広島市西区の干潟で、アサリの保護活動イベントが開かれた。参加者たちはアサリの試し掘りの体験だけではなく、海の環境や漁業の現状を学んだ。そこには、“海と地域をもう一度つなぎたい”という地元漁協の思いがあった。
消えたアサリを復活させた漁協
5月中旬の週末。広島市西区の八幡川河口に、約60人の親子が集まった。「いのくち産アサリ」の保護活動を体験するためだ。
このイベントは、テレビ新広島やパートナー企業が進める「ひろしま海の森づくりプロジェクト」の一環。豊かな海を取り戻そうと、学校教育とも連携しながら環境保全に取り組んでいる。
参加者を迎えたのは、井口漁業協同組合の人たち。
「5センチくらいが一番大人」
波田輝明組合長は、大粒のアサリを手に取り、貝殻の模様を見せた。
「1年ごとに年輪みたいに。これが5歳ぐらい」
黄色い身と濃いうまみが特徴の「いのくち産アサリ」。しかし1980年代、埋め立てなどで干潟が減少し、1998年には漁獲量がゼロになった。
その後、井口漁協は産地復活を目指し、干潟に網を張ってエイやチヌによる食害を防ぐなど試行錯誤を重ねてきた。現在は年間約2トンを収穫するまでに回復している。
さらに今、力を入れているのが「海業(うみぎょう)」だ。
波田組合長は「海業とは、体験を通じて漁業振興につなげる新しい漁業の方向性。地域の産業と組み合わせたり、地域の人と協力しながら取り組んでいます」と説明。井口漁協では、「アサリの保護活動」や「ワカメオーナー事業」など、体験型の“つくり育てる漁業”を推進している。
体験によって“海と人”を近づける
会場にはテントや大型モニターが設置され、参加者たちはまず“海を取り巻く現状”を学んだ。
波田組合長は危機感を口にする。
「海に出ても魚が獲れない。魚が少なくなっている。魚を食べる人も少なくなっています」
漁獲量の減少に加え、漁業者の高齢化や担い手不足も深刻化。さらに、手間がかかる魚料理より簡単な肉料理を選ぶなど、魚離れによって“海”そのものが暮らしから遠ざかっているという。
「だんだん地域の人と海とが離れている。そこを我々はなんとかしたい」
地元の井口高校の生徒も参加し、探究学習で調べたカキ問題などを発表した。
学習会の後、参加者たちは河口へ移動。
「よいしょ、よいしょ」
子どもたちが大人と力を合わせて運んだのは、食害防止ネットだ。エイやチヌからアサリを守るため、定期的に干潟を覆っていることを体験を通して学んだ。
そして、いよいよアサリの試し掘り。
「深さ10センチまでのところにいます。それ以上掘っても出てこない。10センチぐらいまで掘ってみてください」
子どもたちはシャベルで泥を掘り起こし、アサリを見つけると「お、めっちゃでかい!」と歓声を上げた。
波田組合長は、「アサリと環境の両方を子どもたちに知ってもらいたい」と話す。
「例えば、今までいなかった魚が出てきたり、もっと大きな問題が出てきている。日ごろの生活の中で、自分たちが環境にどれだけ影響を与えているのかを知ってほしい」
アサリを掘った後は土を丁寧にならし、来年以降の収穫のために稚貝をまいた。
「将来、漁業者になってくれたら」
最後は、細かく砕いたカキ殻を干潟へまく作業も行われた。
「何のためにまくかわかる?」
そう聞かれた子どもは、「敵から守るため」と元気よく答え、周囲を和ませた。
参加者は、カキ殻やアサリ自体が海の水質改善に役立っていることも初めて知った。
子どもたちは、「大事に育ててくれたアサリをおいしく食べられてうれしい」「いっぱい獲れてうれしかった」と笑顔を見せる。
保護者からは「いい勉強になったかなと思う」「広島の海がたくさんの人たちに守られていると知れた」といった声が聞かれた。
そして、イベントの締めくくりには、自分たちで獲ったアサリを味噌汁にして味わった。
波田組合長は、もっと海を身近に感じてほしいと願っている。
「環境面も子どもたちに勉強してもらって、願わくば将来、そうしたことを考えられる漁業者になってくれたら最高に幸せです」
獲るだけではなく、守り育てる。子どもたちの歓声が響いた干潟には、“豊かな海を未来に残したい”という思いが広がっていた。
(テレビ新広島)
