トランプ米大統領の訪中をめぐり、米国国内では評価が割れている。

「素晴らしい貿易協定だった」と強調するトランプ支持メディアがある一方、主流メディアには冷ややかな論調が目立った。

外交演出の一コマが“皮肉”に

「トランプ氏、中国との『素晴らしい貿易協定』をアピールも、詳細は不明」(ニューヨーク・タイムズ紙) 「トランプ氏の中国訪問、大言壮語の割に成果は乏しい」(Politico) そんな中で特に目を引いたのが、ニュースサイトDaily Beastの見出しだった。

「トランプ訪中、成果空虚すぎて手土産は花の種だけ」 

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北京・中南海を訪れたトランプ氏が、敷地内に咲く花を気に入った。すると習近平国家主席は、「その種を贈る」と応じた。

本来なら、友好を示す穏やかな外交演出の一コマにすぎない。
ところが米国国内では、これが思わぬ皮肉として広がった。

中南海を散策する習氏とトランプ氏
中南海を散策する習氏とトランプ氏

「巨大な米中首脳会談の成果が、結局は花の種だけだったのか」 というわけである。

もちろん、実際に「花の種」しか成果がなかったわけではない。
ただ、「それ以外に何が決まったのか」が、どうにも見えにくかった。

アメリカの企業トップ引き連れ訪中

今回の訪中前、トランプ政権側はかなり大きな期待をにじませていた。

訪中前のトランプ大統領
訪中前のトランプ大統領

テーマは実に広範囲だった。
イラン問題、ホルムズ海峡、対中貿易、レアアース、AI、半導体、農産物、ボーイング機販売。

同行した顔ぶれも象徴的だった。
テスラ社のイーロン・マスク氏、エヌビディアのジェンスン・フアンCEO、アップルのティム・クックCEO。

2列目にクックCEO、マスク氏、フアンCEO
2列目にクックCEO、マスク氏、フアンCEO

まるで米国の産業界を引き連れ、「米中関係再起動」を演出するかのような訪問だった。
しかし訪問終了後、米国く国内でまず広がったのは、
 「で、結局何が決まったのか」
という疑問だった。

たとえばボーイング機問題である。

トランプ氏は、中国が200機購入すると説明した。
しかし中国側は正式確認を避けた。

しかも事前には500機規模案まで報じられていたため、市場では「期待外れ」と受け止められ、ボーイング株は逆に下落した。

イラン問題でも、トランプ氏は「中国はイランへ武器供与しないと言った」と語った。

だが中国側発表には、そのような明確な表現は見当たらない。
そもそも中国はイラン最大級の石油顧客であり、最大の貿易相手国でもある。

北京がワシントンの中東戦略に全面協力する可能性は、最初から極めて低かった。

さらにレアアース問題では、中国は輸出規制緩和も供給保証も約束しなかった。

電気自動車、半導体、軍事機器に不可欠なレアアースで、中国は世界的支配力を持つ。

つまり、ここは本来、米国側が最も成果を欲しかった分野だった。

だが中国側は、ほとんど譲歩しなかった。

アメリカ国内で“中国優位を演出”との見方

一方で習近平主席は、台湾問題では極めて明確だった。

「台湾問題は米中関係で最重要問題だ」 「誤れば衝突につながる」 と警告した。

今回の訪中で印象的だったのは、「どちらがお願いをしていたのか」という構図である。

ホルムズ海峡。イラン。レアアース。農産物。半導体。航空機。
ほぼすべて、米国側が中国に求めていた。

一方、中国側は台湾問題や対中包囲網牽制など、自国の核心利益を淡々と主張した。

そのため米国国内では、「中国がトランプ氏を利用し、中国優位を演出した」
という厳しい見方まで出始めた。

中南海での散策の様子(日本時間15日)
中南海での散策の様子(日本時間15日)

もちろん外交成果とは、すぐ数字で測れるものばかりではない。
米中対話が継続されたこと自体に意味がある、という現実主義的評価も存在する。

だが今回、少なくともアメリカ国内で広がったのは、「中国が主導権を握り、米国が追いかける側に見えた」
という印象だった。

そして中南海の小さな花の種は、今起きつつある米中の力関係の変化を、妙に象徴してしまったのである。

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木村太郎
木村太郎

理屈は後から考える。それは、やはり民主主義とは思惟の多様性だと思うからです。考え方はいっぱいあった方がいい。違う見方を提示する役割、それが僕がやってきたことで、まだまだ世の中には必要なことなんじゃないかとは思っています。
アメリカ合衆国カリフォルニア州バークレー出身。慶応義塾大学法学部卒業。
NHK記者を経験した後、フリージャーナリストに転身。フジテレビ系ニュース番組「ニュースJAPAN」や「FNNスーパーニュース」のコメンテーターを経て、現在は、フジテレビ系「Mr.サンデー」のコメンテーターを務める。