大阪地検特捜部にいた現役の検事が起訴された異例の裁判で、きょう=15日、「取り調べ映像」が法廷で再生されました。

大声を張り上げた検事には、組織内での「大きなプレッシャー」がかかっていたことが分かってきました。

この裁判をめぐっては、「検察なめんなよ」などと威圧的な取り調べでえん罪を生んだ検察組織の責任が問われています。

■「まだ言い訳するなんて!」“どう喝”検事は「無罪」主張

先週の初公判に続き、15日も満席となった異例の裁判。

(取り調べを記録した録画・録音より)
【2019年12月 田渕検事】「嘘だろ」「嘘をついて、まだ言い訳するなんて!ひどいだろ!」

大阪地方裁判所の大法廷には、大声でどう喝し続ける検事の声が何度も響き渡りました。

取り調べで罵倒や脅迫を行った「特別公務員暴行陵虐」の罪に問われている、当時大阪地検特捜部にいた田渕大輔検事(54)は「無罪」を主張しています。

■“部下の供述”などから逮捕され…その後「無罪」

なぜ、このような取り調べに至ったのか。

先週始まった裁判で、徐々に背景が明らかになってきました。

2019年、不動産会社「プレサンスコーポレーション」の元社長・山岸忍さんが土地取引をめぐり部下らと共謀して21億円を横領したとして逮捕・起訴されました。

山岸さんの関与を認める部下の供述などから、特捜部が山岸さんの逮捕に踏み切りましたが、裁判で部下の供述は“否定”され無罪となりました。

「上級庁から早めの中間報告を求められ…」主任検事からメール

裁判で明らかにされたのは、「特捜部が山岸さんの部下を逮捕した翌日(2019年12月6日)」に主任検事を務めた蜂須賀三紀雄検事が、田渕検事らに送っていたメールです。

【蜂須賀検事からのメール】「上級庁(最高検察庁)からは、色々御指導いただいており、本当に悪いやつの処分をどうするのかということを含め、早めの中間報告を求められており(来週11日頃!)メリハリを付ける必要があります」

5日後に迫る最高検察庁への報告までに「本当に悪いやつ」、つまり山岸さんを「逮捕するかどうか判断したい」と伝える内容です。

■メールの翌日から“机を叩く”ようになり

メールの翌日(2019年12月7日)から、田渕検事は取り調べで机を叩き始めます。

(以下、取り調べを記録した録画・録音より)

【2019年12月7日 田渕検事】「なめんじゃねえよ!(机を叩く)いい加減なこと言っちゃダメだろ!なんでそんないい加減な説明するんですか!」

【2019年12月8日 田渕検事】「(机を叩く)嘘だろ。なんだその悪びれもしない顔は。悪いと思っているのか。悪いと思ってるんですか。

嘘をついて、まだ言い訳するなんて!ひどいだろ!命賭けてんだよ。検察なめんなよ」

【2019年12月9日 田渕検事】「あなたはプレサンスの評判をおとしめた大罪人ですよ」

この取り調べの日を境に、部下は山岸さんの関与を認める供述をするようになりました。

【山岸さんの弁護団・中村和洋弁護士】「『逮捕・起訴に向けて頑張りましょう』と(主任検事が)発破をかけている。その時点では全く証拠はない。一方的な思い込み・想定で捜査がなされたということが明らかになってきた」

■取り調べが「特別公務員暴行陵虐罪」に当たる…山岸さんは「付審判請求」

今回の裁判で主任検事のメールの内容を初めて知った山岸さんは驚きを隠せませんでした。

【山岸忍さん】「何の客観証拠もなかったわけですよね。ところが、彼らは私のことを『本当に悪いやつ』と断定して私の逮捕に突っ走ったわけですので、こんな人権侵害って本当にあるんですか」

山岸さんはこうした取り調べが「特別公務員暴行陵虐罪」に当たるとして、田渕被告を刑事告発しましたが、大阪地検は不起訴処分としていました。

そこで山岸さんは裁判所に対して、“起訴”を求める「付審判請求」を行いました。

大阪地裁は「陵虐行為があったといえるが、起訴するまでのことではない」として請求を認めませんでしたが、山岸さんの「不服申し立て」を受けた大阪高裁は、地裁の決定を取り消し、請求を認めました。

それによって田渕検事が“起訴”され、今回の刑事裁判が開かれることが決まっていました。

■1時間以上にわたり“取り調べ映像”が再生

15日は、証拠として1時間以上にわたり田渕検事の取り調べの映像が法廷で再生されました。

【検察官役の指定弁護士・山口昌之弁護士】「別の組織(最高検など)が同じ録音録画を見て口頭注意のみで終わっていたということを含めて、組織性という観点から立証したつもりです」

次回は来月24日、主任検事を務めた蜂須賀三紀雄検事の証人尋問が行われる予定です。

(関西テレビ「newsランナー」2026年7月15日放送)

■「付審判請求」とは

「付審判請求」(ふしんぱんせいきゅう)は、公務員が職権を濫用する犯罪等に限っては裁判所に“起訴”するよう求めることができるという手続きです。

刑事事件で起訴するかしないかを決める権限を持っているのは、原則として検察だけとなっていますが、いくつか例外がある中の1つです。

検察官役は、裁判所が指定する弁護士が担います。

関西テレビ
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