保護者の就労状況にかかわらず保育施設を利用することができる“こども誰でも通園制度”。4月から全国で一斉にスタートする中、保護者の負担軽減といった面で期待の声も多い一方、課題も見えてきた。
“誰でも通園制度”でママも“ひとり時間”確保
静岡市葵区にある保育施設「あおば」で、他の園児と一緒にままごとや園庭遊びを楽しむ月葵陽(つきひ)ちゃん。
ただ、月葵陽ちゃんは普段からこの園に通っているわけではない。

利用しているのは“こども誰でも通園制度”。
4月から始まった制度で、幼稚園やこども園に通園していない生後6カ月から3歳未満の子供について月に10時間まで保育施設を利用することができる。
このため、月葵陽ちゃんの母親は「ワンオペで互いの両親も近くにいないので、“ひとり時間”が少しでもあると家事もはかどる。(母と娘が)2人でいるよりも、いろいろな遊びを覚えてきたり、違う経験ができたりと、すごく良いと思う」と話すが、保育士は「いま保育士不足の中で、ひとりがひとりにつく、拡大するためにはそれだけの保育士が必要なのでどうなっていくのかと感じる」と不安をこぼした。
利用できる施設数に地域差
また、県内35市町のうち、19市町については利用できる施設が1カ所から2カ所のみ。
吉田町と南伊豆町、それに松崎町ついては準備が間に合わずゼロとなっている。

人口18万人、県東部地域の中心的な都市・沼津市も利用できる施設は現時点で1カ所しかなく、保護者からは「もう少し増えてくれれば」「どうしても利用したい時に“ない”となってしまう」といった声が聞かれる。
直面する保育士不足
市中心部から車で10分ほどの場所にある金岡保育所でも 制度の導入を前に受け入れの検討を進めたものの、保育士の負担を考えると現実的ではなく、土井みどり所長は「子供の方が不安定なところもあり、1対1で関わる職員が必要になるが、確保が現状では難しい。募集はしているが、なかなか来てもらうまではいかない」と打ち明ける。
低い給付金 需要も不透明
労働基準監督署によると、市内の保育施設における保育士の有効求人倍率は1.65倍。

人材の確保が難しい上に、“こども誰でも通園制度”によって 保育所側に支払われる給付金は、最大でも1時間あたり1700円と十分な額とは言えない。
さらに、仮に保育士などを採用できたとしても利用者がいなければ単に保育所側の負担が増えるだけになってしまうという課題もあり、沼津市こども未来創造課の霞徳也 係長は「『この給付額でやっていけるのか』『どのくらいのニーズが見込めるのか』そういった部分を不安に感じ、なかなか踏み出せないような状況」と現状を推し量る。

現に、対象となる子供が市内に約1300人いるのに対し、4月1日時点の申し込み者数はわずか71人で、霞係長は「子育て支援としてはすごく良い制度だと思うが、(保育の場を)提供する側の心配が少しでもなくなるように、これからいろいろな先進事例を集めると共にニーズの把握に努めたい」と述べた。

保護者の負担軽減や子供の成長を促すことを目的に始まった“こども誰でも通園制度”。
期待の声も大きい制度だが、一方で保育現場の実態や利用ニーズを とらえているのかといった点については、まだまだ検討や改善の余地があると言える。
