2年連続で荒茶の生産量が日本一となった鹿児島県。その看板を背負いながら、県内の生産農家が新たなチャレンジに踏み出している。鹿児島県日置市にある池田製茶が2026年3月にオープンしたお茶カフェは、「お茶農家が挑戦するきっかけになった」と代表の西坂麻衣さんが語るように、地域のお茶文化を広げる場として注目を集めている。
1970年創業の老舗が、カフェへ踏み出した理由
池田製茶は1970年から生産を続けてきた老舗だ。近年はお茶需要の高まりを受けて品種改良を進め、2026年からは抹茶作りもスタートさせた。長年にわたって培ってきた生産技術を土台に、今回新たに手がけたのが自社製品を使った飲食店の出店である。
代表で日本茶インストラクターの資格を持つ西坂麻衣さんは、カフェをオープンした動機をこう話す。
「日本一になって鹿児島茶がフューチャーされる機会も増える中、お茶農家が挑戦するきっかけになったのもあり、今回オープンに至った。間近に直接お客様と話して魅力を伝えて買ってもらう点が違い」

産地直送のお茶を、生産者自らが一杯一杯丁寧に淹れて提供する。生産から販売、提供まで一貫して手がけることで、これまでにはなかった形の「お茶との出会い」を生み出そうとしている。
新茶が登場——店舗限定「チャノキブレンド」の味わい
5月1日から店頭に並んだのは、新茶を使った店舗限定の「チャノキブレンド」だ。甘みを生かし、新茶ならではのフレッシュな味わいが楽しめる一品で、日常使いしやすい味わいを目指して開発されている。

水出しにして飲むと、その清々しい香りと穏やかな甘みが際立つ。食事にもおやつにも合わせやすく、季節を感じながら日々の暮らしに取り入れやすいブレンドに仕上がっている。
元々販売していた定番商品もパッケージを一新しており、カフェのオープンとあわせてブランド全体の刷新が進んでいる様子がうかがえる。

「お茶づくし」のランチメニューが体験を変える
カフェの目玉のひとつが、「お茶付き おばんざいランチ」(税込1480円)だ。ソースにも、ご飯にも、ポテトサラダにも、お茶の葉が使われているという徹底ぶりで、まさに「お茶づくし」のメニューと言える。

実際に食べてみると、甘酢が効いた最初の酸味のあとに、お茶の香りがふわりと広がる後味が印象的だ。お肉はしっとりとしており、お茶の風味が料理全体をやさしくまとめている。飲むだけでなく、食べることでもお茶の魅力を伝えようとする工夫が随所に凝らされている。
お茶を「飲むもの」から「味わうもの」へと広げるこのアプローチは、これまでお茶に馴染みが薄かった層にとっても入口となりうる。
日本一の産地から、新たなお茶文化を
池田製茶の取り組みは、単なる一企業の新展開にとどまらない。2年連続で荒茶生産量日本一を誇る鹿児島県において、生産者が自らカフェを開き、地域のお茶文化の担い手となることは、他の農家にとっても刺激となる動きだ。
西坂さんが「お茶農家が挑戦するきっかけになった」と語るように、日本一という実績が地域全体の背中を押している側面がある。鹿児島茶が注目される機会が増えるなか、その魅力を直接届ける場を自ら作り出すことが、これからの産地のあり方を示しているとも言えるだろう。
お茶を味わうひとときが、飲む人の心を整えてくれる——そんな豊かな体験が、日置市の茶畑から広がっている。
【動画で見る▶「お茶づくし」ランチが話題 日本一の産地・鹿児島で生まれたお茶カフェ 】
