大西洋で航行中のクルーズ船でハンタウイルスへの感染が疑われる事例が相次ぎ、これまでに3人が死亡した。クルーズ船を受け入れる予定のカナリア諸島が入港を拒否するなど、事態は混迷している。
「家族のもとに帰りたい」乗客訴え
「今起きていることは、ここにいる私たちにとってまさに現実です。物語でも、新聞の見出しでもありません。私たちには家族も生活もあり、帰宅を待ちわびる人々がいるのです」
カメラを見据え、涙まじりにこう語ったのは、クルーズ船の乗客とみられる人物。

この人物がいるとみられる場所は、ハンタウイルス感染症が疑われ、これまでに乗客3人の死亡が確認されている大西洋上のクルーズ船「MVホンディウス号」の船内だ。
乗客とみられる人物は、「私たちが今望んでいるのは安全、真実、そして家に帰ること。ただそれだけです」と訴える。
以前の航海で撮影されていた「MVホンディウス号」の船内映像には、個室にはベッドや壁画に広々としたシャワールームも備え付けられ、共有スペースには大海原を眺められるダイニングルーム、さらに、バーカウンターや読書スペースのある広々としたラウンジも映っていた。
しかし、ハンタウイルスの感染疑いが出たことで、この豪華なクルーズ船は日本人客1人を含む約150人の乗員乗客を残し、洋上に浮かんだままとなっている。

現地時間の5日、クルーズ船を巡り新たな動きが明らかになった。一隻のボートがクルーズ船に接近し、船上には白い防護服姿らしき人物の姿も確認できる。船の運航会社によると、緊急手当が必要になった2人などを、オランダに向け搬送する予定としている。

そして、「MVホンディウス号」については、スペイン政府が大西洋に浮かぶ自国領のカナリア諸島で受け入れると発表した。直線距離で約1600kmで、到着まで3日から4日を要する見込みだ。
しかし、カナリア諸島の首長は、クルーズ船の入港を拒否している。
致死率30〜50%「ハンタウイルス肺症候群」か
ハンタウイルスはネズミなどが保有するウイルスで、人がネズミにかまれたり、乾燥した排せつ物などを吸ったりすると感染の危険性があるとされる。その症状については、肺などの呼吸器に及ぶものと、腎臓に症状が出るものの2つに分かれるという。
2025年には、往年のハリウッド名俳優、ジーン・ハックマンさんの妻で日系人のベッツィ・アラカワさんがハンタウイルス肺症候群が原因で亡くなったと報じられた。
専門家は、今回のクルーズ船で感染が疑われる乗客についても、ハンタウイルス肺症候群ではないかと指摘する。

日本感染症学会専門医 寺嶋毅さん:
致死率は30%〜50%です。初期は発熱・頭痛・筋肉痛。その後はせきとか呼吸が苦しいという症状。(感染からの)潜伏期間は1〜6週間ですが、多くは2〜3週間です。
人から人への2次感染についてはどうなっているのか。

日本感染症学会専門医・寺嶋毅さん:
ヒトヒト感染は極めてまれである。(コロナウイルスと違い)無症状の人を介して感染が広がるのは考えにくい。
(「イット!」5月6日放送より)
