくり」ということは聞いたことがあるけれど、双子の好みや行動が「似ない」ワケって?
そして、かわいいのはもちろんだが、平等にという気持ちもあって、ついやりがちな「おそろい」の服やおもちゃは何歳まで与えていいの?

育児に役立つ“子育て心理学”を発信している公認心理師・佐藤めぐみさんに、“双子の個性”についてお話を聞いた。


――「双子が似る」理由はあるの?

心理学において、双子を対象とした研究は数多くあります。ミネソタ大学が行っている研究は、よく心理学の教科書にも引用されていますが、その内容は驚くばかり。
たとえば、遺伝と環境の影響力を調べる研究では、生後直後から訳あって離れ離れに育った双子が30歳を過ぎて再会したときに、2人とも消防士になっていたり、また別の双子では再会時の服装から、食べ物の嗜好や日々の習慣やくせ、気性までもが似ていたり。このような事例を見ると、あらためて遺伝の強さを感じます。

ですが、同じ家で育っても、似ていない双子もいるものです。なぜなら、遺伝がすべてではなく、環境も影響するからです。

「一卵性の双子だと遺伝も100%同じ、さらに同じお家なのだから環境も同じなのでは?」と思われがちですが、同じ家庭で育っても、完全に同じ環境に置かれているわけではありません。
たとえば、同じおもちゃを買ってもらっても、そのおもちゃでどう遊ぶかはそれぞれ違いますし、同じ洋服を買ってもらっても、もしかしたら、「すごく似合ってるよ」と声をかけられる回数が違うかもしれません。そうすると、1人1人の主観的な体験は違うものになるのです。

また、遺伝が強く出やすいものとそうでないものがあり、すべてが同じように似るものではないことも研究により分かってきています。

たとえば、遺伝が強いものとしては、身長や体重はよく知られるところですが、“能力”という面で見ると、外国語や美術よりも音楽や数学の方が遺伝要素が強いなど、能力というくくりでも何でも同じように似るわけではないのだそうです。性格的な面は、それら以上に低く、だいたい50%弱です。


双子はみんな「きょうだいで同じ物が好き!」というわけではなく、その個性は遺伝だけでなく環境やそれぞれが体験したことに影響されて育つもの。

顔や行動がそっくり…ということはもちろんあるだろうが、好みのおもちゃや服が違うなど「双子だから性格もそっくり?」ということにはならないのだ。


そっくりでもそれぞれの個性がある双子ちゃん。
とはいえ、パパママからすると、小さいころは「双子コーデ」のようにおそろいの服を着せたり、同じおもちゃを与えたくなってしまう…というのも頷ける。
では、本人たちが「ずっとおそろいがいい!」と言う場合以外は、何歳ごろまで「おそろいOK」?


――双子に「おそろいの物を与える」のは何歳ごろまでOKなの?

「双子におそろいのものを与える」のは何歳ごろまでOKかに関しては、子どもたちがそれぞれ「これがいい」「あれがいい」と主張をし始めたら、それがその時期と捉えるのがいいと思います(もちろん、おそろいのものを着ているカワイイ姿を見たいという親心はあると思いますが……)。

その年齢については個人差があると思いますが、2~3歳の自己主張が強まるイヤイヤ期にまず第一波が来て、その後幼稚園時代、外で過ごす時間が増える(=それぞれが別の体験をする時間が増える)ことから、たがいの好みが変わってくることはあるでしょう。

さらに小学校に上がると、認知面の発達が伸び、自分が他の人からどう見えているのかということが段々理解できるようになります。それに伴い、他者の目線が気になるようになるので、親の「こうだったらいいな」という思いはますます通らなくなると思います。

双子の「比較」はライバル視や喧嘩の芽に…

――双子の育児、親が気を付けたいことは?

1つめのところで書いたように、親が同じものを与えても、それを介した主観的な体験というのはその子それぞれです。もし片方の子の方がちょっと美人だったり、ちょっと算数がよくできていたり、同じ洋服でも似合っていたりして、親が無意識にその子の方に多く賛辞をかけていたら、もう一方の子は双子であるゆえの「比較」にさらされてしまうことになります。

比較されることが多くなると、「自分の方をもっと見てほしい!」と思うでしょうし、それがライバル視やきょうだいげんかにつながることもあるでしょう。あとは、「どうせ自分なんて……」といじけてしまうことも考えられます。

そっくりであるあまりに、比べられやすい状況であるため、友達からのなにげない発言や先生からのアドバイスなど、あらゆるところで普通の子よりも比較にさらされやすいという点では、親自らもそこに踏み入らないよう意識し、さらにはその子それぞれをあるがままに受け入れていく気持ちを持つことがとても大事になってくると思います。

「聞きコミ PRIME online」では皆様からの「育児あるある」エピソード投稿をお待ちしています。

・「もういらない」と言ったから代わりに食べたおやつ。「やっぱり食べる!」と言われて大慌て…同じものを用意しても「さっきのがいい!」と泣かれて大苦戦!
・無くしたと思っていたスマホを冷蔵庫の中から発見!なんでここに入れちゃうの!?

などなど、あなたの「育児あるある」に隠された子どもたちの気持ちを探ってみませんか?

エピソード投稿はこちらから!
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※入力された内容は記事で紹介させて頂くことがございます。
※改めて取材をさせて頂く場合もございます。

(解説:佐藤めぐみ/公認心理師)
英・レスター大学大学院修士号取得・オランダ心理学会認定心理士。欧米で学んだ心理学を日本の育児で取り入れやすい形にしたポジ育メソッドを考案。アメブロの「ちょっと子育て心理学」(http://ameblo.jp/la-camomille/)にて発信中。

(漫画:さいとうひさし)

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。