昭和に入って、今年で満100年。

令和のいまも、大阪のどこかに「昭和」が息づいています。

天王寺の片隅で、80年以上暖簾を掲げる定食店。

大正のガード下で、どて焼きを焼き続ける86歳のおかあちゃんが守り続ける居酒屋。

どちらも、華々しく再開発が進む街の喧騒とは少し距離を置きながら、変わらぬ味と人情で常連客を引き寄せてきました。

懐かしい味と風情を次の世代まで守りたい「昭和レガシー」グルメの魅力を調査しました。

■大阪・四天王寺「マルミヤ食堂」

まずは、四天王寺の門前から歩いてすぐにある「マルミヤ食堂」。

レトロな手書き看板が目印の、昭和初期から80年以上続く定食店です。

名物は薄焼き卵のオムライス!
メニューは40種類以上で、毎月新メニューを開発するという挑戦も続けています。

約50年前の電子レンジ、現役の黒電話。店内に一歩足を踏み入れると、時間が止まったような感覚に包まれます。

■「祖母の代から続くお店を絶やしたくない」四代目が選んだ道

このお店を切り盛りするのが、四代目店主の谷英晃さん(53)。
元々は公務員として働いていました。

【四代目・谷英晃さん】「継ぐか継がないかっていうところはずっとあったんですけど、せっかくの人生やし、やってみようかなと」

谷さんは包丁はほとんど使ったことがなかったそうですが、幼い頃から厨房を覗き、皿洗いをしながら父の手元を見てきた記憶が、料理の感覚として体に染み込んでいたといいます。

毎朝の仕込みは卸売市場の仕入れから始まります。

新鮮な極厚ハモは、タルタルソースで食べるハモフライになります。魚メニューの充実も、マルミヤ食堂の人気の理由のひとつです。

仕入れから戻ると、次は仕込みです。
北海道産の真昆布とカツオをベースに、醤油やみりんなどの調味料を合わせた「八方だし」。
あらゆる料理のベースになる、まさにお店の“命”です。

■「味と顔で来る」常連さんが通い続けるワケ

「もうええのに」と話しながらも、息子が店を継いでくれたことを喜んでいる三代目の八重子さん(88歳)。

毎朝の掃除から始まる八重子さんの一日も、変わらず続いています。

営業はお昼のみですが、午前11時に開店すると、正午過ぎには満席に!

この日最後にやってきたのは50年来の常連さんでした。

【常連さん】「この店にはこの味でくる。お母さんで来る。今はひであきちゃん(四代目)の顔見に来る」

お互いの顔を確かめ、元気を確かめ合う。その繰り返しが、80年以上続いてきたこのお店の、本当の名物なのかもしれません。

【四代目・谷英晃さん】「親父がいなくなってからはよく1人で長いことやってたな。ご苦労さん。これからもボチボチ行きましょう!」

■「ここのどて焼きが一番」大正のガード下で賑わう「松栄」

場所は変わって、大阪・大正区。

JRのガード下に昭和58年から続く居酒屋「松栄」。
名物のどて焼きは、多い日には1日300本以上が売れます。

そのどて焼きの作り方は、実に手間がかかっています。

丁寧に下処理した黒毛和牛のスジ肉を圧力釜で40分茹で、一口サイズにカット。

鰹出汁で炊き込んで下味をなじませた後、150年以上の歴史を持つ広島県の伝統味噌で数時間炊き続けます。

大ぶりなのに、1本たったの250円です。1本130円からの大きな串カツも名物です!

■86歳の名物おかあちゃん

松栄のもう一つの名物は、店主である、86歳の松江佐智子さんです。

「おかあちゃんが面白いし優しいし元気なんで、おかあちゃんに会いに来てるみたいな感じもあります」と常連客は笑います。

【松江佐智子さん】「おかあちゃんは何言うても許してくれるねん」

取材当日も、かつてのバイトスタッフが20年ぶりに訪れました。

おかあちゃんを支えるのは息子の松江信吉さん(64)。

店のどて焼きと串カツを守りながら、近年は元イタリアンシェフが加わり、ゴルゴンゾーラパスタや黒毛和牛ほほ肉の赤ワイン煮込みといった洋食メニューも登場。

新旧の味が共存する松栄には、いまも新たな客が集まり始めています。

■「時代を超え親しまれる懐かしの味」と「守り続ける愛情」

86歳になっても店に立ち続ける名物おかあちゃんの松江さん。

「これからの目標は?」と聞くと…

【松江佐智子さん】「いや、ない。ここにきてお客さんの顔見るのが楽しみ。家からここに来るのが精いっぱい。でも楽しいねん」

昭和100年の節目に見えてきたのは、時代を超えて愛されるグルメの条件は、味だけではないということでした。

「時代を超え親しまれる懐かしの味」と「それを守り続ける愛情」その両方が揃って初めて、”レガシー”は生き続けるのです。

(関西テレビ「newsランナー」2026年4月29日放送)

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