住民投票で大阪市民に2度も否決された大阪都構想。住民投票の範囲を大阪市民から大阪府民全体に広げるという“奇策”で、悲願の達成を図ろうとしていた、日本維新の会の吉村洋文代表。
その手段として目をつけたのが、東京以外に首都機能のバックアップをもうける「副首都法」であったが、先週、自民党・高市総裁から、住民投票の府域拡大の取り下げを迫られ、“奇策”は封じられた。
■都構想のための副首都?
副首都と大阪都構想がどう関係するのかは理解が難しい。
そもそも維新は連立発足後の自民党との協議で、「副首都」の条件として、東京23区のような特別区の設置が必要だと主張した。政令市を廃止して特別区を設置し道府県との二重行政を解消するいわゆる「都構想」である。
これに対して福岡や名古屋など副首都に意欲を示すが、「都」になることを望んでいない候補地関係者が猛反発。「大阪ありきの副首都」との批判をかわすため、特別区の設置以外の選択肢を条件に加えた。
ただ維新は大阪を「都」にする芽をどうしても残したいので、副首都法の「付則」として、都構想を実現するための法律「大都市法」を改正して、副首都の名称を「都」にする場合は住民投票の範囲を「市」から「府(道・県)全域」に広げることを副首都法案に盛り込んだ。
■高市総理「“都構想”を含めた“副首都構想”高く評価」
吉村代表の“奇策”は、連立パートナーである自民党議員の反発でついえた。大阪選出の議員が他の政令市の議員を巻き込み「府民、県民の住民投票の結果で政令市が廃止されてもいいのか」と訴え、「住民自治を定めた憲法に違反する」との声が広がったことが決定打となった。
その後、高市総理が「大阪都構想に賛成」と言ったか、言わないか論争が吉村代表と大阪自民幹部の間でわき起こるのだが、私たちが判断できるのは高市総理が記者団に語ったこの言葉しかない。
「“都構想”を含めた“副首都構想”は、我が国で初めてとなる、統治機構改革であります。私は高く評価をしております」
私は高市総理のこの発言を聞き、自民と維新の「一体化」につながる、大きな転換点になるのではないかと感じた。
■維新に近かった安倍総理も賛意は示さず
私は2015年に行われた1回目の「都構想」の住民投票を取材した。当時、安倍総理、菅官房長官と維新の橋下代表、松井幹事長との「忘年会」が恒例行事となるなど、安倍政権と維新の近さは際立っていたが、それでも安倍総理は都構想について「大阪の皆さまが適切に判断されること」と、明確な賛意を示すことはなかった。
安倍総理のスタンスは大阪の自民党が猛反対していることを踏まえれば、当然なのだが、今回、高市総理が「大阪都構想を含む副首都構想を高く評価する」と一歩踏み込んだことで、住民投票で「都構想」が実現し、副首都にも指定されれば、大阪でも自民は維新と歩調を合わせざるを得なくなる。
■2月の衆院選 自民圧勝でも大阪はわずか「1勝」
今年2月、衆院の解散総選挙で自民党は地滑り的な圧勝を収めながら、大阪の19選挙区で自民がとったのは1議席のみで、残りはすべて維新がとった。(自民の比例復活は6人)
事前の情勢調査では、自民党は大阪で5議席程度を獲得するとの見方もあっただけに、大阪における維新への強固な支持が改めて浮き彫りになった選挙だった。
この選挙結果を受けて思い浮かべたのが、ドイツの保守政党、キリスト教民主同盟(CDU)とキリスト教社会同盟(CSU)の関係だ。
■ドイツ・バイエルン州の地域政党とすみ分ける全国政党
CDUは全国政党で、自民党のような存在。現在のメルツ首相や長期政権を築いたメルケル、コール元首相らが率いた保守政党だ。
CSUはミュンヘンを州都に持つバイエルン州の地域政党で維新のような存在。第二次大戦後、西ドイツ時代を含めて一貫して州議会の第一党を維持し、知事にあたる州首相のほとんどはCSUから出ている。
2つの政党は活動テリトリーをすみ分けている。つまりCDUが地方議会を含めてバイエルン州で候補者を出すことはないし、CSUはバイエルン州外で活動することはない。別の政党ではあるが、「姉妹政党」として競合することはないのだ。
連邦議会ではCDU/CSUとして統一会派を組んで行動を共にし、与党になれば閣僚も出しあう。
■大阪では勝てそうにない「自民」と大阪以外では勝てそうにない「維新」
私はかつてベルリン特派員だったが、「バイエルン王国」を前身に持つバイエルン州は独自の文化と独立心を持ち、他のドイツの州とはやや異なる雰囲気を強く感じた。標準ドイツ語とは異なる言葉遣いやアクセントを含め、なんだか大阪と東京の関係を思わせる。
CSUは地域政党として、80年近くバイエルン州議会の多数派を持つが、維新は2011年以来、大阪府知事、大阪市長の両ポストを維持し、大阪府議会、大阪市議会でも過半数を持つ。一方で、全国政党化を掲げながらも大阪、関西以外での支持は広がらない。
今後も、大阪では勝てそうにない自民と、関西以外では勝てそうにない維新。であるならば、別々の政党ではあるが、姉妹政党として活動地域を分け、相互補完しあう「新しい連立」の形として「ドイツ式」というアイディアも興味深い。
■地域政党と全国政党の関係
維新の源流は松井一郎元代表らが大阪府議会の自民党会派から飛び出して作った「自民党・維新の会」だ。自民党を離党する決意を固めていたにもかかわらず、あえて自民党を名乗ったことについて松井氏は「こっちが本当の自民党やろうという強い思いがあった」と著書で明かしている。
もっとも、大阪における自民、維新の関係には埋めがたい溝があり、この論考は多くの人から一笑に付されるであろう。
ただ1年前に自民と維新が連立を組むことが想像できたであろうか。来年春の「都構想」住民投票、統一地方選の知事選挙や議会選挙の結果が、高市総理の政権基盤の行方も相まって、想像を超える化学反応を引き起こしても驚きではない。
(カンテレNEWSチャンネル編集長 佐藤一弘)
