元大阪地検トップからの性的暴行被害を訴える女性検事が、30日、辞表を提出した。
第三者委員会によるハラスメント調査の要望を検察庁が拒否したことで、女性検事は「自分の被害がなかったかのようにされた」と無念を訴えた。
■「絶対に仕事に戻りたかった。でももう耐えられない」無念の訴え
30日昼すぎ、ひかりさん(仮名)は自身の職場である大阪地方検察庁を訪れた。
一カ月前に書いた辞表を提出するためだ。
ひかりさん(仮名):レイプされた時もすごくショックで、今も未来も全部汚されてしまって、どうしたらいいのか分からなくなりましたけど、それでも検事の仕事を辞めようと思いませんでした。
私は辞めたくありませんでした。絶対に戻りたかったんです。でも、自分の被害もなかったかのようにされてしまって、もう耐えられない。
ひかりさんは、8年前、大阪地方検察庁トップの検事正で上司だった北川健太郎被告(66)から、酒に酔って抵抗できない状態で性的暴行を受けたと訴えている。
北川被告は、準強制性交の罪に問われていて、初公判で起訴内容を認めたものの、その後、一転して無罪を主張。
今も裁判は続いていて、事件によるPTSDが悪化しているひかりさんは、起訴内容を準強制性交等致傷罪に切り替えることも求めている。

■「自分以外にも被害者がいるかもしれない」第三者委員会の調査を求める訴えを検察庁は拒否
性的暴行があったとされる時「やめて」と言ったひかりさんに「これでお前も俺の女だ」と告げたという北川被告。
ひかりさんは、自分以外にも被害者がいる疑いが強いなどとして国や検察庁に第三者委員会を設置して調査する必要性を訴え続けてきた。
職を賭し、3月31日を期限に回答を求めていたが、検察庁は「必要な措置はとっている」として第三者委員会の設置を拒否。
PTSDによる体調不良で休職していたひかりさんは、復職を目指してきたが、30日、生きがいだった仕事を続けることを諦め、辞表を提出するに至ったのだ。
ひかりさん(仮名):この建物が怖くて、近づきたくないという気持ちを持たざるを得ないのが、すごく残念だし、悲しい。

■「せめてこれからは職員を守ってください」辞表に綴られた苦しい思い
1カ月前に、辞表をしたためていたひかりさん。
辞表には、「検事の仕事を愛していました」という仕事への情熱とともに「せめてこれからは職員を守ってください」と検察組織に対して、改善を訴える思いが綴られていた。

■「被告を殺したろというぐらいの気持ちになった」ひかりさんの父
そして、先週末には、両親に辞職することを報告。
ひかりさん(仮名):ここまで一生懸命やってこれたのは、家族みんなの支えのおかげ。ほんまにありがとうございました。
ひかりさんの父親:男の親の立場からいけば、もう初めにパッと聞いた時に、僕はそれだけ(裁判に)時間がかかるんだったら、俺が行って殺したろというぐらいの気持ちになって。
ひかりさんの母親:一生懸命勉強して、司法試験通った時には嬉しくって、私らの生きがいやったわけや。それがほんまに…。かわいそうやけど、でもよう戦ったと思うわ。
両親や夫のほか、わが子も大好きな検事の仕事に打ち込むひかりさんを応援し、誇りに思ってきた。

■「検察は被害者を守れ」抗議の呼びかけに数百人が集まる
その後、SNSでは、検察庁の対応に抗議しようと呼びかけが行われ、28日には最高検察庁と法務省の前に数百人が集まった。
抗議活動の参加者:検察は被害者を守ってください!保身に走らないでください!
(Q:性被害を受けたひかりさんが辞職に追い込まれることについて?)
抗議活動の参加者:許せないです。検察庁の内部が腐敗してるんじゃないかなと思います。

■「みなさんのおかげで辞表が出せた」大阪地検前にも大勢の抗議者
辞表を提出した直後、関西テレビの取材に応じたひかりさんは…
ひかりさん(仮名):一人で辞表出すの嫌やった。ここに来るのが嫌だった。だけど、待っててくださって本当にうれしかったです。出せました、辞表。みなさんのおかげで。ありがたいです。ほんとうにありがたかった。
ひかりさんが辞表を提出しに行った時、大阪地方検察庁の前にも、対応に抗議する多くの人がいたのだ。
ひかりさん(仮名):この目に焼け付けておきます。一人じゃない一人じゃないって。どうしても家にいると、一人って感じになるから。一人じゃない、みんないる。

■「今後も事件に向き合っていく」ひかりさんは30日を再スタートの日に
また検察の内部で被害者がひかりさんであると言いふらした副検事の女性は戒告処分となったものの、名誉棄損の疑いなどについては大阪高等検察庁が不起訴処分に。
これに対しひかりさんは30日、検察審査会に不服を申し立てた。
ひかりさん(仮名):検察審査会できちんと審査をしてもらって強制起訴にして、一体この件で何があったのかを裁判で明らかにしていきたいと思います。
ひかりさんは30日を再スタートの日にして、今後も事件に向き合っていくと話している。

■「(検察庁は)本当に自浄作用を持とうという意欲がゼロ」
最高検察庁は「個別の人事に関するコメントは差し控える。一般論として、検察庁では、かねてよりハラスメントの防止・根絶をはじめ、職員が働きやすい職場環境を整えることに努めており、引き続き、そのための取り組みを行ってまいりたい」とコメント。
去年まで検事として大阪高検に勤務し、現在はひかりさんの代理人の田中嘉寿子弁護士は「(検察庁は)本当に自浄作用を持とうという意欲がゼロ。ゼロというよりマイナス。マイナスというのは組織を守ろうという隠蔽体質がある」と指摘している。

■「検察庁は権力を持っていて怖いものがない」菊地弁護士
関西テレビ「newsランナー」に出演した菊地幸夫弁護士は「検察庁は権力を持っていて怖いものがない」と検察組織を強く批判した。
菊地幸夫弁護士:なぜ被害者の方が表に出て涙ながらに訴えないといけないのか。本来だったら性被害なんですから、その方の名前も素性も、表に出さない。プレッシャーを与えないで事を進めることが当然やらなければいけないこと。それが検察庁はできていない。そういう組織なんですね。
検察庁は、総理大臣だって逮捕できる権力を持っています。怖いものがないわけです。だからほかから批判を受けたって何も怖くないわけですよ。
だから『自浄作用がない』とご指摘もありましたけど、そうなってしまうんだと思います」
そのうえで、菊地弁護士は検察は「人権感覚」が必要だと指摘した。
菊地幸夫弁護士:組織をあげて感覚を研ぎ澄ます。それから出世をしなければという意識が非常に検察官は強い。だから常に上を見て、上から自分がどう評価されてるのか、自分がどう処遇されるのかが優先の考え方になってしまう。そうならないような風通しのいい職場にしてほしい。
(関西テレビ「newsランナー」 2026年4月30日放送)

