島根を拠点に活動するBリーグ1部のクラブ「島根スサノオマジック」。選手たちが2025-26シーズンも熱戦を展開し(ブースター)ファンを魅了した中、チームをコートの外から支え続けるオフィシャルチアパフォーマンスグループ「アクア☆マジック」。Bリーグで唯一、歌もこなせるパフォーマンスグループとして、アリーナに詰めかけるファンを沸かせてきた。
「アクア☆マジック」の中心に立ったのが、在籍3季目にして初めてキャプテンの重責を担ったNAGOMIさんだ。けがをした選手が続出するなどし、連敗に苦しんだシーズン、彼女はコートサイドで何を感じ、何を伝えようとしていたのか…アリーナの最前線で戦い続けたメンバーの思いに迫った。
Bリーグ唯一の「歌って踊れる」チアグループ
島根スサノオマジックのホームアリーナ・出雲市のカミアリーナに足を運んだことのある人なら、コートサイドで躍動する8人の存在を知っているはずだ。それが「アクア☆マジック」である。
ダンスを披露するチアグループはBリーグ各チームに存在するが、アクア☆マジックにはほかにはない特徴がある。歌も歌えるパフォーマンスグループ——Bリーグ唯一の存在として、アリーナを独自の熱気で包んできた。
ブースターからは「歌ってチアして、そういうところないと思うんで、島根、山陰の誇りです」、「アクア☆マジック大好き!」と愛される存在だ。
山陰という地域を背負い、地元の誇りとして根付いているグループであることが、ファンの言葉から伝わってくる。
そのアクア☆マジックのセンターで輝きを放ってきたのが、2025-26シーズンにキャプテンに就任したNAGOMIさんだ。
キャプテン就任——「うれしかった気持ちも、不安な気持ちも」
NAGOMIさんがアクア☆マジックに加入したきっかけは、幼い頃の記憶にさかのぼる。
「幼少期から15年間バレエを習っていて、踊ることが前から大好きだった。小さいときに島根スサノオマジックのホーム戦を観に行ったことがあって、それもきっかけでアクアマジックに応募しました」
踊ることへの情熱と、地元チームへの思い。その2つが重なって、彼女はこのグループの扉を叩いた。
3季目を迎えた2025-26シーズン、NAGOMIさんはキャプテンに任命された。
「任せられて、すごくうれしかった気持ちもあるし、逆にすごく不安な気持ちもあった」と素直な気持ちを明かした。
喜びと不安が同居したまま、彼女はシーズンの幕開けを迎えた。
キャプテンとしての思いは明確だった。「島根スサノオマジックが日本一を目指しているように、アクア☆マジックも日本一のチアを目指して、精いっぱいやっていきたい」——コートに立つ選手たちと同じ目線で、彼女もまた頂点を見据えていた。
先輩から受け継がれる「山陰の誇り」
アクア☆マジックには、グループを支えてきた先輩たちの思いがある。
2024-25シーズンまで4季在籍し、前キャプテンを務めたMINAMIさんは、今シーズンからディレクターとしてチームを支える立場になった。現役を退いてなお、後輩たちに指示を出し続ける彼女は、グループの未来についてこう語る。
「島根スサノオマジックはこの数年で山陰を代表するエンターテインメント、タイトルになったと思うんですけど、アクア☆マジックも付随して山陰を代表するグループになって有名になること、あとは、山陰に住むこれからの子たちの目標になるといいなと思っています」
スサノオマジックとともに歩み、地域に根ざした存在として山陰の次世代の子どもたちに夢を与える——そのビジョンを、MINAMIさんはNAGOMIさんに託した。先輩から受け継いだその思いを胸に、NAGOMIさんはキャプテンとしての1年を歩んできた。
午後10時までノンストップ——シーズン最終節前夜の練習
5月2日と3日のシーズン最終節を翌日に控えた夜、カミアリーナではアクア☆マジックのメンバーが汗を流していた。
本番を想定した前日練習は午後10時まで、約2時間半ノンストップで続いた。肉体的な消耗は相当なものだが、NAGOMIさんは経験を積んだ余裕を感じさせる言葉を口にした。
「ルーキーの時は息がはぁはぁで…疲れるんですけど、余裕が出てきました」
そして練習中も笑顔を絶やさないNAGOMIさんを、同期のメンバーはこう見ている。
HINAさんは「本当に笑顔ですごい。つらそうな顔、あんまり見せないかも」と話す。
完璧さと笑顔——この2つが、NAGOMIさんというキャプテンの姿を象徴している。同期のNAGISAさんも「まじめで完璧なんですよ。彼女が完璧だから、暴走しちゃう私を支えてくれる存在です」と語り、笑顔を見せた。NAGOMIさんがグループの精神的な軸になっていることが、仲間たちの言葉からにじみ出る。
最終戦当日——「スイッチ入ります」
翌5月3日、試合当日の朝、NAGOMIさんは明るい声でこう言った。
「おはようございます!あいにくの雨なんですけど、テンションマックスで、最後まで楽しんでいきます!」
雨でも、テンションマックス。それがプロのパフォーマーの朝だ。
会場入りし、演出チームとの打ち合わせを終えたあとはメンバーとのミーティング。NAGOMIさんはメンバーに語りかけた。
「このメンバーで踊れるのもきょうが最後なので、29試合、みんなで積み重ねてきたものを発揮できたらいいなと思うし、気合いを入れて、楽しく踊れるようにがんばりたい」
開幕からここまでホーム戦29試合——1試合1試合積み上げてきた記憶が、この日の言葉に凝縮されていた。
出番まで10分、控室からコートに向かう通路がある。その場所は、NAGOMIさんにとって特別な意味を持つ。
「ここめっちゃ緊張するんです。いよいよ来るなって、スイッチ入ります」
通路を抜けた先では、プロのチアパフォーマーとしての自分が待っている。出番直前まで振り付けの確認を怠らず、コートに飛び出す直前まで笑顔とコミュニケーションを大切にする。そのすべてが、ブースターへの敬意と感謝から来ている。
「ブースターにいつも熱い気持ちをもって応援してくださりありがとうございますっていう気持ちと、もっと一緒に盛り上がりましょうっていう気持ちでパフォーマンスしているので、すごく楽しいです」
連敗の苦しみと、「一番あきらめてはいけない存在」
2025-26シーズン、島根スサノオマジックは選手のけがが相次ぎ、チーム状態が上向かず連敗に苦しんだ時もあった。勝利の喜びよりも、敗戦の重さを背負う時間が続いた。
コートサイドで試合のすべてを体感するアクア☆マジックにとっても、それは苦しい日々だった。しかしNAGOMIさんは、その辛さの中にこそアクア☆マジックの役割があると信じていた。
「負けが続くと、つらい、悲しいっていう重たい雰囲気に会場もなるんですけど、そういう時に一番声を張って応援するのがアクア☆マジックの役目だと思っているので。一番あきらめてはいけない存在だと思っているので、『まだいけますよ』っていう気持ちでいつも応援しています」
チームが苦しいときに声を張り上げ、アリーナの雰囲気を変えようとする——それが「ゲームチェンジャー」としてのアクア☆マジックの姿だ。選手だけでなく、チアもまた戦っている。アリーナの空気を動かすために、体と声と表情のすべてをつぎ込んでいる。
シーズン最終戦——勝利はなくても、アリーナは沸いた
シーズン最終戦もスサノオマジックは苦しい展開を強いられた。アクア☆マジックは“ゲームチェンジャー”として懸命のパフォーマンスを見せたが、白星には届かなかった。
それでも、試合後の光景は温かかった。
メンバーは1人1人、ブースターの目を見て「お見送り」をした。1年間ともに戦ってきたファンへの、最後の感謝の表現だった。
控室に戻ると、今のメンバー全員での最後のミーティングが始まった。想いがあふれた。
メンバーのCHIKAHOさんは「どんなにつらくても、コートに立っているときは楽しくて、このメンバーでシーズンを駆け抜けられてよかったなと心から思いました」と1年を振り返る。
そしてNAGOMIさんが、キャプテンとして口を開いた。
「1年間お疲れさまでした。キャプテンになって責任がついて、今までと比べて、『今年はちょっとなぁ』とか思われていないかなとか、暗く考えちゃうときもあったんですけど、このメンバーでパフォーマンスできてよかったと思っています」
責任を背負い、時に暗い考えが頭をよぎりながらも、笑顔を絶やさず、声を張り続けた1年。それがNAGOMIさんのキャプテンとしてのシーズンだった。
島根スサノオマジックとともに、アクア☆マジックもまた日本一を目指す——コートの上と、コートの外。二つの戦いは、これからも続いていく。
(TSKさんいん中央テレビ)
