磐越道で遠征に向かっていた北越高校ソフトテニス部の部員など21人が死傷したバス事故は発生から5月13日で1週間です。逮捕された運転手の男がなぜハンドルを握ることになったのか疑問が残る中、その経緯をめぐり混乱も浮かび上がっています。
■磐越道バス事故で68歳の男を逮捕
5月6日、福島県の磐越自動車道で遠征に向かっていた北越高校・男子ソフトテニス部の部員を乗せたマイクロバスがガードレールに衝突。稲垣尋斗(17)さんが死亡し、合わせて20人が重軽傷を負いました。
警察はバスを運転していた新潟県胎内市の無職・若山哲夫容疑者(68)を過失運転致死傷の疑いで逮捕しました。
■事故を繰り返していた若山容疑者
旅客輸送に必要な二種免許を持っておらず、「速度の見極めが甘かった」などと容疑を認めている若山容疑者。
捜査関係者によりますと、胎内市の会計年度任用職員として去年3月までマイクロバスの運転をしていましたが、その後1年以上バスの運転はしておらず、事故現場には急ハンドルを切るなど事故を回避しようとした形跡が残っていなかったといいます。
若山容疑者を知る人からは…
【タクシー運転手】
「乗り降りが大変なぐらい足が悪い人だった」
目撃されていたのは傘を杖のようにして歩く容疑者の姿。さらに…
【自動車修理会社の関係者】
「この2カ月で4~5回くらい事故が頻繁に起きている」
若山容疑者と15年来の付き合いがあるという自動車修理会社の関係者によりますと、4月、事故を起こし、車の修理を依頼してきた容疑者に代車を渡しましたが、そのわずか数日後、今度はその代車で事故を起こしたといいます。
5月1日、その事故現場を捉えたとみられる映像には自動車修理会社の男性が貸し出した代車が。フロント部分が大きく潰れてしまっていました。
■「死ぬかも」生徒から家族へメッセージ
こうした中で今回、高校生を乗せたバスを運転した若山容疑者。
乗っていた一部の生徒は「運転が荒かった」などと証言していて、事故の直前には…「死ぬかもしれない」生徒からこのようなメッセージが家族に送られていたといいます。
そして、起きてしまった大惨事。なぜ若山容疑者がハンドルを握ることになったのか、その経緯をめぐり疑問が残っています。
■バス・運転手の手配めぐり主張食い違う
今回、若山容疑者が事故を起こしたのはレンタカーのマイクロバスです。
バスを手配したバス運行会社・蒲原鉄道は事故当日、会見を開き…
【蒲原鉄道 金子賢二 営業担当】
「学校からの要請で『レンタカーを手配して、なおかつ人も頼むよ』という中で紹介した。予算面だというふうに僕は理解した」
北越高校からの依頼で貸し切りバスではなく、レンタカーと運転手を手配したと説明。しかし、学校側はこれを否定します。
【男子ソフトテニス部顧問 寺尾宏治 氏】
「費用を抑えたいからレンタカーを依頼したことはない。また、運転手の紹介を依頼したこともない」
蒲原鉄道とやりとりをした男子ソフトテニス部の顧問はあくまでも貸し切りバスの運行を依頼したと主張。
■昨年度3回“レンタカー”使用 顧問は気付かず
その一方で、高校の調査では昨年度、蒲原鉄道に依頼したバスの運行のうち、3回はレンタカーのマイクロバスを使っていたことが判明。
その際の請求書には“レンタカー代”と“人件費”の項目が記載されていたといいますが、顧問は総額のみを確認していたため気付かなかったと説明しました。
■運転依頼された男性「数年前から複数回」
レンタカーのマイクロバスの運転手を探すケースは少なくとも数年前からあったという証言も。
【運転を依頼された男性】
「携帯で『何月何日だけど乗れないか』と、北越高校の生徒なんだけどというのは聞いている。複数回あった」
かつて、別のバス会社で運転手を務めていた男性のもとには数年前から複数回に渡って北越高校のバスの運転を依頼する電話がかかってきていたといいます。
【運転を依頼された男性】
「北越高校に金子さんは運転手探してくれと言われたらしい。それで私のところに知り合いを通じて話は来ていたが、私は乗らなかった。1回も」
■「引き受けてくれる人見つからず容疑者に依頼」
こうした中、捜査関係者によりますと、今回の事故をめぐり蒲原鉄道から運転や手配を打診された人物が「引き受けてくれる人が見つからず若山容疑者に依頼した」などと話していることが分かりました。
運転手を探す段階で混乱があったとみられます。
■現場から“現金”入った封筒見つかる
さらに、高校によりますと、若山容疑者のものとみられるカバンの中にあった封筒には表に『手当』『ガソリン』などと記載され、中には3万3000円が入っていたということです。
事故後の会見でドライバーへの支払いは否定していた蒲原鉄道ですが、ドライバーへの金銭が発生していた場合、違法な旅客輸送“白バス”にあたる恐れが出てきます。
バス運行の実態を把握するため国交省は蒲原鉄道に対し道路運送法に基づく監査を実施。
警察も学校と会社の間で白バス行為が繰り返されていたとみて捜査を進めています。