11月11日は「独身の日」

リアルタイムの取扱高で盛り上がりを見せる中国のネット通販最大手の「アリババグループ」。

アリババグループの生配信番組
現在の取扱高は3723億元(約6兆円)を超えています!しかしこれは序章にすぎません!

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中国では1が並ぶため「独身の日」と呼ばれる11月11日には、1年で最大規模のネット通販セールが行われている。

上海市民:
顔パックと日用品、服を2枚。2~3カ月分の量を買いだめしました。去年より3~4割多く買っています

アリババでは、11月初めに先行販売期間を設け、11日午後8時時点での取扱高は日本円でおよそ7兆4000億円を超えたと発表した。

近年は売り手などが生配信をして消費者とチャットでやり取りしながらアピールするライブコマース=生配信販売が主流となっていて、日本企業も続々と売り込みを強化している。

新型コロナウイルスの影響で、海外旅行を諦めた消費者が日本の医薬品やサプリメントなどをまとめ買いしているという。

中国で盛り上がるライブコマース。その波はこんなところでも…

山に囲まれた茶畑から生配信

取材に向かったのは、北京から約1540km、飛行機で4時間、そこから車で3時間ほどかかる湖北省恩施市の山あいの町。

生配信で商品販売する冉さん(31):
寿眉、土家族(トウチャ族)のお茶を説明します。1年育てれば「白茶」になり、3年たつと「」、7年たてば「宝物」。7年以上のものはお金があっても買えないものです

お茶農家の男性が生配信している場所は、霧深い山に囲まれた標高1200メートルの茶畑が広がる場所の真っただ中。

ここから、地域特産のお茶などを売っている。

生配信で商品販売する冉さん:
香ばしくて甘い。ちまきやハチミツのような甘み。一度に15杯分入れることができる土家族(トウチャ族)のお茶、一度ご賞味ください

山奥でも高速通信

データ通信量を削減しながらも高画質で動画を表示。

通信ラグも数秒単位にするなど、アリババグループが独自と語る技術が山奥での高速通信を支えている。

ときには工場からの生配信。さらに、少数民族「土家族(トウチャ族)」の歌を交え、地元の農産品をPRする。

生配信で商品販売する冉さん:
生中継は本当にわたしの人生の一部であり、未来につながるもので、わたしの夢でもあると思っています

かつては町に4つの店を構えていたというが、湖北省が震源地とされる新型コロナウイルスの影響で店の半分はつぶれ、ライブコマースでの販売にシフトした。

今では、1日平均3万元以上、日本円で50万円ほどの売り上げがあるという。

ライブコマースで商品販売する冉さん:
さあ、大詰めです。10、9、8・・・販売終了です

新型コロナという逆風にあっても、デジタルの波に活路を見いだす中国。「独身の日」におけるアリババグループの取扱高は今回、過去最高になるとみられている。

ライブコマースの魅力は「情緒的価値」

三田友梨佳キャスター:
早稲田大学ビジネススクール教授の長内厚さんに聞きます。中国の「独身の日」の記録的な売り上げを長内さんはどうご覧になりますか?

長内厚さん:
ライブコマースが注目だと思います。従来のネット通販も非常に便利ですが、どうしても数値的や言葉でしか説明できない価値しか伝えられない、これを「機能的価値」と言いますが、それに対してライブコマースはもっと「情緒的な価値」が伝えられる。それによって大きな利益、売り上げが期待できるんだと思います

三田キャスター:
そこがネット通販よりもライブコマースの方が売れる秘訣だということですか?

長内厚さん:
そうなんです。従来のネット通販ではどうしても機能や性能を伝える、そして技術競争によって結局価格が勝負になってしまいやすいんです。そうするとたくさん売れたとしてもなかなか儲からない。それに対して、使ってみてはじめてわかる質感やデザイン、あるいは持っていて自慢したくなるステータス性を伝えられることがライブコマースの良いところです

長内厚さん:
これは実際の店舗で本来は伝えたかったことだと思うんですが、こうした情緒的価値を伝えるためには、体験の共有が何よりも重要で、コロナ禍の中で体験の共有の機会が少なくなっている。その中でどうやって体験を増やして情緒的な価値を増やしていくか、これがキーになっていくんです。中国だけの現象では無くて、我々日本もなかなか外に出られない、ネットに頼ってしまう。そんな中でも情緒的価値の高いビジネスを増やしていく、お客さんも情緒的価値の高い商品を買う機会が増えることが大切だと思います

三田キャスター:
機能的な価値以上に心に訴えることが大切だということですね。インバウンド消費が見込めない中で、中国の消費者に向けて越境ライブコマースに活路を見いだそうという動きも広がっていますが、今後は日本国内の消費者に向けてというのも広がっていくのかもしれません

(「Live News α」11月11日放送分)