社会に日常が戻っても、コロナの後遺症に今なお苦しむ人がいる。富山市の西山あつしさん(仮名・32歳)は、2022年3月に新型コロナに感染して以来、頭痛や倦怠感など多岐にわたる症状が4年以上続く。「コロナ前の体調が10だったら、1もない」 その言葉が、後遺症患者の置かれた現実を端的に物語っている。

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頭を冷やしながら、娘の育児をこなす毎日

ストレッチをする西山さん(仮名)
ストレッチをする西山さん(仮名)

朝のストレッチ、氷を包んだタオルを頭に巻いたままの散歩。これが西山さんの日課だ。頭に巻いたタオルは30分に1回交換する。「24時間、寝るとき以外ずっと。冷やすと楽になる」と話す。

もともと運動好きだった西山さんは、コロナ禍の2021年秋に結婚。感染後は仕事を1年半以上休み続け、退職。現在は医療現場で働く妻の扶養家族として、妻と1歳半の娘の3人で暮らす。日中の育児は西山さんが担うが、頑張りすぎると症状が悪化することもある。

「何年も走っていない。走ったら頭がやばそうで。10年後、娘が勉強でもスポーツでも没頔したとき、今の体調では相手してあげられない。娘もかわいそうだけど、自分もさみしい」

今も10種類以上の薬を服用しており、症状は回復傾向にはあるものの、悪化することも少なくない。ハローワークで求職活動を試みたこともあったが断念。現在は植物の売買など、自宅でできる範囲の仕事で生活の足しにしている。

身近に専門医がいない オンライン診療に頼る現状

富山と石川の病院を転々としても回復の糸口が見えず、現在は月1回、東京のクリニックにオンラインでかかっている。担当するヒラハタクリニックの平畑光一院長は、これまで全国8300人以上の後遺症患者を診てきた医師だ。

「今までで一番回復の手助けをしてくれた先生。身近にいて対面で受診できれば、効き目は違ってくると思う」と西山さんは話す。

平畑院長は、患者を取り巻く環境が年々厳しくなっていると指摘する。「社会のコロナ後遺症に対する理解はすごく後退している。患者は『今時コロナなんて言っているの?』とあちらこちらで言われている」。2026年2月にも感染の波があり、新たに後遺症を発症した患者もいるが、そうした実態はほとんど知られていないという。「各県に一カ所くらいは専門外来があっていい」と訴える。

「後遺症、そんなのあるの?」という空気の中で

コロナの5類移行から3年が経ち、富山県内で2026年に入ってからの入院患者は累計107人、重症者はゼロ。社会的な関心は急速に薄れている。

西山さんはその空気をこう表現する。「世の中、後遺症がないと思っているのでは。『コロナの後遺症?そんなのあるの?』という人の方が多いと思ってしまう」。

妻も葛藤を抱えている。「別の病気じゃないか、鬱など精神的なものじゃないかと言われることはよくある。3人でいる時間は貴重だけど、一生付き合っていかなきゃいけないかと考えてしまう」。

コロナ後遺症には未だ明確な治療法も治療薬もない。症状が多岐にわたるため国内の患者数の実態すら把握できておらず、専門外来が増えない悪循環が続く。当初はソファーで寝たきり、杖なしでは外出もできなかった西山さんは、確かに少しずつ前へ進んでいる。しかし、完治はまだ遠い。

(富山テレビ放送)

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