カスタマーハラスメント、いわゆる「カスハラ」をめぐり、対応のあり方が大きな転換点を迎えている。三重県では、全国で初めて刑事罰を盛り込んだ条例案が示され、働く現場の安全確保に向けた動きが進む。一方で、どこまでが正当なクレームで、どこからが違法行為なのかという線引きには課題も残る。社会全体でのルールづくりが問われている。

「カスハラは犯罪」全国初の条例案

客からの理不尽な要求や暴言などを指す「カスタマーハラスメント」、いわゆる「カスハラ」。

この記事の画像(24枚)

こうした行為を防ぐために、三重県では全国で初めて刑事罰を盛り込んだ条例案を18日、議会に示したという。今や社会問題になっているカスハラの抑止力となるのかというところで注目されている。

18日の「どうなの?」は「『カスハラは犯罪』条例案、働く側の安全をどう守る」について見ていく。

安宅晃樹キャスター:
このカスハラを犯罪と位置付ける、踏み込んだ条例案の背景に何があるのか。三重県によりますと、カスハラ行為とは、従業員のミスに対して繰り返し謝罪を要求するなど、客などから受ける著しい迷惑行為によって働く環境を害されるものです。

現在はこれだけではなくて、「殴るぞ!」などといった危害を加えるような告知がないと刑法の強要罪には該当しません。そこで、この条例案では悪質な行為を「特定カスハラ」と整理して、防止するための手段としての罰則を規定するといいます。

では、どんな行為が対象になっていくのか、例えば、職員や従業員の対応によって「負傷したんだ、ケガをしたんだ」といったような真偽不明な主張を厳しい口調で繰り返して、金銭を要求したりだとか、ルール違反の客に対してルールを守るように要請したら、正当な理由がなく拒み続けて、さらにはひどい罵声を浴びせながら、そのお店や施設の利用を継続するなどがあるといいます。あとは、謝罪を求める、面会を求めるといったことも特定カスハラの例に定義されるといいます。

遠藤玲子キャスター:
どこからが特定カスハラになるのかというところもまだ分からないですけど、消費者目線で考えると、正当な主張をしているのに「罰則だ」といわれてしまうのではないかなという考えもあるかなと。

安宅キャスター:
その点については、正当な理由のある主張であれば、特段の問題はないといいます。

罰則までの流れ “段階的に判断”

安宅キャスター:
では、実際に罰則に至るまでどのような流れなのか、かなり細かく決まっています。

では、実際に罰則に至るまでどのような流れなのか、かなり細かく決まっています。まず、特定カスハラが発生したら、事業者から知事に申し出を行うと、その際には録画や録音といった証拠を添えます。

そこから、県によると恣意(しい)的な運用を防ぐためにも、弁護士など有識者で構成される審査会というものが特定カスハラかどうかチェックします。ここで認められたら特定カスハラをした人に知事から“禁止命令”というものを出します。

それでも、この禁止命令を出された人が行動を改善せずに違反をしていたら警察などに告発。
その上で、裁判所がそれを有罪と認めれば、50万円以下の罰金か拘留または科料になるというシステムが決まっています。

山﨑夕貴キャスター:
結構、工程が多いんですね。禁止命令を出して、さらにそれに違反したらということなんですね。

三宅正治キャスター:
外部のチェックを入れるということで、消費者の権利への配慮ということも考えていますね。

全国的に拡大…実際に認定された例も

安宅キャスター:
実は、こういったカスハラへの対応は全国の自治体でも徐々に広がっています。
「イット!」が調べただけでも、埼玉県は2026年に始まりますが、全国の18自治体に広がっています。

その中でも一歩進んだ条例があるのが三重・桑名市です。どんなものかといいますと、市はカスハラを行った人に対してまず警告を行います。警告をして、その後、改善が不十分であれば氏名を公表することができるといいます。実際に2025年は「警告」に至った例が2件あったといいます。

榎並大二郎キャスター:
名前を出すというところまでいくと、かなり踏み込んでいますし抑止力もありそうですよね。

安宅キャスター:
実際に、どんなカスハラ行為があったのか見ていきます。発生したのは2025年11月、市内の病院でした。入院中だった入院患者が同じ部屋に入院している患者の独り言が原因で「不眠になった」ではないかと主張し、これは虐待だと言っていたといいます。

病院側が謝罪したにもかかわらず、「さらに上の看護師を呼べ」ですとか、あとは「主治医を呼べ」、そして「治療費を払わない」などといった主張を繰り返したんです。

他にも病院側とのやり取りの際に「第一声で謝罪しないのは何でなんだ」だとか「訴える」などといった発言もあったということで、市はカスハラ認定しましたが、その理由については、やはり要求内容に妥当性というところがなく、その手段などが社会通念上不相応であったためとして、市長が翌月に書面での警告を行ったということです。

このケースの場合には、最終的には改善がみられたため氏名の公表には至らなかったわけですが、カスハラとして認定されたケースは、発生した月やカスハラをされた側の業種、言動や何を要求したかなどが市のホームページで公表されているということです。

三宅キャスター:
それだけ細かかったら「あのトラブルか?」と分かる人には分かるかもしれないですね。かなり抑止力になりそうな気がしますね。

安宅キャスター:
市の担当者によると、カスハラを受けた事業者が「じゃあ市に相談する」と伝えただけで、実際にカスハラが収まったといったこともあるといいます。

課題は「線引き」と「証拠の確保」

一方で、三重県の刑事罰を盛り込んだ条例案について見ていきましたが、専門家はどう見ているのか。

亀井・和氣法律事務所の亀井正貴弁護士によると、まずカスハラという概念自体がやっぱりあいまいなので、立証するための証拠保全が非常に重要だといいます。

では、どんなものが証拠なのかというと、録画や録音というのはもちろんなんですが、その他にも利害関係がない第三者の人の証言や、すぐにメモを残すことも大切だというところで、一番取り入れやすいとみられます。

ということで今日の「どうなの?」は、カスハラは犯罪、条例案、働く側の安全をどう守るについて見てきましたが、仮にこの条例案が可決され、そして有罪になった場合には50万円以下の罰金などが課されます。また、専門家からはカスハラから自分の身を守るために、録音や録画、さらには別の人の証言、そしてすぐにメモを残すことも有効だといいます。

榎並キャスター:
働く側も消費者も、対等に尊重しあえる環境づくりをこれからも考えていかないといけないですよね。

(「イット!」6月18日放送より)

この記事に載せきれなかった画像を一覧でご覧いただけます。 ギャラリーページはこちら(24枚)