マイページ
「近くで産める」安心 神石高原町の助産院で町民が初出産 小さなコミュニティーにも“産む場所”を【広島発】|FNNプライムオンライン

「近くで産める」安心 神石高原町の助産院で町民が初出産 小さなコミュニティーにも“産む場所”を【広島発】

Google ニュース プリファードソース

広島県神石高原町に2025年に開院した助産院で、初めて町民が出産した。一方、県内では今も11の自治体に分娩施設がない。“地元で産み育てる”ための取り組みが、小さなコミュニティーでも出産環境を維持するモデルになろうとしている。

出産できる場所がなかった町に産声

神石高原町に開院した「神石のたまご助産院」で、町内に住む女性が初めて出産した。母親の馬屋原沙紀さんは、「夫に駆けつけてもらえますし、近いという安心感は大きなメリットです」と話す。

「神石のたまご助産院」で最初に出産した馬屋原沙紀さん
「神石のたまご助産院」で最初に出産した馬屋原沙紀さん
この記事の画像(8枚)

神石高原町では2004年の合併以来、分娩を扱う産婦人科がなく、20年以上も町内で出産することはできなかった。この助産院ができるころに3人目を産んだ母親は、「福山まで行かなくても身近に病院があるのはいいなと思います」と話していた。

広島県内で出産可能な施設がない11の自治体
広島県内で出産可能な施設がない11の自治体

広島県内では、安芸高田市、府中市、竹原市、大竹市、江田島市、安芸太田町、北広島町、世羅町、熊野町、坂町、大崎上島町の11の自治体に出産できる医療施設がない。神石高原町でもこれまでは、車で30分以上かけて福山市の病院へ通う必要があった。

「神石のたまご産婦人科」「神石のたまご助産院」
「神石のたまご産婦人科」「神石のたまご助産院」

少子化に歯止めをかけようと、まちおこし会社「MSERRNT」が町外から医師や助産師を招き、2025年秋に「神石のたまご産婦人科」と「神石のたまご助産院」を併設して開院した。
産婦人科の日下剛院長は、「地域が縮小していくことを変える原点にしたいので、『神石のたまご』と名付けました」と語る。

分娩台ではなく畳の個室で自然なお産

開院から約9か月後の2026年5月下旬。第2子の出産予定日を1週間後に控え、神石高原町に住む小学校教師・塚本智美さんが診察を受けていた。
エコー画面を見ながら、日下院長が赤ちゃんの様子を伝える。
「これ足ですね。指まで見えていますよ」
すると、モニターに映る小さな命が元気に動き出した。
長男は自宅から車で約1時間かかる福山市の病院で出産したが、今回はこの助産院で産む予定だ。

産婦人科に併設する助産院は畳敷きの個室
産婦人科に併設する助産院は畳敷きの個室

助産院は畳敷きの個室で、分娩台を使わない“自然なお産”を行っている。併設する産婦人科とともに妊娠から出産まで一貫してサポートする仕組みだ。
スタッフが塚本さんに優しく声をかける。
「慌てなくていいので、ゆっくり待ちましょう。赤ちゃんを信じて」

同じ日に出産した馬屋原さん(左)と塚本さん(右)
同じ日に出産した馬屋原さん(左)と塚本さん(右)

その1週間後、6月4日に塚本さんは元気な女の子を出産した。同じ日、塚原さんの知人である馬屋原さんも第3子を出産。町の助産院で2人の赤ちゃんが相次いで誕生した。
馬屋原さんは「誕生日も一緒になれて、さらに倍、うれしくなりました」と喜び、塚本さんも「もう戦友かなぐらいに思っています。本当にぐっと強く近づいた感じがします」と笑顔を見せた。

この町で産んで育てられる喜び

町の助産院で町民が出産するのは初めて。神石高原町の入江嘉則町長も駆け付け、「おめでとうございます」と2人を祝福した。
厚生労働省の人口動態調査によると、神石高原町の出生数は2004年の59人から、2025年は速報値で16人と3分の1以下まで減少している。
入江町長は、「町民がここで出産することは『神石のたまご』の目的でもあります。町民に利用してもらうことが実現できて、本当にうれしく思っています」と話した。

退院の日。
日下院長が塚本さん夫婦のもとを訪れた。
「おめでとうございます。元気に生んでくれて、体重も早く増えてるしね」

退院の日を迎えた塚本さん夫婦
退院の日を迎えた塚本さん夫婦

塚本さんの夫は、生まれたばかりの娘を見つめながら「とってもかわいいです」と目を細める。
塚本さんは、地元で出産できた喜びをかみしめるように語った。
「子育てしやすい町だと思っていました。でも何が足りないかといったら、産む場所だったんだと感じていて。町で産んで育てられることがすごくうれしい。より子育てしやすく、子どもを大事にする町にぐっと近づいたなと思います」

神石のたまご産婦人科・日下剛 院長
神石のたまご産婦人科・日下剛 院長

一方で、全国では分娩施設の集約化が進み、小規模な地域で出産環境を維持することは容易ではない。日下院長は、「お産は大きな病院へ集約する方向に進んでいますが、助産院の存在は今もあります。小さなコミュニティーでも存続可能な形で、お産する場所を継続できるモデルにしたい」と力を込める。

地元で産み育てられる町へ。神石高原町で誕生した小さな命が、地域の未来に希望の光をともしている。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
テレビ新広島

広島の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。

  • 1
  • 2
関連記事
【よく一緒に読まれている記事】
子どもの「日焼け対策」が進化 スプレータイプの日焼け止めで簡単に “ひんやり服”や保冷剤が入る帽子も登場
子どもの「日焼け対策」が進化 スプレータイプの日焼け止めで簡単に “ひんやり服”や保冷剤が入る帽子も登場
テレビ新広島の他の記事
呉市倉橋町鹿老渡で倒壊した空き家が市道ふさぐ 緊急代執行で撤去開始 雨の影響で崩れたか
呉市倉橋町鹿老渡で倒壊した空き家が市道ふさぐ 緊急代執行で撤去開始 雨の影響で崩れたか
都道府県
ネパール洪水と国内の豪雨災害被災地に1億円寄付 宇宙で発酵「獺祭Moon」の売上金 山口・岩国市
ネパール洪水と国内の豪雨災害被災地に1億円寄付 宇宙で発酵「獺祭Moon」の売上金 山口・岩国市
社会
酒に酔った状態で車を運転し事故を起こす 警察官と職員を4日付けで懲戒免職処分 広島県警
酒に酔った状態で車を運転し事故を起こす 警察官と職員を4日付けで懲戒免職処分 広島県警
社会
【マツダ】新型「CX-5」 受注1万7000台到達  国内販売開始から約3か月 目標を大きく上回る
【マツダ】新型「CX-5」 受注1万7000台到達  国内販売開始から約3か月 目標を大きく上回る
都道府県
一覧ページへ
×