7月20日から8月6日までは夏土用の期間です。夏バテなど体調管理に特に注意が必要な時期で、精をつけるため丑の日に「うなぎ」を食べるのが代表的ですが、土用の時期に餅を食べる地域もあり福井では「あべかわ餅」が定番です。そんな地域の伝統を継承しつつ、自らの感性を生かして新たな挑戦を続けるアメリカ人の餅職人を取材しました。
      

越前市にある越前市役所から歩いて2分のところにあるのが老舗餅店「あめこ」。創業は1782年。県内で最も古い歴史を持つ餅店ですが、今の店内は白を基調としたモダンな作りです。この店を経営しているのが13代目の渡辺淳ダニエルさんです。

渡辺淳ダニエルさん:
「アメリカでは主に東海岸、ニューヨークやフロリダ州に住んでいました」
 
母親はアメリカのニューヨーク出身。父親は越前市出身で12代目の岳史さん。今も一緒に店を手伝っています。


午前8時、1時間ほどかけて蒸したモチ米を機械でついていくのは12代目の仕事です。季節によって水の配合を変えて仕上がりを調整します。
 
つきあがった餅でダニエルさんが最初にとりかかるのは大福作り。小さくちぎった餅にあんこを包み、手早く丸めて3種類の大福を次々に完成させていきます。
 
次は、看板商品となるあべかわもち作り。一口大に切られた餅はきな粉と合わせて優しく丸められ、たっぷりときな粉をまとい小判型に整えられます。
 
さらに、上からきな粉をかけて箱詰め、黒蜜を添えれば完成です。
 
栄養価の高いきな粉にミネラル豊富な黒糖。暑さで体力が低下する夏場にぴったりな組み合わせです。


午前9時、開店のとき。ショーケースにはできたての商品が並べられ客を待ちます。

店員:「いらっしゃいませ、こんにちは」 

さっそく、買い物客がやってきました。

買い物客:「あべかわもち一つ」

買い物客:
「今回初めて来た。東京から。ここの名物だと聞いて」
「いつも買いに来る。絶対になくてはならないような味の店。いつもあべかわ。土用じゃなくても食べています」


ニューヨークで生まれたダニエルさんは、幼少期に越前市で過ごした経験が忘れられず、一度アメリカに戻りましたが大学では東京に進学し、就職しました。

ダニエルさん:
「コロナ禍になって新しいチャレンジをしたいと思った。父のふるさと福井でチャレンジをしたい」
 
アジアの国々や日本各地を回って様々な餅菓子に触れ、おととし、父から店を受け継ぎました。

ダニエルさん:
「一番重要にしていたのは、ビジネス展開」

これまでの餅の安価なイメージを払拭しようとマーケティング戦略を強化。SNSを駆使した広報展開に加え、自ら営業活動に奔走しました。
 
その結果、東京、大阪をはじめ全国約10店舗の百貨店で餅の販売にこぎつけました。
 


父・岳史さんは、店の変化を感じています。

岳史さん:
「(息子が)外に出て行っているので、いろんなお客さんがくるようになった。SNSも駆使してやっているので…。それはそれでいいこと。私たちはもうついていけないので」
 
店を受け継ぎだ後、衝突がなかったのか聞いてみました。
 
ダニエルさん:
「衝突はないが、自分の好きなようにと伝えられていて、だからこそ『あめこ』が成長できている」
 
岳史さん:
「前に進むことは私は評価したい。僕が何か言うのではなく、失敗も成功の糧になる。一切口出ししないようにしている」


240年あまり続く「あめこ」。ダニエルさんは伝統文化に自分の感性を取り入れ、餅のように柔軟に店の魅力を高めたいと意気込みます。
 
ダニエルさん:
「『あめこ』の可能性に自信がある。越前市だけでなく、海外でもチャンスがあれば展開をしたい」
      

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