春の訪れとともに、金沢・兼六園が桜色に染まった。約40種類・400本の桜が咲き誇るこの名園では、4月2日から無料開放とライトアップが始まり、夕暮れ時には園内が幻想的な光に包まれた。標本木はほぼ満開。さらに、ソメイヨシノよりも遅咲きの兼六園菊桜」が控えているため、長い期間にわたって桜を楽しめるのもこの園の魅力だ。そして花を愛でた後には、園内の茶店「兼六亭」でじぶそばや「春薫る桜と苺のパフェ」が待っている——満開の兼六園で、歴史と春の味覚を一度に堪能できる、この季節だけの特別な時間を追った。

満開の兼六園で、歴史と春の味覚を堪能する

満開の桜が枝いっぱいに咲き誇る兼六園・桜ヶ丘のソメイヨシノ
満開の桜が枝いっぱいに咲き誇る兼六園・桜ヶ丘のソメイヨシノ
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午後6時ごろ、少しずつ日が沈み始めると同時に、兼六園のライトアップが始まった。石川門から徽軫灯籠(ことじとうろう)に向かう途中に位置する「桜ヶ丘」と呼ばれるエリアは、その名にふさわしく、ソメイヨシノが道沿いに立ち並び、白とほのかなピンクの花びらを枝いっぱいにつけていた。通路を歩く人々はみな足を止め、見上げ、スマートフォンを構え、その美しさに見入っていた。

国の特別名勝、兼六園では、桜の開花にあわせ4月2日から無料開放とライトアップが始まった。この日は、、平日の夕方にもかかわらず、園内には多くの花見客が集まり、春の到来を身体で感じようとしていた。

40種類・400本——多様な桜が織りなす園内の彩り

兼六園の桜の魅力は、ソメイヨシノだけにとどまらない。園内には約40種類、約400本の桜の木があり、ソメイヨシノだけではなく、いろいろな種類の桜を楽しむことができまる。ヒガンサクラやサトザクラなど、種類によって花の形も色も微妙に異なり、同じ園内を歩くだけでさまざまな桜の表情を発見できる。

なかでも注目すべきは、「兼六園菊桜」である。ソメイヨシノの見ごろが過ぎてからも、この特別な桜が花を咲かせ続け、一つの花に300枚以上の花びらがつくと言う兼六園菊桜。。その圧倒的なボリューム感は他の桜とは別格だ。このほか、兼六園熊谷や楊貴妃など兼六園にはソメイヨシノが終わった後も楽しめる桜が、これから続々と咲き誇る。

かつての標本木——金沢の開花基準を担った桜の木

桜ヶ丘に立つソメイヨシノの一本が、特別な歴史を持つ木であることを知る人はそれほど多くないかもしれない。

現在、金沢の桜の開花を判定する標本木は金沢市西念にある気象台に置かれているが、1992年から1999年まではこの兼六園の桜の木がその役割を担っていた。つまり、かつてはこの一本の木の状態が「金沢に春が来た」というニュースの根拠となっていたのだ。

その木は今も桜ヶ丘に静かに立ち、枝いっぱいに白い花を咲かせている。この日(4月3日)は、兼六園管理事務所によると八分咲き。兼六園では、気象庁などの基準とは異なり、十分咲きになって初めて満開と記録されると言う。

日本最古の噴水と、金沢三文豪ゆかりの茶店

桜ヶ丘からさらに園内を移動すると、やがて噴水の前に出る。この噴水は日本最古の噴水とされていて、江戸時代に造られた。池の高低差を利用した、もちろんポンプなどの動力を全く使っていない。

その噴水の向かいに位置するのが茶店「兼六亭」だ。藤棚の隣にあるこの茶店。かつて、金沢の三文豪の1人、室生犀星の作品にも搭乗した場所にある。

2022年にリニューアルが行われたというこの店は、兼六園を眺めながら食事ができることで人気を集めており、朝食も提供している。

「だしが染み込んでて、香ばしい香りも」——名物・じぶそばの味

兼六亭の4代目、宇田直人さんが今回用意してくれたのは、「当店の名物のじぶそばと手まり寿司のセット」

「じぶそば」とは、金沢の郷土料理「治部煮(じぶに)」をそばの上にのせた兼六亭オリジナルのメニューだ。鶏肉にだしが染み込み、表面が軽く炙られているため香ばしさも加わる。レポーターするのは、石川テレビの加藤葵アナウンサー。加藤アナが鶏肉を口にすると、「だしが染み込んでて、少し表面が炙ってあるので香ばしい香りもしますね」と感想を述べた。

そばには丸いもが練り込まれており、「つるつると」した食感が特徴だという。わさびを溶かしながら食べるよう宇田さんがすすめると、加藤アナはあんと麺をよくからめてひと口すすった。

「ほっこり、心がなもむ味わいです。だしが甘みがあって、このとろみのあるあんと麺がよく合いますね」宇田さんは、「金沢の料理は、やや甘めの味付けが多いので、皆さんにすごく楽しんでもらってますね」と語る。

この料理には宇田さんの家族の歴史が込められている。「元々、治部煮だけだと、主食にはならないんですけれど、私の祖父が、おそばの上に治部煮をのせて、皆さんに食べてもらおうと考えたそうです。」——祖父のアイデアが今も引き継がれ、兼六亭の名物として多くの人に愛されている。

「桜の香りがふわっと鼻に抜けていきます」——春薫るデザートの世界

食事の後には、宇田さんがデザートを紹介してくれた。「わ、華やか」——トレイの上に現れたのは、「四季パフェ~春薫る桜と苺のパフェのセット」だ。ピンクを基調とした層状のパフェには、桜のもなかや花飾りが添えられ、三色のお花見団子も付いている。赤い器の抹茶とともに盛りつけられたその姿は、まさに春そのものだった。

「上のクリームとゼリーいただきますね」と加藤アナがスプーンを入れると、「桜の香りがふわっと鼻に抜けていきます。おいしい」と表情をほころばせた。さらに下の層へとスプーンを進めると、アイスとベリーの甘酸っぱいソースが現れた。「いろんな味わいが楽しめますね」という言葉通り、ひとつのグラスの中に春の味覚が凝縮されている。

宇田さんはその味のコンセプトをこう説明する。「桜の香りと、あとは苺などのベリーの甘酸っぱさを合わせ持つような味わいになってます」——香りと酸味と甘みが重なり合う、春にしか味わえない一品だ。

兼六園の桜が咲き誇る、この季節だけの特別な時間

兼六園の桜はほぼ満開を迎え(4月3日時点)、かつて金沢に春の訪れを告げた標本木は、今年も白い花を咲かせている。40種類・400本の桜が咲き誇る園内では、遅咲きの兼六園菊桜がまだ出番を待っており、春の花見シーズンはしばらく続く見通しだ。日暮れ後はライトアップが始まり、昼とはまた異なる幻想的な桜の表情が園内を彩る。

そして花を愛でた後には、日本最古の噴水のほとりに立つ兼六亭で、祖父の代から受け継がれたじぶそばと、春だけの特別なパフェが待っている。歴史と美食と桜が交差する金沢・兼六園の春は、今まさに最高潮を迎えている。

(石川テレビ)

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