おととし〈マイクオフ問題〉が批判を浴びたことで、大臣訪問は〈2日間〉に伸びましたが、一人当たりが思いを伝えられる時間は限られています。

大臣から返ってくる言葉も少なく、被害者のみなさんが望む「対話」というのには、ほど遠いような印象を今年も受けました。

(尾谷 いずみキャスター)
公式確認から70年たってもなお、課題が山積している状況ですが、取材を通して今回の懇談では特にどんなところが焦点だと感じましたか。

(寺田 菜々海アナウンサー)
特に〈健康調査〉を巡って紛糾する場面がありました。改めて簡単にポイントをお伝えします。

『健康調査』は2009年の水俣病特別措置法で〈政府が速やかに行う〉ものと定められていて、水俣病の原因物質であるメチル水銀の影響を調べることが目的です。

環境省は脳磁計とMRIを使った手法で今年度から複数年かけて、1000人規模の検査を行う方針ですが、「メチル水銀の影響の程度を地域間で比較することが目的」であって、〈検査を受けた個人が水俣病かどうか判断しない〉としています。

これに対して、被害者団体は「それでは被害実態の解明につながらない」として反発。より大規模な調査を行えるよう針や筆を使って感覚障害を調べる方法を求めています。30日夜のやりとりをまとめました。

【水俣病被害者・支援者連絡会 事務局 元島 市朗さん】
「従来の感覚障害の検査では信頼性に乏しいと。客観的ではないと(環境省が)言った。これはものすごく重大な問題をはらんだ発言。公健法の検診がものすごく曖昧な検診だとあなたたちは自分の口から言うことになる。こんな自己矛盾があるか」

【環境省 伯野 春彦 環境保健部長】
「問診と診察のみを行った場合、疫学調査において限られた時間や専門医の確保等の観点から健康影響を把握することには精度に限界があるということだ」

【元島さん】
「(公健法の審査では)感覚障害の検査、いわゆる針と筆で感じるか感じないかの検査をする。それが〈客観的かどうか〉この二択に答えてほしい」

【伯野 環境保健部長】
「〈客観的ではない〉と申し上げたわけではなく、精度に限界があると言った」

【元島さん】
[「あなたたちはものすごい矛盾を露呈しながら〈健康調査〉という名目で国民を欺瞞(ぎまん)するような方法でやろうとしている」

このようにやり取りは噛み合わず、石原 大臣もその後の会見で「団体のみなさんに理解してもらいたい」と述べるなど、被害者側が求める内容に国側が歩み寄るような姿勢は感じられませんでした。

団体からは「環境省の対応の不誠実さはマイク切り以前と何も変わっていない」「毎回同じ要望をしている」と落胆の声も聞かれました。

公健法に基づく水俣病の認定患者は、熊本・鹿児島両県で計2284人(熊本県1791人/鹿児島県493人)。このうち約9割の方が亡くなっていて、認定患者で生存している方は201人ですが、水俣病の症状に苦しむ方はこの数字以上にいます。

例えば、行政に患者認定を申請して処分を待っている人(熊本県221人/鹿児島県986人/計1207人)、補償や救済、それから患者認定を求めて全国各地で裁判を続けている人、また、二度の〈政治決着〉で〈未認定患者〉として一定の救済を受けたものの補償が十分とは言えず苦しい状況におかれている方も多くいます。

70年という長い歴史の間、行政によって線引きがなされ、さまざまな立場の人がいますが、取材を通していつも感じることは、『それぞれが手足のしびれや頭痛、めまいなど…目には見えづらい症状も含めて痛みを抱え、苦しんでいる』ということです。

患者・被害者は高齢化しています。石原 大臣が30日に述べた、「水俣病問題の最終解決に向けて前進させたい」という言葉を実現させるべく、患者・被害者の声に正面から向き合ってほしいと思います。

また、私たちも今も解決に至っていない水俣病問題について、この70年という節目を社会全体で考えるきっかけにしていければと思います。

(速報)
環境省の職員が実務者協議で「水俣病の患者は恵まれている」という趣旨の発言をした問題について、石原 環境大臣が会見で「誤解や不安を生じさせるような趣旨の発言があったとすれば謝りたい」と述べました。

また、発言の記録が残ってはいないが、東京に戻って誰が発言したか確認する意向を示しました。

テレビ熊本
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