米どころの秋田・大仙市で、子育てと仕事の両立に悩んだ1人の女性が“ハーブの癒やし”と出会い、農業の新しい可能性を切り開いている。江戸時代から続くコメ農家に生まれた彼女が選んだのは、伝統の上に小さな香りの種をまく挑戦だった。
子育ての疲れを救ったハーブティー
秋田・大仙市。水田が広がるこの地で、高川麻衣子さん(41)は8代目の農家として暮らしている。
かつては金融会社で働き、3人の子育てと仕事の両立に追われていた。
子供を公園に連れて行ったある日、「公園で座り込んで立ち上がれなくなった。『自分、大丈夫かな』と思うほど疲労とストレスがあった」と振り返る高川さん。
そんな日々の中で、SNSで見かけた“ハーブを生活に取り入れる人”の姿が目に留まった。
リラックス効果があるといわれるハーブティーを飲んでみると、心と体がふっと軽くなるのを感じたという。
「自分で育てたい」 決断と家族の反応
ハーブの魅力と効果を知った高川さんは、半年間独学で学び資格を取得。「ハーブを自分の手で育ててみたい」という思いが募り、6年前、会社を辞めて実家の農家を継ぐことを決意した。
しかし、ハーブ栽培は家族にとって未知の世界。
「最初は両親に『雑草を植えるのか』と驚かれた」と話す高川さん。育てたハーブが雑草と間違われて刈られたこともあったという。
それでも小さな庭から始め、粘り強く栽培を続けた。
2年目には初めてハーブティーを商品化し、家族もその魅力を実感していった。
加工場「Kitien」誕生 広がる挑戦
2024年夏、家族とともに加工・販売まで手がける加工場「Kitien(きちえん)」を立ち上げた。
地元野菜とハーブを使った色鮮やかな「ピクルス」は、大仙市で毎年8月の最終土曜日に開かれる「全国花火競技大会(大曲の花火)」をイメージした自信作だ。
高川さんは「家族で飲んだハーブティーをきっかけに、両親も『これいいね』と認めてくれるようになった」と笑顔を見せる。
いまではマルシェへの出店やハーブ講座の開催など、地域への発信も積極的に行っている。
子供たちと同じ時間を生きる農業
農業を継いだことで、子供たちと過ごす時間も増えた。
「働く姿を子供に見てもらい、ハーブの匂いを一緒に感じられるのが農業の魅力。8代目だからどう、という意識はないが、先祖が続けてきた“体に良いものを作る”という営みを守っていきたい」と語る高川さん。
今年の夏は、代々受け継がれるレシピで作る「赤しそジュース」の商品化も控えている。
生まれ育った土地で育てたハーブが、家族を癒やし、地域に安らぎを届ける。
高川さんの畑にはきょうも、かぐわしい香りが広がっている。
(秋田テレビ)

