元自衛隊パイロットという異色の医師が開設したのは、病院ではなく「ジム」。不調で病院に行く前に体調を整えて病気を予防してもらいたいと、医師の知見を生かした健康指導をしています。
■75歳店長 絶好調の理由は「ジム」
にぎやかな歌声。
高齢者の交流拠点、松本市の「シルバーカフェ」です。
運営するのは店長の貞松妙子さん(75)。
1日中、立ち仕事が続きますが―。
貞松妙子さん:
「全然つらくないです。皆さん心配して座ったらって言ってくださるんですけど、毎朝、ここに通ってくるのが私自身がとても楽しみ」
心身ともに絶好調なのは、「ジム」を続けた成果です。
■医者が運営「医者ジム」で15キロ減
貞松妙子さん:
「本日もよろしくお願いします」
閉店後、貞松さんが画面に向かって話し始めました。
貞松さんが利用する「ジム」です。
画面の向こうにいるのは医師の内田晃司さん(47)。
貞松妙子さん:
「体脂肪率は30.0%」
医者ジム・内田晃司 医師:
「かなり下がりましたね、すばらしい」
まるで診察のようですが、これは医者が運営するジム、その名も「医者ジム」です。
貞松さんはリモートで週1回面談を受けつつ、内田医師がすすめる食事と運動を実践。
70kgだった体重を1年間で15キロ減量し、息切れや体の不調も改善しました。
(※身長150センチ)
貞松妙子さん:
「すごい覚悟で行ったんですけど、びっくりするくらい体重が減った」
医者ジム・内田晃司 医師:
「なるべく正しい情報へのアクセスを提供するというところが、一つ価値になるかなと思っております」
内田医師が医療機関ではなくジムを開設した理由は「予防医療」の必要性からです。
医者ジム・内田晃司 医師:
「医者をやってて、『予防医療』というのが非常に欠けている状態。運動を、例えば世の中の半分の人がすると、もっと健康で幸せな人が増えるはずなんです」
■前職は航空自衛隊のパイロット
病気になる前に予防してほしい―。
そう考えたきっかけは、異色の経歴にあります。
医者ジム・内田晃司 医師:
「航空自衛隊に所属して、F2型支援戦闘機に乗らせていただいておりました」
内田医師の前職は航空自衛隊のパイロット。
防衛大学校を卒業後、パイロットとして厳しい訓練を重ねてきました。
しかし、心身ともに厳しい環境に置かれる中で―。
医者ジム・内田晃司 医師:
「やっぱり、いろんなところ(体調)を壊す人もいらっしゃいます。これはちょっと誰かが調べないといけないなということで医師を志しました」
自衛隊を退職し、猛勉強の末、28歳で信州大学医学部に進学。
運動生理学を専門にアメリカの大学にも留学し、2022年に起業して「医者ジム」を始めました。
■医師が指導 タンパク質重視の食事
一体どんな仕組みなのか?
貞松さんのケースでみると―。
医者ジム・内田晃司 医師:
「平均が1320kcalでした。かなりいいと思います。お野菜がめちゃくちゃ取れています」
まずチェックするのは「食事内容」。
貞松さんは指導に基づき、野菜やタンパク質を多く摂取する食事に変えました。
片栗粉をまぶして焼いた鶏むね肉に、ブロッコリーなどの野菜。
サケの西京漬けとコマツナのごま和え。
ごはんは毎食120gほどです。
貞松さんは摂取カロリーを意識して日々の食事を記録。
アプリを通じて内田医師に共有されます。
医者ジム・内田晃司 医師:
「たんぱく質も79グラム取れています。すばらしい、ばっちりです」
内田医師が特に重視するのは「タンパク質」。
筋力・体力を維持して無理なく減量するためで、日本より多い、アメリカのガイドライン並みの女性1日80g、男性100gを取るよう食べ方を指導します。
■運動のデータが医師に「安心感」
次は「運動」です。
医者ジム・内田晃司 医師:
「筋トレも非常にいいですね。34分できています。どうでしたか?筋肉痛は」
貞松妙子さん:
「先週よりは大丈夫でした」
貞松さんは「スマートウォッチ」をつけて運動。
下半身を鍛える筋トレを中心に。
運動はいつ行ってもOKで、時間や心拍数のデータが内田医師のカルテに届きます。
貞松さんは少し前に肩をけがしたことがあり、無理な運動はすすめません。
また、始めた当初は「食事の減らしすぎ」を注意していたそうです。
医者ジム・内田晃司 医師:
「むしろ食べましょうということで、しっかり食べていただいて、様子を見ていったということになります」
過去に無理なダイエットでめまいやリバウンドを経験した貞松さんですが、医師の指導による安心感と結果に満足しています。
貞松妙子さん:
「もっときついかと思ったんですけど、我慢しなければいけないことがそんなになくて。悪くなってからお医者さんに行くのではなくて、その前に予防して。その時期を少しでも遅らせたいですね」
■体調に合わせた運動を対面指導
「医者ジム」では、対面指導も行っています。
医者ジム・内田晃司 医師:
「体の中で一番大きいのが足の筋肉。なるべく足をしっかり鍛える」
おすすめの筋トレは「ランジ」。
医者ジム・内田晃司 医師:
「太ももの後ろをしっかり意識します。ぐっともどしましょう、そうです」
「医者ジム」インストラクター・宮沢克幸さん:
「ただ筋トレを教えるんではなくて、高血圧や、糖尿病の人で運動のベースが変わってくるので、お客さまも学びながらできるのがいい」
■「医者の不養生」も改善
医者ジムの指導を受け、体調が改善した人が他にも。
信大医学部付属病院の金井信一郎医師(54)です。
信大医学部付属病院・金井信一郎 医師:
「走るなんてもってのほか。走ると死んじゃうぐらいな感じだったんです。明らかに体が動くようになった」
仕事が忙しいことを理由に運動はせず、食べるのは好き。
まさしく「医者の不養生」で2025年9月まで110kgあった体重を、半年で92kgまで落としました。(※身長180センチ)
かつては、閉めることができなかった白衣が―。
信大医学部付属病院・金井信一郎 医師:
「今はゆとりがあるので」
運動は十分できませんでしたが、タンパク質多めの食事指導だけでも体調や血液検査の数値が改善しました。
信大医学部付属病院・金井信一郎 医師:
「朝、ちょうど目覚めて空腹感があって、お腹がすいてご飯がおいしく食べられる」
■継続できたのは「監視の目」
医師として理論的には理解していた減量法ですが、実行できたのは、定期的な指導が入るから。
信大医学部付属病院・金井信一郎 医師:
「計測、記録、監視っていう3つが大事。毎週、監視の目が入ることで続けなければいけないと。ドクター(医師)がやるっていうのは、すごくいいかなっていう。病気の相談もできるし。どうしても甘えちゃうので、自分だけでやっていると」
職場の健康意識も高まり、診察にも「説得力が出た」と感じていて、今も体重と食習慣は維持できているそうです。
■「100歳でも自分の足で生活を」
医学的なアプローチで指導する新たなスタイルの「医者ジム」。
内田医師は、今後も最新の研究に触れながら予防医療を広める活動を行いたいと考えています。
医者ジム・内田晃司 医師:
「90歳になっても100歳になっても自分の足でしっかり生活する。それが一番幸せな状態だと思いますので、そういうような社会を目指して頑張っているところです」