街なかに突然現れた天体望遠鏡。富山県天文学会が年2回開く「ゲリラ観測会」では、月面に浮かぶアルファベットの「X」という珍しい現象や、2000万光年超の彼方にある銀河まで次々と披露され、通りがかった市民を驚かせた。

■富山駅前に天体望遠鏡が登場

4月24日金曜日の夕方、富山駅前に見慣れない機材が並んだ。富山県天文学会が年に2回実施している「駅前ゲリラ観測会」だ。声をかけた通行人が「これ何ですか?」と首をかしげると、会員は「きょう天体観測会を開きますので、夜9時半ぐらいまで」と笑顔で答えた。

準備が整い、望遠鏡をのぞいた高校生から驚きの声が上がった。

「ヤバい!めっちゃきれい」「デフォルトのiPhoneのホーム画面みたい」

天体望遠鏡に映し出されていたのは、まばゆい月の姿だった。

■年に数回しか見られない「月面X」が出現

この日は特別な月の表情が観察できる好機でもあった。太陽の光が浅い角度で月の表面に差し込み、光と影がアルファベットの「X」の文字を描き出す現象「月面X」だ。年に数回、わずか1〜2時間しか浮かび上がらないとされる。

望遠鏡をのぞいた参加者は、大人も子ども口々に興奮を伝えた。

「うぉ、すご」「あるわ、あるわ、あるわ!」

普段は何気なく夜空に浮かぶ月も、望遠鏡を通せばこれほどの表情を持っている。その事実だけで、駅前は小さな天文台へと変わった。

■2700万光年先の「子持ち銀河」まで

観測は月にとどまらない。木星へと望遠鏡が向けられ、さらには銀河の姿まで披露された。会員が解説する。

「これ銀河です。今見てるやつです。『子持ち銀河』といって、親と子がぐるぐる回ってるのがわかりますか?こういうのが本当にあるんです。2100万から2700万光年。だから向こうから見たらここの光は2100万年ぐらい経ってからやっと向こうに届く」

その言葉を聞いた若い女性はひとこと、「果てしね〜」とつぶやいた。

「感動をたくさんの人に味わってもらいたい」
富山県天文学会の安井利行会長は、このゲリラ観測会を続ける理由をこう語る。

「自分自身が8歳ぐらいの時に観望会で土星を見せてもらった。真っ暗な宇宙の中に土星の環が浮かんで見えるのがものすごく綺麗で。そういう感動をたくさんの人に味わってもらいたいと思い」

あの日の自分が抱いた感動を、今度は自分たちが街なかで届ける。それがこの観測会の原点だ。安井会長はさらに続ける。

「ポっと来たら、星が見えて綺麗だなと思っていただければそれでいい。色んな望遠鏡並んでいますし、色んな人間いますし。星も一つ一つ全部違いますけど、私どもの会も全員一人ひとり違います」

天文学の専門知識がなくても、難しい解説がわからなくても構わない。ただ望遠鏡をのぞいて「綺麗だな」と思えれば、それで十分だという。

街なかから見つめる遥か彼方の星々は、思っていたよりも日常のすぐそばにある。駅前という身近な場所に集まった人々が、宇宙の広さと美しさに目を丸くした夜は、そのことを静かに教えてくれた。

富山テレビ
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