事故や病気で脳を損傷し、記憶することや感情を抑えることが出来ないなど、「高次脳機能障害」という障害に苦しむ人が全国に約23万人いるとされています。

国は2026年4月、当事者を支援する法律を新たに策定。

背景には深刻な“孤立”がありました。

■「気が短くなった」バイク事故で“高次脳機能障害”に

早川和紀さん(49)は、19歳の時にバイクで事故に遭い意識不明に。

一命は取り留めたものの、手足に麻痺が残りました。

しかし、異変はそれだけではありませんでした。

些細なことで怒りをあらわにしてしまう。

なぜ感情がコントロールできないのか、自分でも説明できず、周囲から怪訝な目で見られることが増えていきました。

その後、かなり経ってから「高次脳機能障害」と診断されました。

■職場で孤立…「すぐ怒る」は人格の問題ではない

高次脳機能障害とは、事故や脳卒中による脳の損傷が原因で、怒りっぽくなったり、物覚えが悪くなったりといった、それまでにはなかった症状が現れる障害です。

本人は日常生活に支障をきたす一方で、外見からはわからず、周囲から「人格に問題がある」と誤解されてしまうケースが少なくないといいます。

早川さんも同様で、怒りっぽくなったことで職場では孤立し、収入も厳しい状況に追い込まれていきました。


■「盗んだ自覚」なく…障害は警察に言わず「言っても、わかってもらえない」

2025年12月、早川さんはコンビニでライターを1本盗んだとして逮捕されました。

店員が目の前にいる状況で、「ライターが欲しい」という感情をコントロールできず、盗んだという自覚はありませんでした。

警察で、自分の障害のことは話しませんでした。

「言っても、わかってもらえない」と思ったからです。

罰金20万円を支払うことができず、刑務所で40日間の労役を選びました。


■理解されず自殺未遂「漂白剤を飲んだ。死ねなかった」

孤立が深まっていた頃、早川さんは自らの命を絶とうとしたことがありました。

【早川和紀さん】「死のうと思って漂白剤を飲んだのですが、胃が痛くて救急車呼びました。死ねなかった、漂白剤では」

現在は、障害について詳しい就労継続支援B型事業所で週5日働いています。

全国の高次脳機能障害の患者は、約23万人(推定値)。

早川さんのように孤立する人が多く、支援団体は国に対し、公的機関による支援の必要性を訴え続けてきました。

2026年4月、「高次脳機能障害者支援法」が施行されました。条文では、行政が主体的に支援を行い、当事者の社会参加に責任を持つことなどが明記されました。


■妊娠中に“脳出血”で高次脳機能障害に 女性「相談先なく苦悩」

当事者の北島麻衣子さん(41)は、26歳で2人目の子どもを妊娠中に脳出血を起こし、高次脳機能障害になりました。

【北島麻衣子さん】「包丁のどこを持てばいいのかが瞬時に判断できなくて、刃の部分を持ってしまおうとしたり。記憶障害があると、ミルクを飲ませるのも、時間を忘れるんですよね」

物忘れなど自身の体については病院でリハビリを受けることができた一方、障害を抱えながら赤ちゃんを育てることについて相談できる場所はありませんでした。

■「人によって症状はバラバラ」新しい法律で理解進むか

新しい法律では、医療・行政・支援団体が連携して当事者を支援することも明記されました。

しかし、北島さんが、同じ障害の人と話すために開いているオンラインサークルでは、新たな法律の実効性を心配する声が多くあがりました。

【当事者】「支援法とかができても、正直現場まで下ろされること、今まで他の障害に対してもあまりなくて」

【北島麻衣子さん】「人によって症状がバラバラなので、その人に合った支援が必要だし、その方のライフステージに合わせた支援を作らないと意味がないと思っています」

外見からはわからない、だからこそ長年見過ごされてきた障害。

新たな法律で、生きやすい社会に。当事者たちの切実な願いです。

(関西テレビ「newsランナー」 2026年6月10日放送)

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