世界最悪レベルの原発事故から15年、東京電力の原発が事故後初めて営業運転を開始した。“原発回帰”の一方で、強まる再エネへの逆風、日本のエネルギー政策はどこに向かうのか。
東京電力が原発事故後初めて営業運転
新潟県の柏崎刈羽原発6号機、4月16日最終検査と原子力規制委員会の確認が行われ、営業運転に移行した。2011年3月に福島第一原発で過酷な事故を起こした東京電力が原発を営業運転させるのは事故後初めて。
原発事故の被災地から不安の声も
福島県双葉町からは…「本当に大丈夫なのかなって、また東日本大震災と同じような大事故というか、そういった災害は起こさないのかなってことは、頭をよぎりますけどね」「何かあった場合には、安全第一なので、その場合は、躊躇せずに止めると。やはり1つ1つの手順、緊張感を持って、これからも運転していただきたいなとは思ってます」といった声が上がる。
また、4月13日の会見で福島県の内堀知事は「住民の安全・安心の確保を最優先にすべきことを国に対し、繰り返し申し上げていきたいと考えております」と述べた。
原発回帰が鮮明に
事故後、一時全て止まった国内の原発は、4月16日時点で15基が稼働、“原発回帰”が鮮明になっている。
柏崎刈羽原発6号機の営業運転の開始について、東京電力は「当社の経営、安全の原点は福島第一原発事故の反省と教訓。安全最優先の発電所運営を行っていく」とコメントしている。
一方、原発事故の教訓から導入拡大が進められてきたのが再生可能エネルギーだ。しかし、“逆風”が強まっていて、福島の2枚の太陽光パネルは大きな波紋を広げた。
悪質メガソーラーに交付金返還命令
2025年8月、セミの鳴き声が響いていた福島県猪苗代町磐根の林の中にたった2枚の太陽光パネルがあった。福島テレビが現地を撮影した1ヵ月前の2025年7月、この施設が受けたのは初めてとなる交付金の返還命令だ。
国は2026年4月10日にその事実関係を公表、悪質な事例に厳格に対応する考えを強調した。赤澤亮正経済産業大臣は「2025年度に取消処分を行った55件のうち、特に悪質と認められる5件について、法施行後初となる返還命令を行ったところです。引き続き、不適切な事案に対して、法令に基づき厳格に対応してまいります」と述べた。
“飛び地メガソーラー”が福島に
原発事故の教訓から再生可能エネルギー“先駆けの地”を目指す福島で何が起きていたのか?2枚の太陽光パネルは、実は「BluePower磐梯猪苗代発電所」と名付けられた“メガソーラー”だ。
“本体”は…直線距離で約3キロも離れた会津若松市にある。
敷き詰められた太陽光パネルは7万5000万枚とされ、2024年1月に稼働が始まった。
“飛び地メガソーラー”と呼ばれるものだ。
福島大学の佐藤理夫名誉教授は「当初計画されていた所よりも、実際運転している所の方が、はるかに巨大であるということ。そこの2カ所の間を電線を結んでいる形跡もどうも見られないというようなこと。そういったことから制度の隙を突いて、あるいは若干の違反をして高い収益を得ようとしたものではないかという風に思われます」と指摘する。
背景に固定価格買い取り制度
“飛び地メガソーラー”が生まれる背景には、2012年7月にスタートした固定価格買取制度いわゆる「FIT」が関係している。国から認定を受けると、事業者は再エネで発電した電力を最大20年一定の価格で買い取ってもらえるため、再エネ拡大の原動力となった。
一方、メガソーラーの場合、制度開始直後の買取価格は1キロワットあたり40円だったが…太陽光パネルの普及とともに価格は年々下がり、2025年度は8.9円まで下落、最も高かった時期と比べ約4分の1の水準になっている。
福島大学・佐藤名誉教授は「認定は早めに取ってしまって、設備の価格が大幅に安くなったときに運転を開始すると利益がぐっと増えるという、そういうビジネスが成り立ってしまったところに、ある意味それを許容しかねない制度になっていたところにちょっと問題があったんだろうと私は思ってます」と話す。
猪苗代の施設に送電線は確認されず
猪苗代町磐根のメガソーラーがFIT認定を受けたのは2014年3月で、この時の買取価格は36円。しかし、当初予定していたこの周辺の土地は買えず。代わりに会津若松市の土地を取得した2019年には14円と4割以下まで下がっていた。
そのため、猪苗代町と“一体の施設”であると主張することで、高い価格の交付金を受け取ることを狙ったとみられている。
離れた場所にある施設を“一体”とみなすために、送電線でつなぐことが求められている。しかし、この2枚の太陽光パネル周辺に送電線を確認することはできない。関係者によると、事業者が計画に示していた送電線は当初から設置されていなかったということだ。
電力の産地偽装
国の関係者によると、約6億円に上るという今回の返還金。事業者は現時点でまだ納付していないということだ。「いわゆる“電力の産地偽装”だ。国民からいただいた交付金を違法な手段で搾取した悪質なもので許しがたい」と国の関係者は憤る。