2026年7月13日、仙台地裁の法廷に上下ネイビーのジャージ姿で現れ、椅子に深く腰かけた男。72歳という年相応の外見だが、どこか近寄りがたい独特の雰囲気がある。
男が問われているのは、覚せい剤取締法違反と麻薬特例法違反の罪。男は約40年から覚せい剤の密売を繰り返していて、客や捜査関係者からつけられた異名は“東北の麻薬王”だ。
SNSで隠語を使い覚せい剤などを密売か
“東北の麻薬王”がアジトにしていたのが宮城県内有数の米どころで、広大な水田が広がる大崎市。起訴状などによると、男は、2024年3月から2025年10月までの間、覚せい剤を所持・使用したほか、大崎市内の自宅で覚せい剤を密売した罪などに問われている。
今回問われている罪だけでなく、40年前から覚せい剤の密売を続けていたという男。
なじみの客のほかに、男ら密売人グループはSNSで違法薬物の購入客を募っていた。
捜査関係者によると、「覚醒剤=氷」、「大麻=ブロッコリー」「MDMA=バツ印」「コカイン:チーズと自転車の2文字」など、薬物を表す隠語の絵文字と価格などの数字を組み合わせ、購入者を募る投稿をしていたという。
覚せい剤は暴力団から購入

男は起訴された8つの罪をいずれも認めていて、弁護側も争わない方針だ。
被告人質問では、覚せい剤の入手先などが明らかになった。
弁護人「なぜ罪をしっかり認めようと思ったのか」
男「最後にしようと思って」
弁護人「最後というのは」
男「年齢的に体の調子が悪いし、みんなに迷惑をかけたので」
弁護人「覚せい剤の入手先は」
男「暴力団関係」
弁護人「今後の関係は」
男「付き合いがないので、絶縁された」
弁護側によると、男は指定暴力団の構成員だった。しかし、勾留中に関係者を介して組からの「絶縁」を伝えられたという。

続いて行われた検察からの被告人質問。
検察「覚醒剤を譲り渡した人への不利益の内容については」
男「難しいことは分かりません。(しばらくの沈黙の後)もう一度お願いします」
検察「不利益がありますよね」
男「仕事をしなくなった人もいるし…」
検察「覚せい剤はなぜ規制をされているか」
男「人間じゃなくなるから」
検察「と、言いますと」
男「国を滅ぼす」
男は入手先の暴力団と関係を絶ったことや、大病を患い「72歳」と年を取ったことなどを理由に、今後は密売から足を洗うことを宣言している。
検察「“東北の麻薬王”と呼ばれていることについてはどう思うか」
男「なんか頭にきますね。なんでそういうことを言うのか。おもしろがっているのではないか」
検察側が“東北の麻薬王”という異名について言及すると、これまで淡々と答えていた男が少し語気を強めた。
覚せい剤25グラムあまり所持 0.5グラム単位で密売繰り返したか

男が営利目的で自宅に保管していた覚せい剤は25グラムあまり。検察側の指摘では、男は約0.5グラム単位で覚せい剤の密売を繰り返していて、25グラムの覚せい剤があれば単純計算で50人ほどの密売客に販売することができる多さだ。
供述などから、男は30代のころから覚せい剤の密売を始め、「東北の麻薬王」と言われるほど手広く密売を繰り返していたという。
検察側は「覚せい剤の所持や自己使用をやめなかったばかりか、その害悪を他者に拡散するという犯行にまで手を染めた」と指摘。
そのうえで、「再犯に及ぶ可能性は確実と言えるほど高い」、「再犯防止を図るためには、被告人を実刑に処して、矯正施設に収容の上、相当期間、徹底した矯正教育を施すことが必要不可欠である」などとして、男に「拘禁10年、罰金50万円」などを求刑した。
弁護側は、実刑は免れないとする一方で、覚せい剤の購入先の暴力団と関係が絶たれていることなどから減刑を求めている。
8月28日、“東北の麻薬王”と呼ばれた男に判決が言い渡される。

