三重・菰野町の老舗和菓子店「岩嶋屋」が、町とタッグを組み新名物作りに挑戦。登山客向けに誕生した「頂きあんどーなつ」と、若き7代目職人の奮闘を追いました。
■老舗の看板商品「うすかわまんじゅう」
三重県菰野町にある「岩嶋屋」は、明治24年創業の老舗和菓子店です。

店主は、7代目の柴田啓示さん(34)。祖母の紀久江さんと父の卓哉さんとともに、3世代で店を切り盛りしています。
客:
「おばあちゃんの代からお世話になっています。娘たちが帰省するので、柏餅とちまきを買いました」

店頭には、手作りのまんじゅうやういろうが並びます。毎朝作られる「草餅」(160円)は、ヨモギの爽やかな香りと粒あんが絶品。もち米の粉と砂糖などを固めた落雁「ちんころ」(750円)は、どこか懐かしい素朴な味わいが人気です。
また、菰野町の特産・真菰(まこも)を生地に練り込んだ「どら焼き(まこも)」(150円)なども販売していますが、看板商品は「うすかわまんじゅう」(130円)です。
客:
「あんこたっぷりで、薄い皮もおいしくて大好きです」

創業当時から愛され続ける人気商品で、モチモチとした透けるような薄い皮の中に、自家製の粒あんがたっぷり詰まっています。
北海道産の小豆に、上品でクセのない甘さの「白ザラ糖」を加え、大鍋でじっくり炊き上げます。100年以上受け継がれてきた、こだわりの粒あんです。
生地は、もち米に麹を加え、発酵と寝かしを繰り返しながら3日間かけて作ります。その後、粒あんを包みますが、あんこが隠れるギリギリの薄さまで生地を伸ばすのがポイントです。
3代目・啓示さん:
「生地が少なく、あんこが多いので、普通のまんじゅうより包みにくいです」

包み終えると、半世紀以上使っている木製の発酵機「ほいろ」に入れ、1時間ほど発酵。最後にせいろで一気に蒸し上げます。
父・卓哉さん:
「手はかかりますが、“これがいい”と言ってくれるお客さんがたくさんいる」
薄い皮の中に、甘さ控えめの粒あんがたっぷり詰まっています。
■「頂きあんどーなつ」の誕生秘話
2026年3月に発売したのが、菰野町とコラボして開発した「頂きあんどーなつ」(230円)です。

客:
「友達と登山に行くので、おやつにちょうどいいなと思って買いに来ました」
啓示さん:
「町から“菰野を代表するお土産を作りたい”という話をいただき、そこから生まれた商品です」
菰野町の担当者:
「湯の山温泉や御在所ロープウエイなどで登山客も増えていて、“山”をテーマにしたお菓子を作りたいと思いました」
菰野町には、町を代表する名物グルメが少ないという課題がありました。一方で、ロープウエイや温泉で知られ、鈴鹿山脈は日本有数の登山スポットとして人気を集めています。

登山客:
「整備されていて、とても登りやすいです」
別の登山客:
「菰野インターからすぐ近くなので、アクセスはいいです」
登山口近くの駐車場は満車になるほどで、登山人気の高さがうかがえます。そこで町は、“登山中に食べるお菓子”に着目。「岩嶋屋」にオファーした理由がありました。
菰野町の担当者:
「岩嶋屋さんの『窯出しあんどーなつ』が、鈴鹿山脈にある奇岩に似ていると思ったんです」

御在所岳にある名所「地蔵岩」にある、2つの岩の間に乗った四角い岩。その形が、2024年に啓示さんが考案した四角い「窯出しあんどーなつ」に似ていたことから、新名物作りが始まりました。
■若き7代目の挑戦
味は「プレーン」「かぶせ茶」「ほうじ茶」の3種類。
プレーン生地に、四日市特産の「かぶせ茶」を加え、風味や色合いを引き立てています。さらに、バターと生クリームを加えるのもこだわりです。

啓示さん:
「生地をしっとりさせるためと、あんことバターの相性がいいので、その風味を加えるために入れています」
特製のこしあんを包み、じっくりオーブンで焼き上げると、生地はふわふわに。お茶の芳醇な香りが広がります。
さらに、いなべ市特産の「ほうじ茶」を使った商品も開発しました。
啓示さん:
「若い人にも興味を持ってもらい、気軽に食べてもらえたらうれしいです」

登山で山頂を目指すことにちなみ、「頂きあんどーなつ」と名付けられました。
菰野町の新名物を、登山客に味わってもらいました。
登山客:
「お茶の風味がして、しっとりしていて食べやすいです」
別の登山客:
「疲れた体にちょうどいい甘さで、おいしいです」
味やサイズ感も好評です。
町ではPR用のポスターを制作し、道の駅には専用の売り場を設置。本気の売り出しが進んでいます。

啓示さん:
「定番のうすかわまんじゅうに続く看板商品に育ってくれたらうれしいです」
老舗の味を守りながら、7代目の新たな挑戦が始まっています。
