抹茶の品薄・高騰が引き金となり、懐かしい野草・ヨモギが、新たな主役へと注目されています。
その勢いはカフェ開業やよもぎ蒸しサロンの急増にも。中には、農家に転身し、ヨモギ商品の“ブランド化”でヨモギの価値を引き上げようとする人もいます。
「ネクスト抹茶」とも言われるヨモギのいまを追いました。
■ヨモギに特化したカフェではヨモギラテなどヨモギ尽くしのメニューが
滋賀県長浜市にオープンしたばかりのカフェ。ヨモギに特化したこの店では、ラテをはじめ、きな粉をまぶした団子などヨモギ尽くしのメニューが並んでいます。
「爽やかな香りが口の中に広がる」というヨモギラテ。
オーナーの榎並秀行さんは、「これからもヨモギを広げていきたい。そういう思いでこのカフェができた」と話します。
■抹茶ブームの陰で静かに浮上してきたヨモギ
京都府舞鶴市では、今年も新茶の茶摘みが始まりました。1つ1つ手作業で丁寧に摘まれる新芽。近年、日本の抹茶は海外からの観光客が「爆買い」するほどの世界的ブームとなり、入手が困難になるほど需要が過熱しています。
そのブームの陰で、静かに浮上してきたのがヨモギです。
大阪市にあるヨモギの販売会社では、2025年の出荷量が754トンと過去最多を更新。今年はさらに増える見込みだといいます。
同社の上野晃富史相談役はその理由をこう語ります。
【上野忠 上野晃富史相談役】「抹茶が高くなっているんで品薄なんです。だから“ネクスト抹茶”というか“ネクスト緑”というイメージで、非常にヨモギに着目している」
ヨモギの強みは3つあります。
様々な食品との組み合わせが可能なこと、抹茶よりも少ない量で濃い緑色が出せること、そしてノンカフェインであること。
【上野忠 上野晃富史相談役】「鮮やかな緑を出せるので、ドリンクなどに良いし、香りが好きな人にはコアなファンがいます」
同社はすでに栽培面積を1.5倍に拡大。「それぐらい“来る”という空気感を感じている」といいます。
■「よもぎ蒸し」も人気
ヨモギの活躍の場は、食にとどまりません。
韓国や中国が発祥とされる民間療法「よもぎ蒸し」が、女性を中心に人気を集めています。「ハーブの女王」とも呼ばれるヨモギの蒸気で体を温め、デトックス効果などがあるとされるこの温活メニュー。全国のよもぎ蒸しサロンの数は、この3年間で約1.8倍に。
常連客の一人は「冷え性で困っていたので、中からポカポカする感じがしてめっちゃ良い感じです」と話します。
■取引単価が低いヨモギ
ヨモギはキク科の植物で、日本全国に自生しています。古くから食べたり傷口に塗ったりと、様々な用途で利用されてきました。奈良県東吉野村には、弘法大師・空海が地域のヨモギを食べたという伝承が残っており、平安時代にはすでに生産が行われていたとみられています。
その東吉野村では現在も、茶の収穫と同じ機械を使ってヨモギの収穫が行われています。
「深吉野よもぎ」の森井弘純代表によると、収穫は今月初めから始まり、10月後半から11月頭まで続くといいます。「寒くなるとやっぱり枯れて、春になれば勝手に芽が出てくる」という、力強い生命力を持つ植物です。
森井代表によるとヨモギは取引単価が低く、国内消費の大半は中国産。ヨモギの生産で「生計を立てている人は少ない」というそうです。
■「ブランド化」でヨモギ
そんな現状を打開しようとする動きもあります。
5年前まで商社で働いていた清水雅文さんは、国内での生産が少ないヨモギに商機を見出し、とく農家に転身しました。周囲からは「雑草生やしてどうすんねん」と言われることもあったといいます。
清水さんが選んだ戦略は「ブランド化」です。生産したヨモギを「青空よもぎのしみず」として商標登録し、入浴剤やパウダーなどの商品を自社で製造。取引単価を引き上げることで、右肩上がりの売上を実現しています。
「安いものを安く売るんじゃなしに、安いものに価値を付けて利益が取れる形で販売していくのが大事かなと思いますね」と清水さんは力を込めます。
ヨモギが「ネクスト抹茶」と呼ばれる現状について、清水さんはこう期待を語りました。
【清水雅文さん】「抹茶に引けを取ることもないし、ヨモギのほうが成分が多いかもしれないので、認知してブームになれば、海外にも行く可能性がある。単価も上がってくるから、関わっている人が幸せになると思う」
日本人にとって、どこか懐かしく、ありふれた存在だったヨモギ。それが今、抹茶ブームという追い風を受け、世界へと羽ばたこうとしています。
抹茶の大ブームに乗って、ヨモギが世界を席巻する日は来るのでしょうか。その兆しは、すでに香り始めています。
(関西テレビ「newsランナー」 2026年4月30日放送)