知人と食事に行った。地元では有名な洋食店で、知人はフライが入った日替わりランチを注文。食事もそろそろ終わりかな…というタイミングで、知人がバッグからタッパーを取り出し、お皿に残ったフライとご飯を詰めだした。

筆者がちょっと驚いた顔をしたからか。「もったいないからね」と言われ、「そうだね」と返した。

SDGsが広まる今、「もったいない」を実行することは大切だと思う。とはいえ、これからは食中毒なども増える季節。勝手に持ち帰っていいものなのか。注意すべき点など、飲食店専門経営コンサルタントの成田良爾さんに聞いた。

勝手に持ち帰るのは法的にNG

【飲食店専門経営コンサルタント 成田良爾さん】
飲食店で食べ残したものを“勝手に持ち出す”のはNGです。これはマナー違反ということではなく、法的にダメなのです。

飲食店は「店内で飲食する」ことを前提に、安全性を確保した飲食物を提供し、対価を頂いています。

つまり、飲食店とお客さまの“契約”は、店内で飲食をする間だけ成立することが、民事上および食品衛生法等で定められているのです。

ただ誤解しないでいただきたいのは、「食べ残しを持ち帰ることが違法」なのではありません。冒頭の事例のように“勝手に持ち帰る”ことがダメなのです。

お客さまが持ち帰りを希望し、店側が了承すれば、新たな合意をすることになり、持ち帰ることが出来ます。

国が定めた「持ち帰りのガイドライン」

2024年12月、消費者庁と厚生労働省が『食べ残し持ち帰り促進ガイドライン』を策定。“安全・安心な食べ残し持ち帰り”のために、店側、お客さま側それぞれに求められる行動などがまとめられています。

【前提】
食品ロス削減の観点からは、「その場で食べきることが最も重要」
*消費者:食べきれる量を注文するなどの行動が求められる
*飲食店:小盛や小分け商品の提供などの工夫が求められる

【双方の協力と理解】
*飲食店:従業員及び消費者に食べ残し持ち帰りについての基本的な考え方および目的の周知を行う
*消費者:食中毒に対する正しい理解と自己責任の下に食べ残し持ち帰りを行う

「その場で食べきる」ことが大前提としてあり、どうしても食べきれなかったものを食品ロス削減の手段の一つとして持ち帰るということです。

「持ち帰りは自己責任」が前提ですが、店側も食中毒などのリスクを防ぐために十分な配慮…例えば持ち帰ってよい料理や注意点などをしっかり説明する必要があります。

店は“安心・安全”に持ち帰ってもらいたい

店側としては、作った料理を最後まで食べていただけるのはうれしいことです。

持ち帰った料理を安心しておいしく食べていただくためにも、できれば料理をお預かりして確認し、衛生的にキレイに包んでお渡ししたいと考えます。

例えばソースがかかったものや、口をつけたものは細菌が増えやすいので外すとか、冷たい料理には氷を付けてお渡しするとか、店側もしっかり管理したい。

ですから、持ち帰りたいと思ったら、遠慮せずに店に声をかけていただきたいのです。

今のガイドラインでは「持ち帰りはお客さまの自己責任が前提」とはいえ、店側も安全に食べてもらうためには、持ち帰ったらどのように保存するか、とか、いつまでに食べるのか、などの諸注意を丁寧にしっかりと伝えなければいけません。

飲食店専門経営コンサルタント・成田良爾さん
飲食店専門経営コンサルタント・成田良爾さん
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私が携わっている店はすべて持ち帰りOKです。どの店も日頃から「お客さまとのコミュニケーション」を第一に考えるようにしており、持ち帰りも要望に出来る限り応えます。

持ち帰れない料理については理由を丁寧に説明してご理解いただく。すると喜んで良い気分でお帰りになり、次の来店につながります。そしてさらにコミュニケーションが広がっていくのです。

持ち帰りOKが当たり前の社会に

10年以上前の話になりますが、海外でレストラン事業を成功させているジェネラルマネージャーから「なぜ日本の飲食店は持ち帰りができないのか」と聞かれたことがあります。

以前は、食中毒などが発生した際の責任の所在が曖昧でした。お客さまが店に言わずに持ち帰ったとしても、トラブルが起きた場合、保健所は店に調査に来ます。そういったリスクを考え、多くの飲食店が「持ち帰りNG」としてきました。

しかしSDGsの広まりを受け、大手チェーン店などを中心に「食べ残した料理の持ち帰り」に対応する飲食店が増えてきています。「持ち帰りNG」という印象があるホテル業界でも、積極的に持ち帰りに取り組むところがでてきました。

サステナブルを意識しているかどうかで、企業イメージ、ひいては株価などにも影響しますから、企業としても対応せざるを得なくなってきている側面もあります。今後は、高級レストランなどでも「持ち帰りOK」という流れになっていくのではないでしょうか。

高級ホテルでも大衆食堂でも、やはり大事なのはコミュニケーションです。お店とお客さまがしっかり連携をとって、安全・安心に“もったいない”を減らしていければと思います。
(飲食店専門経営コンサルタント・成田良爾さん)

取材: 高知さんさんテレビ